2020年に導入した新型LS、ISを中心とした レクサスオールラインナップ試乗会が富士スピードウェイ内レクサスカレッジを拠点に行われた。RCやLC、RX、CTに至るまで正にフルラインナップが用意された華やかなテストデーであったが、オクタンとしてはLSとISの正当進化について、それぞれ島崎七生人、松田秀士の二人に評価してもらった。

レクサスのオールラインナップ試乗会


レクサスLS 島崎七生人の見解
車好きの方を相手に自分の年齢の話をする時に「スバル360と同級生です」などといったりしているが、そういうお年頃で頭もカラダも固くなってきたせいか、レクサスLSというと、いまだ頭の中のユーザー辞書が”セルシオ”を候補の筆頭に出してきて、そうではなく半角英字に切り替え”LS”とタイプして確定する手順を意識的に踏んでいるようなところがある。初代LS=セルシオは、それほど偉大な存在だったという訳だ。メルセデス・ベンツやBMWが初代LSの静粛性や内装のフィニッシュレベルを徹底的に研究したというのは有名な話だが、クラウンを知っていた我々には当たり前のようにも思えた初代セルシオの出来映えは、世界的に見ればインパクトは絶大だったのだ。


 
レクサスによれば、LSは1989年の米国発売以来、30年以上、90以上の国と地域で累計およそ87万台(2020年10月31日時点)が販売されたという。ご承知のとおり日本市場でレクサス・チャネルのフラッグシップとしてLSが投入されたのは2006年、LS通算4世代目からで、現在のモデルは世代でいうと5世代目にあたり、2017年にフルモデルチェンジを受けた。ここで冒頭の頭の固さの話に戻すと、実は現行LSに最初に乗った時の印象は、とても本音トークではいえない(書けない)くらいだった。

とくに硬めの乗り味とそれを受け止め切れていないボディにはショックを受けたほどだった。前身の2006年に登場した4代目(日本ではLSとして初代)は品のいいスタイルも颯爽とした走りも実に好印象で、その頃といえば自分ではアルファロメオ166に2台乗り継いでいた頃だったが、166とスタイルも身体に染みついた乗り味も重なる……と、密かにそう思えたほどだった。なのに5代目は、いったいどうしたことだろう?と、かなり落胆したことを覚えている。
 
その後、イヤーモデルごとに試乗の機会があり試してきたが、第一印象に対しては「まあ、変わったかな」といったレベルの印象だったように思う。ところが今回の改良モデルは”遂に”というか”やっと”というべきか、期待に違わぬ仕上がりぶりになってきたことが実感できたのである。
 


とくに乗り心地は、歴然とよくなった。資料にはランフラットタイヤの縦バネ剛性、スタビライザーのばね定数、リバウンドストッパーの先端剛性の最適化や、フロントサスペンションの高強度アルミ鍛造アームへの変更やタイヤの質量低減によりばね下質量を約35kg軽量化……など、改良点が列記されている。が、その説明に目を通すまでもなく、乗って、(常套句だが)タイヤが1回転もすれば、しなやかでバランスのとれた足回りに一変したことがわかった。ほかにもダンパー、エンジンマウントの減衰特性の改良や、新開発という低反発ウレタンパッドの採用やシート表皮の縫い目をより深い位置に変更するなどもしているという。おそらくそれらも奏功して、フロアやシートから身体に感じられた微震動も路面を問わずほぼ撲滅されている。後席に座ってみると、ドライバーのステアリングさばきによってはヨーの発生が気になる瞬間がなくはないが、乗り心地に関しては「これでやっと、ありのままのレポートが書ける」と胸を撫でおろした次第だ。
 
もちろんパワートレインも、ユニット自体に微に入り細に入り改良が行われたことで、全体として機械的なストレスが一層小さくなり、より適切な特性が発揮されるようになった。なので定常走行でも無用に神経を遣うことなく走らせていられる車になった。ちなみに最新のラインアップでは、3444cc(ボア×ストローク=85.5×100.0mm)のV6ツインターボ(422ps/61.2kgf・m)と、3456cc(同=94.0×83.0mm)のV6(299ps/36.3kgf・m)+交流同期型モーター(180ps/30.6kgf・m)の2つのパワートレインが用意され、それぞれ後輪駆動とAWDが選べるようになっている。タイヤサイズは仕様により19インチまたは20インチ(F SPORTは前後異なサイズ)ですべてランフラットタイヤとなる。試乗会場で複数仕様を十分に試してはいないため断定はできないが、最新のLSなら、どの仕様、スペックを選んで乗っても、まず期待を下回ることはないと思う。
 
