カタールW杯、グループステージ最終戦で日本とスペインが激突する。そのタイミングを前にパリ五輪を目指す世代別日本代表がスペインと11月18日に対戦した。その撮影へと赴いた日本人カメラマン中島大介氏に当日の様子を写真とともに振り返ってもらった。

飛び級選手を見て感じるスペインと日本の違い

 U-21日本代表が欧州遠征を行い対U-21スペイン、対U-21ポルトガルの2戦を戦った。その初戦、スペイン南部セビージャで行われたスペイン戦を振り返る。

 注目したのは、2024年パリ五輪を戦うU-23日本代表の中心となる、2001年以降生まれで構成されたこのU-21日本代表が、スペインを相手にどのような戦いをみせるのか。

 大岩剛監督が招集した今回のメンバーは23名。キャプテンは、横浜F・マリノス所属の藤田譲瑠チマ。またSLベンフィカ所属の小久保玲央ブライアン、スパルタ・ロッテルダム斉藤光毅の2名が海外組、大学生選手としては1名、佐藤恵允が選ばれていた。

 そして西川潤(サガン鳥栖)が3年ぶりに招集された一方、すでに飛び級で招集歴のあるFC東京所属の19歳・松木玖生はU-19代表に招集されている。なおそのU-19代表には、レアル・マドリー所属の中井卓大が招集されている。

 一方スペイン代表に目を移すと、リーガファンなどには見覚えのある顔が並ぶ。

 久保建英が所属するレアル・ソシエダからは、パチェコとトゥリエンテスが、またエイバルで乾貴士の同僚だったブライアン・ヒル(トッテナム)。またバルサからはGKアルナウにパブロ・トーレス。バルサからバレンシアへレンタル中のニコ・ゴンザレス。そしてアトレティコ・マドリーからレンタル先ジローナで大活躍を見せるリケルメなどなど。

 両チームのメンバー表を見比べた時に気づくのは、飛び級選手が「ゼロ」の日本に対してスペインには3名の19歳選手がいることか。

 またこの試合の数時間前、U-21チームで活動中だったバルサ所属バルデが負傷のガヤに代わり、カタールW杯で日本とも対戦するスペインフル代表に、緊急招集されている。

 そしてそのフル代表には、最年少18歳ガビを筆頭に、7人もの21歳以下の選手が選ばれている。日本フル代表はというと――久保建英1名のみとなる。

CLやELの舞台をも経験済みの選手ばかり

 さて、 11月18日。会場はカルトゥハスタジアム、観客はやはり少なく発表によると1481人。スタメン組では、藤田が中心となってアップが行われた。また注目していた西川はサブからのスタートとなった。

 両チーム入場、集合写真が撮られる。そして両監督が健闘を誓い合う。

 スペイン監督のルイス・デラフエンテは、銀メダルを獲得した東京オリンピックでのスペイン代表監督でもあり継続性を感じさせる。

 日本はA代表と同じく、4-2-3-1の布陣を敷いた。トップ下に入る10番・鈴木唯人(清水)を中心に攻撃を組み立てる。ワントップには9番の藤尾翔太(徳島)、右サイドからは三戸舜介(新潟)、左サイドでは斎藤がチャンスを狙った。

 ボランチではキャプテンの藤田が声をあげ、7番山本理仁(ガンバ大阪)が縦横無尽に駆け巡った。

 前線からコースを限定しながらプレスをかける日本に対して、それでもGKから着実にパスをつなぐスペイン、という構図に。

 攻撃の中心は10番ロドリ(ベティス)、ブライアン・ヒルがサイドにタメを作る。CBパチェコが日本の攻撃に立ちふさがる。今シーズンよりマンチェスター・シティに所属するセルヒオ・ゴメスもいる。欧州主要リーグでプレーするだけでなく、CLやELの舞台をも経験済みの選手ばかりだ。

“前プレ”がかわされ、受け身にならざるを得なかった

 試合は序盤からスペインのポゼッションが上回る。日本のハイプレスが空回りした形だ。スペインが日本の前プレスにも慣れてくるとピッチ全体を使い、プレスを回避する場面が増え、日本陣内に押し込まれる展開が増えた。しかし日本はなんとか相手フォワードの前に出てボールを跳ね返すDF陣の奮闘が目立った。

 そして24分、相手との接触で鈴木が倒れゲームが止まる。かなりの出血でベンチメンバーにも心配の表情が浮かぶ。この間、日本メンバーは監督のもと指示を仰ぐ姿が見られたが、スペイン側では、ピッチ上で2、 3人のグループとなり話し合う姿が見られた。

