ペナントレースは早くも2割程度を消化した。そろそろ12球団の陣容が明らかになりつつあるが、各球団では実績のある大物や話題性のある若手の中で、まだ一軍の試合に出場できていない選手がいる。球団ごとに見ていこう。

源田、かつての本塁打王・T-岡田らも未出場

【パ・リーグ】
〇オリックス
T-岡田(外野手)、安達了一(内野手)、山田修義(投手)

 元本塁打王のT-岡田は主砲の杉本裕太郎が左ふくらはぎ軽度筋損傷で離脱する中で復帰が待たれるが、ファームでもまだ本塁打が出ていない。チーム最年長野手の安達は左肩甲骨下筋損傷で戦線離脱。オリックスは昨年から左の救援投手がいない。2020年に18ホールドを記録した山田はその最有力候補だ。連休中ウエスタンリーグで山田の登板を2試合見たが、いずれも失点した。まだ時間がかかるか。

〇ソフトバンク
有原航平(投手)、ガンケル(投手)、スチュワート・ジュニア(投手)、甲斐野央(投手)、ホーキンス(外野手)

 ストーブリーグの勝者と言われたソフトバンクだが、主戦級の新戦力2投手が一軍の実戦に投入できていない。MLB帰りで二軍調整が続いている有原は、ファームでは5試合2勝0敗、防御率2.70、阪神から移籍したガンケルもファームで3勝1敗、防御率1.48。今後の反転攻勢はこの2人が中心になりそうだ。2018年のMLBドラフト1巡目を蹴ってソフトバンク入りしたスチュワート・ジュニアは、今季6年契約の5年目になったものの、一軍ではまだ2021年の11試合しか投げていない。

〇西武
岡田雅利(捕手)、源田壮亮(内野手)、陽川尚将(内・外野手)、公文克彦(投手)、岸潤一郎(外野手)

 森友哉がオリックスにFA移籍した今季、大阪桐蔭高の先輩である岡田雅利に注目が集まったが、シーズン前に「大腿骨・脛骨骨切り術」という大手術を受けた。復帰は来年になる。WBCで指の骨折を押して出場した源田壮亮は、まだファームの試合にも出ていないが復帰へ向けて順調と伝えられる。昨年の現役ドラフトで阪神から移籍した陽川尚将はファームで2本塁打。近々チャンスが巡ってくるだろう。

ロッテは昨年の盗塁王・髙部も負傷からの回復途上

〇楽天
塩見貴洋(投手)、辛島航(投手)、石橋良太(投手)

 塩見、辛島の2先発投手が二軍で調整中。昨年左ひじの手術をした塩見は4月5日の二軍戦で592日ぶりに公式戦のマウンドに上がった。昨年6勝を挙げ、FA権を取得するも残留した辛島は出遅れたがファームで3試合に登板、そろそろ上がってきそうだ。

〇ロッテ
石川歩(投手)、高部瑛斗(外野手)、福田秀平(外野手)、国吉佑樹(投手)、菅野剛士(外野手)

 通算76勝のエース石川は開幕投手に内定していたが「右上肢コンディション不良」で回避、まだファームでも登板していない。昨年の盗塁王の高部は、右肩甲下筋損傷で出遅れている。2019年オフにソフトバンクからFA移籍した福田は、故障続きのため3年間で86試合出場にとどまっている。

〇日本ハム
加藤豪将(内野手)、松岡洸希(投手)、淺間大基(外野手)、王柏融(外野手)育成

 元メジャーリーガーの加藤は3月に右腹斜筋肉離れのため戦線離脱。現役ドラフトで西武から入団した松岡は、キャンプで二軍に降格して浮上していない。台湾野球の大スターだった王柏融は今季から育成契約になり、ファームで2本塁打、打率.210。

ヤクルト奥川、DeNAオースティンらの状況は?