「銀影ラスター」と呼ぶ陰影が印象的なボディ色の新設定始め、灯体など外観ディテールもリフレッシュされた。装備、アメニティの充実度は今さらいうまでもないが、後席に座っていると電動サンシェードがドアガラスだけでなく小さなリヤクォーターウインドにまで備わって作動し、リヤウインドは左右の両端がピラー内に入れられ(世界初という!)スッキリした見栄えであったりと、細かな気配りはレクサスならではのものだ。カタログを見ると、メーカーオプションながら内装色、加飾などの選択肢も幅広く用意されている。LSの世界観、ここに極まれり、といったところか。 


LS500h 2WD(FR) ”F SPORT” 13,510,000円(税込)

文:島崎七生人





レクサスIS 松田秀士の見解
レクサスISの改良モデル。まずはエクステリア。ヘッドライトの定位置薄型化により精悍な顔つきになったことと、ボンネットのボリューム感がグラマラスに感じる。なんだかパワーありそう!という印象だ。リヤコンビネーションランプの一文字化も低重心と同時に気品を感じさせる。リヤ周りのプレス造形はいつも感心させられるエリア。筆者はアストンマーティンのニューポートパグネル工場で最後の手作りで製作されるバンキッシュを見学したことがあるが、職人がハンマーを叩いてトランクフードを仕上げる、あの時の造形を思い起こさせるほどに魅力的なプレスだ。他に細かいところでは、ドアサイドのベルトモール付近段差のフラッシュサーフェス化によって車体サイドのエア流をスムーズにしている。結果としてこれがリヤの安定性を増しているらしい。今回の試乗会ではIS300、IS350、IS300hに試乗。300と350はFスポーツ(350はFスポーツのみの設定になった)。IS350 Fスポーツから試乗する。



Fスポーツのインテリアには専用のスポーツシートを含めてフレアレッドと呼ばれる真っ赤な配色。ヤル気!が充満するが、座ると包み込まれるようなフィット感が心地よい。スポーツバケット系のシートだが、ホールド性だけでなくコンフォート性もしっかり兼ね備えている。試乗会場の富士スピードウェイ名にあるレクサスカレッジを後にして、そのまま明神峠と呼ばれるワインディングに向かう。急登坂の非常にトリッキーな峠道。往復するので登りと下りの両方のハンドリングを試すことができるのだ。

登り始めは民家もあるので非常に低速での走行。既におやっ!と感じていたことだが、ロードノイズを含めて静粛性がとても高い。乗り込んでドアを閉めた時から密閉性の高さからか、耳障りないわゆるノイズを感じない。さらに路面からの突き上げ感がなく、とても乗り心地が良い。スポーツシートだからそれなりにしっかりしているので、サスペンションやボディのマッチングが良いのだろう。で、踏み込んでみた。何を?当然アクセルです。

V6 3.5リッター 自然吸気エンジンは力強く急坂でもスムーズにそして力強い。速度が上がっても足のこなしはとても優秀で強めのアンギュレーションでもボディが煽られることもない。フラットライドなのだ。ターンに切り込む時の応答もとても素直。フロントの重さを気にすることなく、応答から、切り足しの反応も分かりやすくスムーズだ。サスペンションのレート(スプリング&スタビライザー)が硬すぎないからブレーキングや切り初めにスムーズなロールがあり、フロントセクションの剛性アップによる過敏さを帳消しにしている。硬ければ瞬間移動的に向きを変えるだろうが、それでは切り足しの反応が落ちてしまう。ちょうど良いレベルだ。初期ストロークのホイールトラベルがとてもスムーズで、19インチでタイヤサイズもアップされているそのタイヤのグリップ面の変形をコントロールするダンパー減衰も非常にマッチしている。バンプストッピングラバーの材質を変更したとのことだが、これもバンプタッチを感じさせずロールを抑えている。



