これほど揺るぎない「一強」ムードが漂うJRA・GIは、今年初めてだろう。

 第23回チャンピオンズカップ(12月4日、中京ダート1800m、3歳以上GI)は、断然の「一強」と見られている昨年の覇者に、ダート路線で花ひらいた上がり馬と、強い3歳勢が挑む構図になっている。

テーオーケインズはきわめて順調

 馬名のとおり「帝王」としてダート界に君臨しているのが、昨年このレースを6馬身差で制し、最優秀ダートホースとなったテーオーケインズ(牡5歳、父シニスターミニスター、栗東・高柳大輔厩舎)である。

 今年は、初の海外遠征となったサウジカップで8着に敗れるも、帰国初戦の平安ステークスを楽勝。しかし、次走、レース史上初の連覇を狙った帝王賞は、伸び切れず4着。敗因のはっきりしない、嫌な負けだったが、秋初戦のJBCクラシックでは2着を2馬身半切って捨て、本来の強さを見せた。

 この中間はきわめて順調。追い切りを見守った高柳調教師も、「昨年のようなハイパフォーマンスを出せると思います」とコメントしている。

 勝つときは後ろを大きく離さずにはいられないという、この馬らしい走りを期待してよさそうだ。

「一強」でも、「絶対」はない

 このレースの前に「一強」と見られていたGIを近い順に並べると、昨年のマイルチャンピオンシップ(グランアレグリア、1着)、安田記念(同、2着)、ヴィクトリアマイル(同、1着)、日本ダービー(エフフォーリア、2着)、といったところか。

 今年の大阪杯でもエフフォーリア(9着)が単勝1倍台の支持を得ていたが、3.7倍のジャックドール(5着)との「二強」といった雰囲気だった。

 考えてみれば、今年のGIで1番人気が勝ったのは天皇賞・秋(イクイノックス)だけだ。それもあって、たとえ「一強」と評価されるほど突出した実績馬でも、「絶対」ではないような気がしてくる。

「帝王」の牙城を崩すのはどの馬か?

「帝王」の牙城を崩しそうな古馬に共通しているのは、芝路線からの転向組であることだ。

 昨年12月にダート路線に転向してから4連勝し、ダート重賞初参戦となった今春のアンタレスステークスでオメガパフュームから半馬身差の2着になったグロリアムンディ(牡4歳、父キングカメハメハ、栗東・大久保龍志厩舎)も、その1頭である。

 前走の宝塚記念は12着と大敗したが、レコードが出るような芝は、やはり合わなかったということだろう。これは度外視していい。

 路線変更後に目覚ましい進境を見せてGIに初参戦というのは、ダートから芝への変更だったので方向は逆だが、先週のジャパンカップを制したヴェラアズールとイメージが重なる。鞍上は同じライアン・ムーア。一発があっても不思議ではない。

パフォーマンスをさらに上げてくることは確実

 同じく、ダート路線に転向した「上がり馬」としてマークすべきなのがジュンライトボルト(牡5歳、父キングカメハメハ、栗東・友道康夫厩舎)だ。今年の7月、デビュー22戦目で初めてダートに参戦してから2、1、1着とパーフェクトな走りを披露している。芝でもダメだったわけではなく、そこそこ強かったところも前出のグロリアムンディと同じ。だが、グロリアムンディがダートに転向したときは1勝クラスだったのに対し、この馬はすでにオープン馬になっていた。ダート3戦目だった前走のシリウスステークスで重賞初勝利を挙げており、砂上でのパフォーマンスをさらに上げてくることは確実だと思われる。

 もう1頭、ブリーダーズカップディスタフを制したマルシュロレーヌの半弟という良血のバーデンヴァイラー(牡4歳、父ドゥラメンテ、栗東・斉藤崇史厩舎)も怖い。芝は新馬戦と5戦目の浜名湖特別(2勝クラス)だけなので「転向組」とは言えないかもしれないが、ダートでの6勝すべてが完勝と、爆発力がある。

強い3歳勢の筆頭格はクラウンプライド

 強い3歳勢の筆頭格は、今年3月のUAEダービーを制し、ケンタッキーダービーにも参戦(13着)したクラウンプライド(牡3歳、父リーチザクラウン、栗東・新谷功一厩舎)だ。帰国初戦となった日本テレビ盃から福永祐一に乗り替わり、2着。つづくJBCクラシックでは初めて逃げる形になり、押し切るかに見えたが、最後はテーオーケインズにかわされてしまった。この中間は、馬の後ろで我慢させる調教を繰り返しており、どんな展開になっても対応できる態勢は整っている。

 今年のジャパンダートダービーを勝ち、手綱をとった武豊に、同年の芝・ダートのダービー制覇という、彼にとって3度目の勲章をプレゼントしたノットゥルノ(牡3歳、父ハーツクライ、栗東・音無秀孝厩舎)も、強い。

買うのはアノ馬からの馬連

 ◎テーオーケインズ

 ○クラウンプライド

 ▲グロリアムンディ

 テーオーケインズは中京で4戦3勝3着1回。3着はデビュー3戦目の1勝クラスでのもので、本格化する前のこと。今年、帝王賞の連覇を逃したのは、以前より右回りと左回りでの適性の差が大きくなったからか。得意の左回りのここでは、崩れる要素が見当たらない。

 ○と▲は、伸びしろを感じさせる順に印をつけた。

 この秋のGIは、どれもGI未勝利だった馬が勝っている。そういう「流れ」がつづくことも考えられるので、テーオーケインズからの馬連のほかに、グロリアムンディの単複も買って、砂の頂上決戦を楽しみたい。

文=島田明宏

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