カタールW杯による中断前最終節となったリーガ14節、久保建英所属のレアル・ソシエダは、セビージャFCの本拠地ラモン・サンチェス・ピスファンに乗り込んでの試合となった。またベンチスタートだったものの、前半10分からの緊急出場となった久保にとっては、ELオモニア戦での負傷からの復帰戦となった。この一戦の撮影に赴いた(※【新着写真】からご覧になれます)。

 ヨーロッパカップ戦の常連でもあるホームチームのセビージャは、今シーズン不調に沈み、すでに監督交代が行われている。

 後任であるサンパオリ監督就任後も状況は好転せず、前節終了時点で勝利数2と降格圏間近である。一方アウェイに乗り込んだソシエダも、ここ5試合勝利を挙げられずに今節を迎えており、両チームともに是が非でも勝利でリーガ中断を迎えるべく、この試合に臨んだ。

2トップの一角が早々に負傷し、久保に出番が

 11月9日、スペイン南部アンダルシア州セビージャ、雨予報が出ていたが綺麗な青空が迎えてくれた。負傷者の続出とともに成績を落とし始めたソシエダにおいて、現地メディアの予想フォーメーションではダビド・シルバ、久保建英の先発復帰が告げられていた。

 しかし実際に発表されたフォーメーションに久保の名は見当たらず、2試合続けてのベンチスタート。W杯直前ということも配慮されてか、戦況を見極めての起用となるはずだった。

 19時、両チームイレブンが入場してくる。満席となったファンが総立ちでイムノを歌い選手を奮い立たせる。大きなスタジアムではないが、この雰囲気は何度来ても特筆すべきものがある。

 試合は序盤から白熱。36歳、元スペイン代表ヘスス・ナバスが力強くボールを蹴り出す。またソシエダのベンチ前でセルロートが倒されると、控えに回る選手たちも激しく反応を示した。そして前半10分、ツートップの一角で出場したカルロス・フェルナンデスが早くも負傷でピッチに座り込んでしまった。

 慌ただしくなるソシエダのベンチ、そして久保も慌ててピッチ脇でアップに走り出てきた。十分な時間も得られぬまま交代に向かう久保からは、肩を固定するサポーターが覗き見えていた。

 フェルナンデスのポジションにそのまま入った久保は直後、フリーでメリノからのパスを引き出しシュートを放つ。この場面ではオフサイドを取られたが、選手交代によってできた相手守備の乱れをうまく利用する狡猾さを見せた。

 そして前半20分、メリノからのパスを受けたセルロートが技ありシュートで先制に成功した。

相手の連続レッドカード、久保は味方に…

 激しく見ごたえのある試合が繰り広げられたが、その激しさがセビージャにはアダになる。2つのVAR判定によって28分にラキティッチ、34分にはクアシにレッドカードが提示され、前半のうちに2人の退場者を出してしまった。2人目の退場者の判定が下される場面では、ソシエダ監督は久保を呼び寄せてフォーメーション変更の指示などを送っている。

 その直後に久保からシルバ、メリノへ指示が伝達される姿も撮影でき、久保は右サイドへポジションを移している。

 ゲーム再開直後の36分、ブライス・メンデスが追加点を奪い、ソシエダが勝利を決定付けたように思えた。サイドにポジションを移した久保も積極的にサイドで仕掛けクロスを送り、またボックス内まで切れ込んでチャンスを創出した。しかし中で合わせたシルバ、セルロートが決めきれずにいると、前半終了間際、セビージャFWラファ・ミルが1点を返して前半を終えた。

密集するゾーンに潜り込みシュートを放つシーンも

 前半序盤に緊急出場となった久保は、頭部にボールが当たって倒れこむシーンや、肩を若干気にするそぶりも見せていたが、後半も引き続き出場した。

 試合展開を振り返ると――自分たちのサッカーを捨て、守らざるを得なくなったセビージャと、数的優位の中でリードするソシエダがリスクを極端に避ける展開が続き、膠着状態に入った。

 久保はセビージャの選手が密集するゾーンに潜り込みシュートを放つシーンも見られた。終盤になると、逆境の中でも鼓舞し続けるファンに後押しされたセビージャが、最後の猛攻に出る。

 ゴール裏に掲げられているイムノのからの一節、〈Dicen que nunca se rinde=「決して諦めない」〉そして続く〈死ぬまでセビジスタであり続けよう〉という応援歌通りの姿勢を見せるファン、そして2人少ない状況で最後まで戦い続ける選手の姿に心打たれる。

 ソシエダとしてはヒヤリとするシーンも何度か作られたが、なんとか最小得点差のままゲームを終わらせることに成功。連敗をストップし、アトレティコ、ベティスの敗戦もありCL出場圏内3位に順位を上げた。

怪我のブランクか、終盤の久保からは疲労感を感じた

 試合終了直後、久保は一息つく間も無く、ズベルディア、レ・ノルマン、メリノらと激しく論を交わす姿が印象的だった。W杯までにソシエダは国王杯を戦うが、久保はその試合を免除され日本代表に合流する。

 脱臼した肩が完治するには至っていないこと、また怪我によるブランクか、途中出場ながらアディショナルタイムまで加えると、ほぼ90分を戦った久保からは、試合終盤にはかなりの疲労も感じた。

 W杯初戦に万全の状態で臨めることを期待する。

文=中島大介

photograph by Daisuke Nakashima