<名言1>
もちろん重圧はありますけど、FWとしてそこから逃げるのは、絶対に違うと思います。
(上田綺世/NumberWeb 2019年6月14日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/839644
◇解説◇
イングランド・プレミアリーグの三笘薫(ブライトン)、スペインのラ・リーガでは久保建英(レアル・ソシエダ)、ドイツ・ブンデスリーガでは鎌田大地(フランクフルト)らの活躍、“移籍の噂”が連日のように報じられている。ただ欧州五大リーグから目線を広げていくと、セルティックの古橋亨梧や前田大然、さらにベルギーではセルクル・ブルージュの上田がコンスタントな活躍を見せている。
ベルギーリーグ得点王争い中の上田が持つセンスとは
特にカタールW杯後の上田はゴールペースを上げており、直近7試合で6ゴールと固め打ちモードに入っている。現地時間4日に行われたホームでのセラン戦では今シーズン2度目となる2ゴールを挙げ、3−1の勝利に貢献。さらに自身の公式戦ゴール数を14に伸ばし、リーグ戦得点ランキングでもトップと3ゴール差の4位タイ(13ゴール)につけている。
プロ入り前後から上田の得点嗅覚に対しての評価は高かった。小笠原満男や大迫勇也、柴崎岳らをスカウトした椎本邦一にもこう言わしめていた。
「鹿島学園高時代も点を取る良いFWだなと思っていたけど、大学に入って体もできてかなり良くなった。総理大臣杯とかでも取っていたので、とにかく点を取るやつだなと。FWとして一番大事なことで、その感覚は教えられる部分ではないですし、センスの部分。『そこにいるんだ』というのを持っている」
冒頭の発言は、PKキッカーを任されたときの心情について聞いた言葉だ。当時まだ大学生だった上田だが、ストライカーとしての責任に真っ向から向き合う覚悟を持っていた。
「理想は、点を取ることに特化した、いわば“兵器”のような選手になりたいんです。フィジカルが強いとか、テクニックが優れているとかじゃなくて、これまでにはいない存在。どんな状況でも、どんな環境でも点を取れる選手でありたいですね」
カタールW杯の上田はコスタリカ戦で前半のみの出場に終わるなど、本来の力を見せきれなかった。その一方で、クロアチア戦のPK戦後には涙にくれる三笘薫を気丈に励ます姿に心を打たれたファンも多い。3月に再始動する森保ジャパンに招集された際には、最前線の起爆剤となれるか。
五輪エース候補だったストライカー小川の逆襲
<名言2>
東京五輪のメンバーに追いつける自信はあります。自分のスキルを上げて、運も味方につけて、自分も代表で戦いたいですね。
(小川航基/NumberWeb 2021年10月29日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/850328
◇解説◇
上田とともに東京五輪世代のセンターフォワードで、当初フロントランナーとして目されていたのが小川だ。
桐光学園時代から180cm台と恵まれた体格と柔らかなセンスをあわせ持つ万能ストライカータイプとして注目されていた。ただしプロ入り後は紆余曲折あった。2017年のU-20W杯で膝に大けがを負い、シーズンを棒に振った。それでも復帰後は世代別代表でブラジル相手に強烈なシュートを叩き込んだり、自身にとって初のA代表出場となる2019年末のE-1選手権香港戦ではハットトリックを決めるなど復調の兆しを見せたものの、2021年に行われた東京五輪のメンバー入りを逃し、シーズンを通じてもJ2で24試合1得点と苦しんだ。
「薫がすごい活躍をしていたので自分ももっと…」
そんな小川が同世代のスコアラーと自身の状況を比較して、2021年のシーズン終盤にこう語っていた。
「そのシーズン(2020年)は最終的に9得点で終わりました。最低でもその倍は取らないといけないと思っていましたし、薫(三笘)が二桁得点、二桁アシストをしてすごい活躍をしていたので自分ももっと頑張らないといけないと思ったんですが……。監督が期待する結果を残し切れなかった」
東京五輪についてもメンバー発表時には「なんでそこに自分がいないんだ」という悔しさを持ちつつ「林(大地)くんは一緒にプレーしたことがなかったんですが、綺世(上田)と大然(前田)は、『こういう時、どうするのかな』とか、応援しつつも選手としての目線でプレーを見ていました」と同世代のストライカーのプレーから何かを得ようと向き合っていた。
そんな小川だが2022シーズン以降、いよいよ覚醒の気配が漂う。横浜FCで41試合26ゴールを挙げてJ2得点王とMVPに輝きチームをJ1昇格に導くと、今季第2節の湘南戦で2ゴール、続く第3節鹿島戦でもPKで1ゴールを挙げ、3試合フル出場を果たしている。五輪で選外だったストライカーと言えば大迫勇也、前田遼一、興梠慎三といった面々もいるだけに、小川も再び日本代表の一員へと上り詰めることができるか。
三笘はマークが激しくなっても今季6ゴール目をゲット
<名言3>
強い相手にどれだけできるかっていうところは、プレミアならではの楽しみがある。そういう時に自分の価値を出せるようにしたい。
(三笘薫/NumberWeb 2023年1月4日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/856082
◇解説◇
カタールW杯ならびに所属するブライトンでの大活躍によって「Kaoru Mitoma」の名前は飛躍的にフットボールの母国でも広く知れ渡った。しかし世界最高峰のレベルで知られるプレミアリーグということもあってか、「ミトマ対策」は急速に進んできた感がある。
しかしそんな状況でも三笘はしっかりと結果を残している。
現地時間4日の第26節ウェストハム戦、左ウイングで先発した三笘は17分、先制点の契機となるPKを誘発するとともに、69分にはW杯スペイン戦の「三笘の1ミリ」を想起させるようなスライディングシュートでチーム3点目をゲット。今季プレミアでシーズン6得点目とし、香川真司、岡崎慎司が持つ同リーグ日本人シーズン最多ゴール記録に並んだ。イギリスの公共放送「BBC」の試合後採点でも8点台をマーク。4−0で快勝したブライトンの原動力としてマンオブザマッチに選出されるなど、高評価を得ている。
「まだ上に行かないといけないとも感じている」
カタールW杯の中断明け直後、三笘は「W杯後のチームで感触は良いものがある。信頼は少し増えたと感じる」と語っていたが、今やイタリア人智将のデゼルビ監督率いるブライトンにあって、なくてはならない1人となっている。それはゴール、アシストという分かりやすい結果によって、三笘への信頼が加速度的に高まっているからこそだろう。
昨年12月31日に開催されたアーセナル戦後のこと。三笘は2022年について問われた際、「間違いなく大きな1年でした。成長できましたけど、やるべきことが多くなったというのと、まだ上に行かないといけないとも感じている」と満足せずに向上心を口にしていた。ブライトンは今後、冨安健洋擁するアーセナル、さらにシティとユナイテッドのマンチェスター勢、チェルシー、トッテナムと強豪クラブとの対決を残している。もし日本人で初となるプレミアでの二桁得点に達すれば、さらにその評価は高まるかもしれない。
文=NumberWeb編集部
photograph by Kiichi Matsumoto/JMPA