日本を代表する長距離ランナーであり、箱根駅伝2区での競り合い以降、誰もが認めるライバルとなった相澤晃選手と伊藤達彦選手。2人をお迎えした2月1日のNumberPREMIERトークライブ「ライバル2.0」は、時に笑いに包まれ、時に真剣な眼差しでの語りが続く時間になった。たっぷり90分以上にわたったトークの中から、その一部を紹介する。

「大迫さんの次の主役は僕たちだっていう気持ちは強いです」

 話題が、将来的な「マラソン挑戦」というテーマになり、影響を受けたランナーとして「大迫傑」の名前があがったときに、相澤晃(旭化成)はそう言い切った。伊藤達彦(Honda)も横で頷いている。そもそも伊藤は2021年の東京五輪で大迫がマラソンで6位に入賞した直後、SNSに以下の投稿をしている。

<次の世代って言われてるのに ひよってる奴いる⁉︎⁉︎ いねーよなー⁉︎⁉︎ 大迫さんに続くぞー!!!>

 大迫について2人は続ける。

「ずっと第一線で活躍しているので、そういう人の行動やレーススタイルを見るのは僕自身が勉強になりますし、陸上をやっている中高生の心も動かされると思うんです。そういうのはすごいな、と」(伊藤)

「カッコいいですよね。顔もカッコいいんですけど(笑)、信念もカッコいいですし。僕もずっとカッコいいランナーになりたいと思っているので、大迫さんとは方向性は違うかもしれないですけど、そうなりたいです。実際に大迫さんに影響を受けているので」(相澤)

 そして将来的なマラソン挑戦に関しては、明確な「YES」という意思を示してくれた。

 相澤と伊藤の世代は、昨年12月の日本選手権1万mで日本歴代2位のタイムをマークした太田智樹(トヨタ自動車)、東京五輪や世界陸上に3000m障害で出場、世界陸上では決勝にも残っている青木涼真(Honda)ら強力なメンバーが揃っている。

 その中でも、精神的な強さや一貫性が求められる「マラソンランナーとしての未来」に期待が膨らむのは、東洋大時代から駅伝やロードで圧倒的な強さと安定感を見せてきた相澤、そしてその相澤と駅伝などで競り合いながら、粘りや精神的なタフさを自らの走りで表現してきた伊藤だろう。

2025年の東京世界陸上はマラソンで

 彼ら2人の中では、いつマラソンに挑戦するか、ロードマップが描けているようだ。

「パリ五輪の次(の年)に東京で世界陸上があるので、そこまではトラックで勝負したいなと思っています。そこからマラソンにいこうかな、と。現時点の予定では、ですけど。やっぱりマラソンは花形というか、一番注目されるので、そこで(陸上人生の)最後に勝負したいですね」(伊藤)

「僕は、東京世界陸上はマラソンで目指そうと思っています。もともとはパリもマラソンでという気持ちがあったので……。なるべく早くやりたい、という思いが強くて。どのくらい今走れるかわからないですけど、元々好きなのはロードなので、そこに戻って活躍したいです。僕もマラソンに憧れがありますし、キプチョゲ選手と一緒のレースを走ってみたいんですよね」(相澤)

 だが、理想とすべきマラソンランナー像は異なる。伊藤がマラソンにおいて目指すのは「トリッキー」な選手だそうだ。

「保守的なレースではなくて、一気に、根性的に飛び出していくようなレースがカッコいいなと思うんです。2019年のMGCで設楽悠太さんが飛び出したのが一番印象に残っていて、トリッキーというか、そういう選手になりたいです」

 一方の相澤からは抽象的なイメージと、具体的なタイムが飛び出した。

「新しいマラソンをしたいですね、うまく言葉にできないんですけど、圧倒的というか。それと旭化成に入る時に、宗猛監督から『2時間3分30秒で走れる』と言われているので、自分の中ではその気でいます。その気でいるだけですけど(笑)、でも、ちゃんと段階を踏んでいくことを大切にしたいな、と」

 ライバルの言葉に伊藤がすかさず被せた。

「じゃあ、僕は2時間3分29秒です!(笑) 正直、イメージは湧かないんですけど、最初は怖いもの知らずでいけると思うので」

「ランニングデート」と呼ばれることへの意外な感想

 今回の90分の対談では、そのほかにも

●お互いの共通点と全く違う部分
●もう一度箱根駅伝を走るなら何区を希望する?
●一緒だった欧州遠征中に相澤選手が伊藤選手に教えた本について
●現時点で2人がロードよりもトラックを走るのが好きな理由
●1万mで目指すパリ五輪への具体的な道程
●いま「推している」アーティストについて
●「ランニングデート」と呼ばれることへの意外な感想

など、多岐にわたるテーマについて語ってくれた。また、2人の人間的な魅力が詰まっており、トップランナーとして戦うからこその「友情」を感じられるものになった。

 真のライバルとして、「ランニングデート」を日本中に披露する2人が、今年のパリ五輪、そして2025年以降のマラソンシーンを牽引していくことを期待したい。

文=涌井健策(Number編集部)

photograph by Tomosuke Imai