“即戦力級”の逸材に各球団の指名が集中し、史上最多となる7度の抽選が行われたプロ野球のドラフト会議。通算3021試合出場のプロ野球記録を持つ元中日監督の谷繁元信氏が、セ・パ全12球団のドラフト戦略と上位指名選手の“プロでの可能性”を検証する。(全3回の2回目「パ・リーグ編」/#1「セ・リーグ編」、#3「ドラフト総論」へ)

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【1】オリックス「“高校生”で独自路線」

 横山聖哉選手(上田西高)がどこに指名されるか、僕としても楽しみだったんですよ。オリックスの指名の瞬間は「きたな!」って感じでしたね(笑)。大型なのに動けるショートで、いろいろと映像を見ましたが、間違いなく将来性がある。順調に努力を重ねて成長すれば、左右の違いはありますが坂本勇人や西武時代の中島宏之、同じ左でいうと鳥谷敬のようになれる可能性もあります。それだけの期待を抱かせる選手です。

 多くの球団が即戦力級の大学生投手を指名するなか、4位まで高校生を指名したところがやはり目を引きます。これは阪神と同じように、チームの強さが可能にさせる戦略でしょうね。一軍の安定感があるうちに「次の選手」を1人、2人、3人とファームで育てて、安定した状況を長く続けていく。いまのオリックスと阪神は、そういった状態にあると思います。少し前の両球団だったら、今年のような指名はできなかったでしょう。

 4位で指名された堀柊那選手(報徳学園高)もいいですね。高校生のキャッチャーではトップクラスだと思います。ここ2年、オリックスは高卒のキャッチャーを獲っていませんでしたし、数年後に若月健矢を突き上げる存在として大きく育っていってほしいです。

【2】ロッテ「“3回外れ”は痛かった」

 3回も抽選を外す(度会隆輝・横浜DeNA→草加勝・中日→細野晴希・日本ハム)というのは、ロッテとしては正直ちょっと痛かったでしょうね。最終的には、リストで上位にあげていた選手にいくしかない状況になってしまった。

 もちろん1位の上田希由翔選手(明治大)はいいバッターだと思います。ただ、もしかしたら当初は2位指名の候補だったかもしれない。プロ入り後はおそらく、サードの安田尚憲やファーストの山口航輝との競争になっていくと思います。

 僕は「外れ1位」という言葉があまり好きじゃないんですよ。村上宗隆なんて「外れ1位」の結果が三冠王ですし、坂本勇人も2000本打っている。逆にドラフト1位で1勝もできない投手や、一軍に上がっていない選手もいる。プロに入ってしまえば、ドラフト時の評価なんて関係ありません。そういった意味でも、上田選手には頑張ってほしいですね。

【3】ソフトバンク「育成8人、“突き上げ”あるか」

 ソフトバンクはおそらく、今年のドラフトで獲得する選手を来年からローテーションに入れたかったんだと思います。だから最初は武内夏暉投手(国学院大・西武が交渉権獲得)にいったけれど、そのあとすぐに前田悠伍投手(大阪桐蔭高)に切り替えた。いずれにせよ、左の先発タイプがほしかったんでしょう。

 細野晴希投手(東洋大・日本ハムが交渉権獲得)や古謝樹投手(桐蔭横浜大・楽天が交渉権獲得)が残っていたのに高校生の左投手を獲ったというのは、前田投手への高い評価の表れですね。1年目からはどうか……というところですが、まだ18歳ですから、これからどんどん伸びていくはずです。

 3位で指名された廣瀬隆太選手(慶應義塾大)は右の大砲タイプ。いまのソフトバンクは右の強打者が育っていないイメージがあります。井上朋也(20年1位)やリチャード(17年育成3位)など期待している選手はいるんですが、なかなか突き抜けるまでには至っていない。そういった選手たちとの競争と考えると、廣瀬選手にも1年目からチャンスはあるでしょうね。

 今年も8人の育成選手を指名したソフトバンクですが、近年は下からの突き上げがあまりない印象があります。3年連続で優勝を逃したのも、そのあたりに理由があるのかもしれません。とはいえ、選手をたくさん獲得して、上を安心させないというシステムの根本は変わっていない。下位指名や育成から上を目指す選手たちの奮起に期待したいところです。

【4】楽天「投手5人指名の事情」

 楽天の課題はやはり投手陣でしょうね。岸孝之、田中将大、則本昂大と先発陣が高齢化していて、あと何年稼働できるかわからない。抑えの松井裕樹も海外FAを取得して、メジャーにいく公算が高い。投手が5人という指名は、そこに1人でも2人でも入ってくれたらと考えてのことだと思います。