【セ・リーグ】
〇ヤクルト
奥川恭伸(投手)、原樹理(投手)、近藤弘樹(投手)育成

 春季キャンプでは復調の兆しもあった奥川だが、まだ一軍登板はなし。ファームでは3試合0勝2敗、防御率3.38。原は4試合で0勝0敗、防御率4.00。2人ともに復帰が待たれる。

〇DeNA
オースティン(内野手)、藤田一也(内野手)、アンバギー(外野手)

 快調に首位を走るDeNAだが、実績ある中軸打者のオースティンが右ひじ手術のためリハビリが続いている。早ければ5月中にも復帰と伝えられる。今年7月には41歳になる藤田一也は、二軍で4試合に出場し3安打を放っている。

〇阪神
高橋遥人(投手)、山本泰寛(内野手)、北條史也(内野手)、高山俊(外野手)、二保旭(投手)

 昨年4月にトミー・ジョン手術を受けた高橋遥人はリハビリが続いている。2020年に巨人から移籍した山本と2012年ドラフト2位の北條の両内野手は、若手野手が次々と出てくる中で影が薄くなっている。2016年の新人王・高山は、4月18日に30歳になった。昨年38試合に出場したのみで、彼も正念場を迎えている。

巨人は菅野に加えて中島も…広島二軍で好調なのは?

〇巨人
菅野智之(投手)、中島宏之(内野手)、石川慎吾(外野手)、香月一也(内野手)、中川皓太(投手)育成、立岡宗一郎(外野手)育成

 通算117勝、沢村賞2回のエース菅野は、オープン戦で右ひじの痛みを訴えて降板。自身初の二軍スタートとなった。すでにブルペン入りしているがファームの実戦でも投げていない。あと77安打で2000本の大台に乗る中島は、長野久義、松田宣浩というベテランの加入で二軍スタートとなったものの、二軍では打率.310と元気いっぱいだ。同じく石川もファームでは打率.327とアピールしている。

〇広島
中﨑翔太(投手)、薮田和樹(投手)、林晃汰(内野手)、一岡竜司(投手)、中村奨成(捕手)

 広島3連覇時代のクローザーだった中﨑は、昨年中継ぎとして7ホールドを挙げたものの完全復調とは言い難く、二軍調整が続いている。二軍では5試合で1セーブ、防御率0.00と好調。2017年に15勝を挙げた薮田は以後5年で4勝と苦しんでいる。今季はファームで8試合に投げ3勝、防御率3.27。2021年は正三塁手だった林は以後、打撃不振でファーム暮らし。ただ今季は早くも4本塁打を放っている。

〇中日
根尾昂(投手)、大野奨太(捕手)、岡田俊哉(投手)、福田永将(内野手)、堂上直倫(内野手)

 昨年野手から投手に転向して注目を集めた根尾だが、今季はファームで6試合登板も防御率5.06。チームが低迷する中、浮上のきっかけをつかみたいところだ。2018年に日本ハムからFA移籍した大野はここ2年、一軍出場は計16試合にとどまっている。36歳になったがベテランの持ち味を活かしたいところだ。岡田は2月に右大腿骨骨折。現在リハビリ中だ。

 こういった各選手の状況を見ていくと、「新陳代謝」というプロ野球の競争の厳しさを実感する。とはいえ実績あるこれらの選手のうち、何人かは今後のペナントレースに大きな影響を与えるはずだ。

かつてのドラ1田中正義が日本ハムで開花か

【2023年5月1日〜7日 週間成績】

〈パ・リーグ〉
 オリックス6試4勝2敗0分 率.667
 日本ハム6試4勝2敗0分 率.667
 楽 天6試3勝3敗0分 率.500
 ソフトバンク5試2勝2敗1分 率.400
 西 武6試2勝4敗0分 率.333
 ロッテ5試1勝3敗1分 率.200

