2024-25シーズンを終えた欧州サッカーは移籍市場の時期に入った。1年後に北中米W杯を控える中、サッカー日本代表の主力はどんな進路を取るのか? 各国番記者・情報筋がシーズン採点とともに“移籍の噂”の信憑性を本音で記す。〈翻訳・構成:井川洋一:NumberWebレポート/全2回。第1回、久保編からつづく〉

ドルトムント、インテル、ローマ…強豪が熱視線

 リバプールのファンから支持され、その多くが残留を望んでいるものの、遠藤航は今夏に移籍する可能性が高いと報じられている。

 特にドイツやイタリアのクラブが、この32歳の守備的MFに興味を示しているようだ。ボルシア・ドルトムントやバイヤー・レバークーゼンといった強豪は、彼のブンデスリーガでの経験やそこで見せてきたリーダーシップを高く評価しているという。シュツットガルトに帰還する線もありそうだ。インテル・ミラノやローマも、遠藤の確かなボールテクニックと際立つボール奪取力に惹かれているらしい。

 近年の欧州では、全般的に日本人選手の評価が高まっている。少年時代から良い指導を受け、技術と規律、プロフェッショナリズムが高く、両足を使える選手が多い。その国の代表の主将で、欧州での経験も長い遠藤には、まだまだ本場で需要がある。

 北米のメジャーリーグサッカーや彼の母国のJリーグでは当然、問題なく主力として活躍できるはずだが、欧州のトップリーグでもまだまだやれる。リバプールに残留しても、終わったばかりのシーズンのように、チームの力になれるはずだ。

 ただし多くの出場機会を求めるなら、移籍する方が賢明だろう。リバプールはクリスタル・パレスの21歳のセントラルMFアダム・ウォートンを注視しているようで、そのための資金づくりとサラリーの調整が必要になる。

 キャプテンのフィルジル・ファンダイクは「ワタはどんなチームでも必要とされる選手だ。スポットライトが当たらないところで、汚れ仕事を進んでやってくれるのだから」と称えているが、中盤の序列から考えても、遠藤が換金対象になると考えるのが自然だろう。

昨季は即戦力補強がほぼなし…今季は複数の実力者か

 アルネ・スロット監督も遠藤への称賛を惜しまないが、2024-25シーズンを見るかぎり、彼の構想のなかで遠藤はレギュラーではない。中盤の選手に彼が求めるものは、守備力よりもライアン・フラーフェンベルフのような推進力であり、アレクシス・マクアリスターのような展開力だ。

 試合終盤に火消し役を担える遠藤の価値を指揮官は評価しているものの、試合開始からはそうしたタイプを求めていないように見える。

 遠藤は中盤の底から全体を動かすような司令塔ではなく、危機の芽を摘み、奪ったボールは近くに散らすことが多い。スロット監督はフェイエノールト時代からハイプレスよりポジショナルプレー、カウンターアタックより自発的な攻撃を好み、リバプールでの1年目も同じだった。だから、遠藤の出番は激減したのだ。

 スロット監督を引き抜いたリバプールのスポーツディレクター、リチャード・ヒューズは若手の新戦力を好む。新シーズンへの中盤の補強のウィッシュリストには、パリ・サンジェルマンのジョアン・ネヴェス、ポルトのアラン・バレラ、レアル・ソシエダのマルティン・スビメンディ、スポルティングのモアテン・ユルマン、アタランタのエデルソンらの名前があるという。昨夏、プレミアリーグでのデビューシーズンに臨むスロット監督は、フェデリコ・キエーザくらいしか即戦力を補強してもらえなかったので、今夏は複数の実力者を迎えることが予想される。

「監督からの信頼を感じる」「ワタはとても知的」

 そうなると、遠藤は放出されるしかないのだろうか。彼自身、チームでの自身の立ち位置を理解していて、3月にはこんな話をしている。

「自分は最後の15分とか20分くらいに投入されることが多い。特に勝っている時ですね。出番が来れば、良いプレーを心がけています。監督とはよく話をし、僕の姿勢やチームとの関わりを褒めてくれますね。それもあって、今は監督からの信頼を感じますし、ここにいられてハッピーです」

 一方、スロット監督は5月の記者会見で、遠藤についてこう語った。

「ワタはとても知的な選手だ。彼の試合展開を読む能力は、多くの若手が参考にすべきものだ。それは得難いものでもある。とはいえ、もちろん私たちはすべての側面を評価したうえで、新シーズンに備えていく」

遠藤は“ミルナーのような”頼れる存在に

 昨夏にスロット新監督を迎えたばかりのリバプールは、マルセイユから届いた遠藤への推定移籍金1180万ポンド(当時のレートで約23億5000万円)のオファーを退けている。彼の代役がいないことを理由にして。

 では今、そのようなオファーが届いたら、クラブはどう対応するだろうか。リバプールには厚い選手層が必要だ。2024-25シーズンは指揮官がローテーションをあまり使わなかったこともあり、終盤には選手たちが目に見えて息切れし、リーグカップは決勝で敗れ、FAカップでは4回戦で2部の最下位だったプリマス・アーガイルに屈し、ショッキングなニュースをもたらした。

 リバプールのようなトップチームにも、スーパースターやワンダーキッドだけでなく、目立たない実力者も必要だ。その意味で、遠藤の必要性はまだありそうだ。彼の経験、順応性、信頼感、そして知性には、大きな価値があるのだから。

 遠藤はこの2年、それぞれのシーズンで状況は異なりながらも、自身の価値を証明している。そしてリバプールは伝統的にベテランを重用してきた──近年の代表格ジェームス・ミルナーのように、遠藤も複数のポジションを高度にこなす頼れる存在になれるだろう。

リバプールでチャンスがあるのに、それを捨ててまで…

 いずれにせよ、遠藤はリバプールの英雄のひとりとして、サポーターの胸に刻まれる。それだけは間違いない。彼が優勝トロフィーを掲げた時のファンの盛大なリアクションを見れば、それは明らかだ。

「おそらく自分は、来季もリバプールにいるでしょう」と遠藤は言った。

「リバプールでプレーするチャンスがあるのに、それを捨ててまで、他のクラブに移りたいと思います? 僕はそうではない」

 リバプールのファンが彼を胸に留めているように、遠藤の心もリバプールの赤で染まっているようだ。〈つづく〉

文=ジョン・ブルーウィン

photograph by Molly Darlington/Copa,Getty Images