森保一監督率いる日本代表は親善試合での快勝劇続きで“史上最強”との評判も目にする。チームの核をなすのは久保建英、南野拓実、遠藤航、冨安健洋ら欧州各国で活躍する面々だが、彼ら以外にも……国内で活躍を見せるJリーガーも多士済々だ。解説者の水沼貴史氏に彼らのストロングポイント、代表定着へのカギを聞いた。

 いよいよ、2026年ワールドカップのアジア予選が始まります。今大会から史上最多の48カ国が出場するとあってアジア枠も従来の「4.5」から「8.5」と大幅に拡大。世間では「勝って当たり前」という風潮はより強くなっていくでしょう。

 ただ、普段とは異なるプレッシャーがかかるW杯予選はシビアな戦いになることは間違いありません。世界ランクでは格下となる対戦相手が続きますが、森保一監督は海外組を中心とした現状のベストメンバーを招集しました。「決して侮ってはいけない」「どんな試合も全力で勝ちに行く」というメッセージが伝わってきます。

招集した26名のうち、海外組が22名という時代

 ケガによる離脱が相次いでいますが当初招集した26名のうち、海外組は22名。今や、ほとんどが欧州でプレーする選手たちです。

【日本代表招集メンバー/W杯アジア2次予選・ミャンマー(11/16)、シリア(11/21)】
GK

前川黛也(ヴィッセル神戸)
大迫敬介(サンフレッチェ広島)
鈴木彩艶(シントトロイデン/ベルギー)

DF
谷口彰悟(アルラーヤン/カタール)
渡辺剛(ヘント/ベルギー)
中山雄太(ハダースフィールド/イングランド2部)
町田浩樹(ユニオン・サンジロワーズ/ベルギー)
毎熊晟矢(セレッソ大阪)
冨安健洋(アーセナル/イングランド)
伊藤洋輝(シュツットガルト/ドイツ)
菅原由勢(AZ/オランダ)

MF/FW
遠藤航(リバプール/イングランド)
伊東純也(スタッド・ランス/フランス)
浅野拓磨(ボーフム/ドイツ)
南野拓実(モナコ/フランス)
守田英正(スポルティング/ポルトガル)
鎌田大地(ラツィオ/イタリア)
相馬勇紀(カーザ・ピア/ポルトガル)
堂安律(フライブルク/ドイツ)
上田綺世(フェイエノールト/オランダ)
田中碧(デュッセルドルフ/ドイツ2部)
佐野海舟(鹿島アントラーズ)
久保建英(ソシエダ/スペイン)
細谷真大(柏レイソル)

※前田大然、古橋亨梧(ともにセルティック)、三笘薫(ブライトン)、川辺駿(スタンダール・リエージュ)、伊藤敦樹(浦和レッズ)はケガのため不参加

 強豪のドイツやトルコに快勝した親善試合で証明したように、今の日本代表はどんな強敵を相手にしても全く臆することがありません。それはリストを見てもわかる通り――多くの選手が世界最高峰の欧州各国リーグで、しかも各クラブの中心選手としてプレーしていることが大きい。森保監督がよく口にする“日常”の変化が今のチームの好調さに反映されていると言えます。

三笘と同学年、毎熊のプレースタイルを説明すると

 とはいえ、チームを底上げする意味でも、Jリーグ組の奮起に期待せずにはいられません。そのうちの一人が9月に初招集されたセレッソの毎熊晟矢です。

 9月のトルコ戦、10月のカナダ戦で右サイドバックとして先発しており、首脳陣の期待も大きいように感じます。

★毎熊のストロングポイント:元ウインガーとしてのオフェンスの感性★

 三笘薫と同じ1997年生まれの26歳。もともとはウインガーで、オフェンス面の感性には光るものがあります。トルコ戦でのアシストのようなプレーはもちろん、攻守におけるハードワークやインターセプトしてから前に出ていく推進力が魅力です。

 Jリーグでも自信を感じるようになりました。前線で自分の特徴を出せるようになったことがプラスに働き、コンパクトな守備をするセレッソの中でビルドアップやポジショニングでのエラーが少なくなってきた。2022年にJ2のV・ファーレン長崎から加入し、絶対的な存在だった松田陸(現・ヴァンフォーレ甲府)からポジションを奪ったことはもっと評価されてもいい。SBへのコンバートは長崎時代のプロ1年目と言いますから、手倉森誠監督(当時)は今頃ほくそ笑んでいるでしょうね(笑)。

菅原との右SB争い…今後、必要となる能力は?

★レギュラー奪取へのカギ:伊東、久保らとの連動性向上★

 今後はインターナショナルレベルの守備への対応は当然として、前線の選手とのコンビネーション向上がレギュラー奪取への関門になってくるでしょう。右SBの一番手にいる菅原由勢はビルドアップの関わり方がうまく、攻撃面の貢献度も非常に高い。毎熊と通ずる部分も多いと思いますが、現段階では日本の右サイドを担う伊東純也、久保建英、堂安律といったアタッカー陣との関係性で一歩リードしている。特に久保とは世代別代表の頃から一緒にやっているので分かり合えている部分も多いはず。

 毎熊としては、限られた時間の中で彼らをどう生かし、どう生かされるかを突き詰めないといけません。決して簡単なことではないですが、継続的に招集されているのはそれを深めるためでもあり、森保監督に見込まれている何よりの証拠。オフザピッチでの振る舞いも大切にして欲しいです。

浦和産・大型ボランチ伊藤敦、鹿島の“佐野回収”にも期待

 2人目は浦和の伊藤敦樹です。今回は残念ながら負傷辞退となりましたが、遠藤航や守田英正、田中碧といった充実の選手層を誇る中盤に割って入るボランチとして注目を集めています。