 オリックスは連日大接戦を演じて勝ち越し。日本ハムも健闘し、最下位を脱した。

〈打撃成績5傑〉※打撃の総合指標であるRC=Run Create順
 岡島豪郎(楽)22打9安1本5点1盗 率.409 RC6.04
 中川圭太(オ)28打8安2本6点0盗 率.286 RC5.31
 茶野篤政(オ)27打11安0本4点1盗 率.407 RC5.21
 柳田悠岐(SB)22打6安3本5点0盗 率.273 RC5.19
 頓宮裕真(オ)19打9安0本1点0盗 率.474 RC4.97

 楽天のベテラン岡島が打率4割の活躍。育成ドラフトから開幕スタメンを勝ち取ったオリックス茶野はリーグ最多の11安打。打点はオリックス中川の6打点が最多。ソフトバンク柳田はリーグ最多の3本塁打。盗塁は日本ハム五十幡亮汰が3。

〈投手成績上位〉※リーグ防御率に基づくPR=Pitching Run順
 宮城大弥(オ)1登1勝8回 責0率0.00 PR2.39
 則本昂大(楽)1登8回 責0率0.00 PR2.39
 山下舜平大(オ)1登1勝7回 責0率0.00 PR2.09
 石川柊太(SB)1登7回 責0率0.00 PR2.09
 瀧中瞭太(楽)1登1勝7回 責0率0.00 PR2.09
 小島和哉(ロ)1登7回 責0率0.00 PR2.09
 加藤貴之(日)1登7回 責0率0.00 PR2.09

 オリックス宮城は5月2日のソフトバンク戦で8回零封、楽天の則本は3日のロッテ戦で8回零封も勝利つかず。今季未勝利。オリックスの新鋭・山下は4試合登板してまだ自責点1。救援では日本ハム田中正義が2セーブ、西武・佐藤隼輔が3ホールド。

村上宗隆、坂本勇人が復調しつつある

〈セ・リーグ〉
 阪 神4試3勝1敗0分 率.750
 中 日6試4勝2敗0分 率.667
 DeNA5試3勝2敗0分 率.600
 ヤクルト5試2勝3敗0分 率.400
 巨 人6試2勝4敗0分 率.333
 広 島4試1勝3敗0分 率.250

 阪神が3勝1敗と快調だったが、既にホームゲーム1、ロードゲーム4試合が雨で流れている。秋の日程が厳しくなるのは懸念材料か。巨人は負け越し。6位中日とゲーム差なしの5位だ。

〈打撃成績5傑〉
 桑原将志(De)20打11安1本3点 率.550 RC7.05
 佐野恵太(De)20打7安3本7点 率.350 RC7.00
 村上宗隆(ヤ)19打7安2本6点 率.368 RC6.41
 坂本勇人(巨)18打9安1本6点 率.500 RC6.37
 宮﨑敏郎(De)14打5安3本4点 率.357 RC6.29

 先週はリーグ防御率が4.72と極めて打高だった。そんな中で首位を走るDeNAの桑原、佐野、宮﨑が快調。本塁打は佐野と宮崎の3が1位、打点は佐野の7。またヤクルト村上、巨人・坂本とチームを牽引する中心打者が復調した。盗塁は1が7人。

〈投手成績5傑〉
 大竹耕太郎(神)1登1勝7回 責0率0.00 PR3.67
 バウアー(De)1登1勝7回 責1率1.29 PR2.67
 グリフィン(巨)1登7回 責1率1.29 PR2.67
 髙橋宏斗(中)1登7回 責1率1.29 PR2.67
 ピーターズ(ヤ)1登5回 責0率0.00 PR2.62

 現役ドラフトでソフトバンクから阪神に入団した大竹は早くも4勝目。サイ・ヤング賞投手のDeNAバウアーは5月3日の広島戦で7回を投げ被本塁打の1点だけ。多彩な球種を駆使して快投を見せた。救援では中日のマルティネスが3セーブ、DeNA伊勢大夢が3ホールド。

文=広尾晃

photograph by Naoya Sanuki,Nanae Suzuki