 1人少ない状況が5分近く続いたが、なんとか凌ぎきると、再びピッチインした鈴木が接触を恐れずゴール前に侵入。さらには、斎藤からのパスをCBの間で受けとりDFラインの裏に抜けGKと1対1の好機を作ったものの、決め切ることはできなかった。

 前半を通して見ると、日本の好機もあったが、スペインのポゼッションがかなり上回った。

 スペインは自分たちのサッカーを展開するが、ゴールを奪うことだけができなかった。日本としては“前プレ”がかわされ、受け身のサッカーをせざるを得なかった。どのくらいこのような展開を戦前に想定していたかは分からないが――試合が進む中、スペインの攻撃に対応することができなくなり、後手後手に回ってしまったのだ。

 スコアレスで迎えた後半、親善試合ということも影響したか、頭より日本は2枚、スペインは3枚の選手交代が行われた。そして開始早々の47分、交代出場したトゥリエンテスがゴールを奪った。

押し込まれ、2点差をひっくり返せないまま…

 さらにスペインの猛攻が続く中、リードを奪われた日本は、左サイド斉藤と山本のコンビが好機を作る。また後半からCFに入った小田裕太郎(神戸)、右サイドに入った松村優太(鹿島)も攻撃の機会を窺うが、リードを奪ったスペインが試合巧者ぶりを発揮し、なかなか連続した攻撃を行えない。すると63分、日本はさらに3枚の交代を行なった。

 しかし69分、後半より出場のリケルメのボックス内でのシュートの跳ね返りを、サイドバックのマヌ・サンチェスに押し込まれリードを2点差に広げられてしまう。リーガでも13試合で3ゴールとまずまずの数字を残す活躍を見せるリケルメに日本守備陣は手を焼き、ドリブル、またポストを直撃するシュートを打たれている。

 押し込まれる展開が続く中、セットプレーでの反撃も試みた日本だったが、スペインの壁を崩すことはできなかった。

 80分、日本は最後の4枚交代を行なった。トップ下には、鈴木に代わった西川が入ったが、プレー時間も短く状況を変えることはできず、2-0のまま試合は終了。U-21日本代表は、スペインに完敗した。

“弟たち”の試合を未来予測にしないためには

 “対スペイン”で思い起こされるのは、東京五輪でのサッカー準決勝だろうか。

 無得点のまま延長にもつれた試合は、アセンシオのゴールで日本の敗退が決まった。

 そのアセンシオは、カタールW杯を戦うスペイン代表で10番を背負い、コスタリカ戦、ドイツ戦と先発出場している。そして今、W杯グループステージ突破をかけた“新たな対スペイン”戦を迎える。

 スペイン代表は、日本戦でポゼッション率70%を超え、ゲームを支配したドイツを相手に、65%のポゼッション率をあげている。

 日本対スペイン戦でも、スペインが多くの時間を優位に進めることが予想される。それは、このU-21スペイン対日本の展開とも共通する。

 この試合を“未来予測”にしないためには――。

 積極的に前からかけたプレスが、スペインに上手くあしらわれた形だが、最後までそのプランを変えたようには見えず、愚直にプレスをかけ続けているように見えた。

 自分たちのサッカーを持つことはもちろん大事だが、相手の練度、試合の展開に合わせて、プランを変化させていくことも、同じくらい重要だろう。

 CLやELを戦うクラブ、選手たちは、自分たちのサッカーを複数のプランとして持って戦っている。

 W杯を戦う日本代表を見ても多くの選手が、ゲームの中でのプラン変更に対応できるレベルだ。あとはチームとして、どれ程スペイン戦の展開を想定し、それぞれのプランを用意し適切に実行できるかがカギになる。

 ベスト8進出という先を見据えての総力戦ではなく、目の前の一戦にまさに全力で向き合う、真の総力戦で臨むしかない。

 またサッカーに“たられば”は無用とも云われるが、サッカーだからこそ“たられば”が必要な時もある。このU-21の試合でも、日本は押し込まれた中、前半を無得点で終えている。その中であった決定機が決まっていれば、結果も変わっていたかもしれない。

 迎えるスペイン戦では、ドイツ戦、コスタリカ戦のように、自分たちのイージーミスでPKを与えたり失点をしないこと。そして、粘り強くスペインに対応した上で迎える決定機を確実に決めきること。

 ここまできたら、選手を信じ、“ミスはしないでゴールは決めて!”と願うしかない。

 メッシやエムバペのようなスーパースターはいないが、スペイン代表はどの選手も基礎技術も戦術眼も高い。ただし冒頭にもあるように、非常に若い年齢構成の代表になっている。もし日本が先制点をあげることができれば――若い代表ということが諸刃の剣となり、パニックを起こさせることができるかもしれない。

文=中島大介

photograph by Daisuke Nakashima