日本代表MF鎌田大地が、新天地ラツィオで逆風にさらされている。11月のW杯予選ミャンマー戦で鮮やかなミドルシュートを叩き込む活躍を見せた一方で、クラブでは出番が限られ、さらには先発出場のチャンスを得た一戦でチームは逆転負けを喫した。現地メディアの批判も強まったと報じられる中、イタリア在住の日本人ライターが“現地だから分かる”渾身ルポをお届けする。(NumberWebオリジナルレポート/全3回の第1回)

 これは腹を括らねばならんかもしれん。

 サッリ親分の顔にはそう書いてある。

 11月25日、セリエA第13節で彼の率いるラツィオが最下位サレルニターナに1−2の逆転負けを喫した。昨季2位のチームがすでに6敗を喫し、勝ち点17の11位と迷走している。

 奮闘の末の惜敗なら救いようもあるが、前半にPKで先制したラツィオは後半開始とともに守りに入り、あえなく同点と逆転を許した挙げ句、覇気のないプレーを続けた。

「何かがおかしい。このチームは昨年までのチームと別物になってしまった。もはや練習指導でどうにかなるものなのかわからん。もし、ワシ自身が低迷の原因だと判断したら(解任されるのを待たず)クラブを去る決断もありうる」

 試合後、苦渋と困惑に満ちた指揮官は辞任の可能性をほのめかし、にわかに緊張が高まった。11月初旬には「ここで指導者キャリアを終えてもいい」と発言していただけに現場のショックは大きい。

代表戦で活躍した鎌田だが、最下位相手の一戦で…

 鎌田大地の置かれた状況も切迫しているといえるだろう。実に9試合ぶりに先発の機会を与えられたサレルニターナ戦は、誰より鎌田にとって正念場のはずだった。

 11月16日のW杯アジア2次予選ミャンマー戦に先発出場し、鮮やかなミドルシュートで1ゴールを決めた鎌田は、腰痛によって日本代表を離脱してローマへと戻った。調整が必要だったとはいえ、サレルニターナ戦での先発出場は確実視されていた。中盤の大黒柱ルイス・アルベルトが累積警告によって欠場し、その代役は鎌田しかいなかったからだ。

 相手のサレルニターナは開幕から12戦連続未勝利の最下位チームで、10月上旬に新監督フィリッポ・インザーギを迎えたばかり。遠征で乗り込むラツィオはDFロマニョーリとDFカサーレの主戦センターバックコンビも怪我で欠くとはいえ与し易しと考えたサッリ親分は、鎌田をゲームメーカーとして試す絶好の機会と踏んだにちがいない。

 このゲームに関して言えば――鎌田は“周囲に生かされる選手”ではなく“周囲を操り、決める選手”であることが求められた。

自陣までボールをもらいにいっているのに

 鎌田は、攻撃の全権を握るL・アルベルトの代役として4-3-3の左インサイドハーフに入った。だが、キックオフの後、ボールが回ってこない。ピッチの中央や自陣に戻ってボールをもらいにいってもなかなか組み立てに絡めない。

 出場時間の少なさの影響か、パスミスやボールロストを連発した。ワンツーで前に出ようとしたもののFWザッカーニに意図が伝わらずボールを奪われた15分のシーンが象徴的だ。

 その結果、前半、ラツィオの攻撃はDFラッザリと中盤のMFゲンドゥージ、そして前線のFWフェリペ・アンデルソンの右サイド3人に偏った。

 F・アンデルソンのシュートに対するシャドーの動きをきっかけに、鎌田にもボールが回るようになったのは27分すぎだ。攻勢に出たラツィオは、43分に得たPKを主将のFWインモービレがきっちり決めて先制する。

 だが、サレルニターナはシーズン初勝利を諦めなかった。55分に泥臭く同点とすると、11分後の間接FKで36歳のベテランMFカンドレーバが無回転キックによるスーパーゴールを決めて逆転弾を叩き込んだ。

実況「カマダには気迫が足りない」、最低点の現地紙も

 相手FWカスタノスを倒して失点の遠因となるFKを与えたのが鎌田なら、シュートするカンドレーバへのブロックが遅れたのも鎌田だったことから、背番号6への心象は甚だ悪いものになった。

 イタリアDAZNの中継実況は「カマダには何が何でも止めるという気迫や執念が足りない」と冷静に断じた。

 試合終盤、ラツィオはロングボールに頼りだした。指揮官サッリは「我慢してパスを繋げ」と指示を出したが、敵陣でのパスワークは著しく正確性を欠いた。反撃の糸口すら見いだせないまま、機能不全のラツィオは波乱の白星をサレルニターナに献上した。

 闘志の欠片も見せなかったチームを『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙は「疑いなく今季最低の試合内容。おそらくサッリ就任以来最もひどいゲーム。主力選手の欠場は言い訳にならない」と酷評した。リーグ戦初のフル出場を果たしたとはいえ、鎌田は不甲斐ない逆転負けの戦犯とされ、「躍動のかけらもない」と評点5の落第点。

 地元ローマの『コリエレ・デッロ・スポルト』紙に至っては、チーム最低評価の評点4で「失望そのもの。許し難いほどボールロストが多すぎる。インサイドハーフも満足にできないのに、ルイス・アルベルトの代役などとても務まるはずがない」とバッサリ斬って捨てた。

“カマダはゴールに絡んでナンボの選手”という認識

 今、鎌田はイタリアに来て以来、最も厳しい批評に晒されている。

 酷評は期待の裏返しともいえるが、現地にはそもそも“カマダは中盤から前線に絡む攻撃的プレーヤーでありゴールに絡んでナンボの選手”という認識がある。

 ラツィオの中盤には、フィジカルを生かした圧力と縦への推進力が魅力のMFゲンドゥジーやバランス感覚と意外な決定力のいぶし銀ベシーノ、積極的な攻撃センスの若手レジスタであるMFロベッラなど多彩な顔ぶれが揃うが、地元メディアやラツィアーレ(ラツィオファンの通称)にとっての鎌田とは“昨季UEFAチャンピオンズリーグでの3得点を含む年間16ゴールを挙げた攻撃的MF”に他ならない。

 “16ゴールの男”という触れ込みでの期待が大きい分、鎌田が水平方向にボールを回したりバックパスをするたびに彼らは戸惑ってしまう。

 鎌田にも言い分はあるはずだ。ただし、基本的にウイークデイの平日練習は報道陣に公開されておらず、現在、セリエAの試合後にミックスゾーンで取材できるのは放映権を持つテレビ局とラジオ局、いわゆるステークホルダー媒体に属する現地記者のみに限定されるようになっている。

では、理解者であるはずのサッリは鎌田をどう見ているか

 となれば、一番の理解者であるはずのサッリ監督に直接問いただすしかない。戦術大国きっての曲者、サッリ親分は実際のところ鎌田をどう見ているのか。

 代表ウイーク直前、熱闘の末に0-0のスコアレスドローに終わったローマ・ダービー後の会見で、筆者は親分を直撃した。

<第2回に続く>

文=弓削高志

photograph by Kiichi Matsumoto