 1位の古謝樹投手(桐蔭横浜大)は「リリーフもできるのでは」という前評判でしたが、楽天は先発候補として指名したんじゃないでしょうか。2位の坂井陽翔投手(滝川二高)、3位の日当直喜投手(東海大菅生高)、7位の大内誠弥投手(日本ウェルネス宮城高)という3人の高校生投手は、それぞれ身体も大きいですし将来が楽しみです。

 楽天には荘司康誠(22年1位)や早川隆久(20年1位)といった、今後まだまだ伸びていくであろう若い先発もいる。先に言ったように上の人たちがさらに高齢になっていく数年のうちに、今年指名された選手たちが力をつけて、そこに割って入っていければ理想的ですね。

【5】西武「“らしい”指名」

 西武は3球団競合、1番人気の武内夏暉投手(国学院大)を引き当てましたから、これがまず大きかった。先発陣には高橋光成、今井達也、平良海馬がいて、一昨年のドラフト1位の隅田知一郎もいる。そこに武内が入ってくれれば、松本航も含めて少なくとも5枚は確定できる。間違いなく先発の1枚として考えているでしょうから、層を厚くするという意味でいいドラフトになったんじゃないでしょうか。

 2位の上田大河投手(大阪商業大)は、平良が先発にいって、抑えの増田達至も少しくたびれてきているので、その穴を埋める人材というイメージを抱いています。大学日本代表では抑えもやっていましたからね。大学ナンバーワンの投手に次いで、チームの課題にハマりそうな投手。これも適材適所のいい指名だったと思います。

 3位の杉山遥希投手(横浜)と4位の成田晴風投手(弘前工)は将来的な先発候補の高校生、さらに5位の宮沢太成投手(四国IL徳島)や7位の糸川亮太(ENEOS)といったリリーフ候補も含めて6人も投手を指名したなかで、1人だけ野手がいるのが目を引きます。6位の村田怜音選手(皇學館大)は、196cmで110kgですか。なんとなく西武っぽいというか、やっぱりこういうロマンのある選手が好きなんだな、と(笑)。おかわりくん(中村剛也)や山川穂高、そして渡部健人の系譜に連なる、右のスラッガー候補でしょう。

 大卒ですから何年も余裕はないかもしれませんが、一発の楽しみはありますね。この村田選手とソフトバンクに入った廣瀬選手の2人は、右の長距離砲として来年ちょっと気にして見ていきたいですね。いきなり試合に出て打つようだと、面白い存在になるかもしれません。

【6】日本ハム「まさかの“外れ外れ1位”」

 予想外だったのは、細野晴希投手(東洋大)が抽選を2度外した後のタイミングでの指名になったこと。理由としては、やはりコントロールだと思います。定まるときと、そうでないときの差が激しい。前評判が高かっただけに、1位とはいえ彼もたぶん悔しかったと思うんですよ。最初に名前を呼ばれるだろうと考えていたのに、呼ばれなかったわけですから。

 もちろん、左で158キロを投げられるポテンシャルは間違いなく一級品です。何が原因だったのかを自分でも考えるでしょうし、日本ハムでいい指導者に巡り合って制球力さえ修正されれば、まったく問題ありません。他球団に「うわ、やっぱり細野にいっておけばよかった……」と思わせるくらい頑張ってほしいですね。

 日本ハムは1位以外、全員が野手なんですよね。育成でも1人だけですか。投手陣がそんなにいいイメージはないというか、加藤貴之がFA、上沢直之がポスティングでメジャーにという状況なので、1枚でも多いほうがいいだろうとは思うんですが……。チームとして「いまの投手陣で来年、再来年は戦えるように」という判断をしたのかもしれません。そう考えるとなおさら、細野投手には1年目からローテーションに入ってほしいはずです。

 そんななか、大学ナンバーワンのキャッチャーである進藤勇也選手(上武大)を指名できたのは大きかった。折り返しの2位で彼を獲るのは戦略通りだったと思います。映像でプレーを見ましたが、肩も強いし動きも俊敏。182cm、90kgと身体も大きい。日本ハムはキャッチャーが決まっていないので、早いタイミングで絶対にチャンスは訪れると思います。そのチャンスを掴むことをできれば、一気にレギュラーになってもおかしくないですね。

(構成:NumberWeb編集部)

<後編「ドラフト総論」に続く>

文=谷繁元信

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