自分の野球人生とは?
プロ6年目、横浜DeNAベイスターズの伊勢大夢は自身にそう問いただし、葛藤し、導き出した答えが“先発”への挑戦だった。
過去5年間で238試合を投げ、リリーバーとして絶対的な地位を確立しながら、それを自ら捨てるという不退転の覚悟。難しい挑戦の日々ではあるが、伊勢はどこか晴れやかな表情で言うのだ。
「新鮮というか不思議な感覚ですよね。僕はこれまでずっとベンチ(ブルペン)にいましたし、練習に行ってもベンチに入らない日があって、ああこれが先発なんだなって」
先発転向に至った思いとは…
訊きたいことは、ただひとつだけ。なぜ先発転向を宣言したのか?
伊勢は「投手としての評価を高めたい」と、昨年の契約更改後の会見で語っていたが、単にそれだけの理由だとは思えなかった。先発転向をイメージしたのは、いつぐらいだったのだろうか。そう問うと、伊勢は目線を下げ、考えを巡らせて口を開いた。
「2022年が終わったぐらいですかね……」
2022年といえばプロ3年目、伊勢はリーグ最多の71試合に登板し、39ホールド、防御率1.72という圧倒的な数字を残したシーズンである。メディアからは“伊勢大明神”ともてはやされる一方、この2年間、コンディション不良もあり、伊勢はいつもどこか浮かない顔をしていたのが思い出される。
「2023年シーズンになって、7回、8回という立ち位置も頂いて、チャンスがあれば9回も投げさせてもらえるかもしれない立場まで来て……。でも、なんか満足しているわけじゃないけど、誤解を恐れずに言えばマンネリ化している自分がいたんですよ」
先発挑戦への想いが決定的になったのは、昨年のポストシーズンだったという。伊勢はクライマックスシリーズで5試合を投げ1勝1セーブ、無失点。日本シリーズでは4試合に登板し、同じく無失点で獅子奮迅の活躍を見せた。日本一という大きな喜びの一方、伊勢の心には人知れず影が宿った。
ポストシーズンで気持ちを上げ過ぎてしまって
「正直、ポストシーズンで気持ちを上げ過ぎてしまって、終わった後に翌年の開幕まで持っていけないという自覚があったんです。それもあって踏ん切りがついたというか、球団に先発転向を伝えさせてもらったんです。先発で行けるなら行けるで、また新しい自分が作れますし、僕個人としては、一野球人としてここからどうするのか。ターニングポイントを作るのは、ここがタイミングなんじゃないかなって」
先発が駄目ならリリーフに戻ればいい、という安易な挑戦ではない。なぜ伊勢は今、自分の野球人生を懸けて挑むのか。そして先発転向へ秘めた勝算とは——?
〈全2回の1回目/転向の真相を語る2回目につづく〉
文=石塚隆
photograph by SANKEI SHIMBUN


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