 185cmと恵まれた体格に加え、高い技術がある。まだ25歳とポテンシャルは十分。トルコ戦でも強烈な左足シュートで代表初ゴールを決めました。ただ、日本代表ではもっと強烈なアピールが必要だとも感じています。課題はトランジションの部分。攻撃から守備に変わった瞬間、誰よりも先にスプリントしてほしいし、ボール奪取ではもっと目立ってほしい。周囲を引っ張る選手に成長できたら欧州組を脅かす存在になれるはずです。

★佐野海舟が“推しメン”なワケ:ボール回収、二度追い三度追いがすごい★

 その伊藤に代わって初選出されたのが、鹿島アントラーズの佐野海舟です。彼のことは以前から“推しメン”の一人にあげていました。

 中盤、アンカーの仕事がメインで、粘り強い守備に特徴がある選手。ボールを回収するプレー、相手から奪い取るプレーを連続的にできるのが強みで、J2町田ゼルビア時代には90分平均のボール奪取回数でリーグ1位を記録したこともあります。二度追い、三度追いしてボールを奪うプレーを見ればすぐに凄さがわかると思いますよ。

両SBもできるポリバレント性は監督にとって“ありがたい”

 今季から加入した鹿島では両サイドバックも経験するなど、ポリバレント性も持ち合わせており、監督にとっては本当に“ありがたい選手”。しかも今年の12月で23歳とまだ若く、伸び代もあります。

 課題は攻撃面ですが、ボールを奪ってから前線に送るパスの質も向上し、自らドリブルしてシュートを決めるなどプレーの幅が着実に広がりました。ドイツで“デュエルキング”の称号を得た遠藤のようなお手本と一緒にプレーすることで飛躍のきっかけを掴むかもしれません。ちなみに弟・航大は一足お先に海外でプレーしており(オランダエールディヴィジ・NECナイメヘン)、今後注目の兄弟です。

森保好みの1トップ候補は、パリ世代のスコアラー

 佐野と同日にチームに加わったのが、パリ五輪世代のエースの細谷真大です。古橋亨梧や前田大然と負傷者が続出したことで、合宿中のU-22日本代表から昇格となりました。

★パリ世代エース細谷:森保監督好みな1トップ候補である根拠★

 ポジショニングがよく、一瞬のスピードで抜け出す力に優れ、何よりフィニッシュワークがうまい。柏ではマテウス・サビオとの阿吽の呼吸で多く決定機を作り、今季は初めて二桁ゴール(13得点/11月16日現在)に到達しました。177cmと決して高さはないですが、ヘディングを競り合うタイミングがいいので身長もデメリットになりづらい。

 フィジカルも優れていて、前線で身体を張ることもできます。前線のプレスもサボらないタイプで、森保監督が好みそうなワントップ候補。浅野拓磨のスピード、上田綺世のシュート技術といった一芸で魅せるタイプというより、90分通してジワジワ良さを味わえる選手ですね。

彼らJリーガーの活躍が海外組の突き上げとなれば

 寡黙であまり周囲に流されないタイプと聞いたことがあります。そういう芯の強さもストライカー向き。ネルシーニョ監督が率いていた頃は途中出場が多かったですが、ポジションを獲得して結果を出してきました。海外リーグでも戦えるようなたくましさをプレーから感じています。細谷がこのタイミングでA代表を経験することは、これから最終予選に挑むパリ五輪代表にとっても、残留争いに身を置くクラブにとってもプラス材料です。

 彼らJリーガーの活躍が、海外組の突き上げにもつながれば、日本代表はさらに充実度が増すはず。期待しましょう。

毎熊晟矢(まいくま・せいや)

1997年10月16日、長崎県出身。東福岡高時代の2015年にインターハイと全国選手権の2冠を達成。桃山学院大を経て、2020年にV・ファーレン長崎(J2)に加入。プロ1年目にサイドバックにコンバートとされ、21年にセレッソ大阪(J1)へ完全移籍。2023年9月の欧州遠征で日本代表初招集、トルコ戦でA代表デビューを飾った。179cm、69kg

伊藤敦樹(いとう・あつき)

1998年8月11日、埼玉県出身。浦和レッズのアカデミーで6年間プレーし、流通経済大へ進学。4年時には主将を務めるなど成長を見せ、21年から浦和に加入。開幕戦からスタメン出場し、レギュラーを獲得。23年6月に日本代表に初招集、エルサルバドル戦でデビューを飾った。9月のトルコ戦では代表初ゴールをマーク。185cm、78kg

佐野海舟(さの・かいしゅう)

2000年12月30日、岡山県出身。米子北高では1年時からレギュラーを獲得し、3季連続で全国選手権に出場。2019年に町田ゼルビア(J2)に加入し、同年にリーグデビュー。23年に鹿島アントラーズ(J1)に完全移籍。同年11月のW杯アジア2次予選で日本代表に初招集された。父が名づけた「海舟」は幕末から明治の偉人・勝海舟に由来する。176cm、67kg

細谷真大(ほそや・まお)

2001年9月7日、茨城県出身。柏レイソルのアカデミー出身。U-18時代の2019年に2種登録され、Jリーグデビュー。20年トップ昇格、翌年にプロ初ゴールを記録。22年7月のE-1選手権で日本代表初招集。同年に酒井宏樹、中山雄太に続くクラブ3人目となるベストヤングプレーヤー賞を受賞した。パリ五輪代表。177cm、69kg

文=水沼貴史

photograph by JFA/AFLO