新・下山のテストコースでじっくり煮詰めたと聞くが、早くもテストコースの恩恵がISに現れている、と見た。頂上付近でUターンして下りだ。以前のIS350ではちょっと苦手。粗が露出していた。下りながらのハードブレーキングからのS字の切り返し。嫌がる。右⇒左コーナーへの体勢が出来上がるのに遅れがあった。ドライバーがステアリング操作で合わせてやらなくてはならなかった。それが、はっきり変わっていた。俊敏である。無理やりステアリングアクションを起こしてもついてくる。なんといってもブレーキが良い。下りで思いっきりフロントにストレスがかかっているから、ボディー剛性のマネージメントが大きく進化したのだろう。そこにアドヴィックスのブレーキのコントロール性の良さが+された。そのブレーキ、ペダルタッチから踏み込みそしてリリース、このコントロール性が良く、無効ストロークも最小で剛性もある。ただ下りでは最後にフェード気味になった。当たり前のこと、ここは激しいから。その時に気になったのは摩擦音が大きくなったこと。

何がこのような進化をもたらしたのか?まずホイールの締結方式が変更された。これまではよくあるタイプで、ハブ側からスタットボルトが出ていてそこにホイールをひっくり返すようにセットしハブナットを回して固定締め付けていた。これをハブ側にねじ溝が切ってありそこにハブボルトを差し込んでホイールごと締結する方式に変更したのだ。この方式だとハブボルトだけですみナットがないぶん軽量化になる。しかもハブ剛性がアップする。締結部は1輪あたり5本あるのだからバカにならない。バネ下で回転部分だからちょっとした軽量化はジャイロ効果の低減につながる。しかもボルトはナットよりも細いので、ホイールのボルト穴径を小さくできる。これによってホイールのスポーク部が長くなり、デザイン性も上がったのだ。もちろんこれだけではない。

フロントサイドメンバー周りにスポット打点55点の追加や構造の見直し、構造用接着剤、レーザ−スクリューウェルディングなどボディ全体を見直したことも大きい。すでに文字量を大幅に超過していて、IS300FスポやIS300hに触れられないこと、お許しを。IS300Fスポーツはハンドリング面において350と何も変わらない。フロントが軽くなっていることでよりシャープ感があるが、ボクのお気に入りは350だった。言い過ぎではない、ISがベンチマークとしてきたBMW3シリーズMスポーツを超えている、と感じたのだ。


IS350 ”F SPORT” 2WD (FR)  6,500,000円(税込)
IS300h ”F SPORT” 2WD (FR) 5,800,000円(税込)

文:松田秀士





LC500 コンバーチブル
日本車としては抜群にスタイリッシュなレクサスLC。その屋根開きバージョンなので、カッコ悪いはずがない。電動油圧式ホロの開閉時間が約15秒。50km/hまでなら走行中でも操作が可能となっている。しかもパワートレインは5リッターV8エンジンに10段ATの組み合わせのみだ。自然吸気の大排気量エンジンの豪快さ味わうには最高の一台である。

LC500コンバーチブル 2WD(FR) 15,000,000円(税込)


ES300h 
エクステリアデザインは、一見では長兄のLCと見紛うほど迫力のあるもの。実際に5m近い全長のおかげで伸びやかなスタイリングがより強調されている。LCは法人向けであり普段遣いにLCが必要はないが、一方でベースとなったトヨタカムリでは物足りないという御仁にとっては最適のチョイスといえるかもしれない。特にスポーツグレードのF SPORTは、やや硬めにセッティングでドライバーをその気にさせてくれるから頼もしい。左右ピラーにモニターが装着されるデジタルアウターミラーは慣れが必要だ。本来サイドミラーが在る位置にカメラが存在するので、どうしてもモニターの向こうにそれが見えてやや混乱する。

ES300h”Fスポーツ” 2WD(FF)  6,290,000円(税込)


LX570
ベースはランドクルーザー200であることは間違いないが、ただエンブレムをレクサスに替えただけでは決してない。その最も大きなちがいはエンジンの排気量と変速機である。4.6リッター V8+6段ATの組み合わせのランドクルーザーに対し、LX570は5.7リッターに8段AT仕様となっている。インテリアのデザインや装備の数々も間違いなくレクサスそのもの。大きなボディはコーナーで大げさにロールをするし、エンジンの吹け上がり方もひと世代前のビッグV8そのものであるが、こんなにどっしりと落ち着いたSUVは、もう出てこないかもしれない。

LX570 AWD 3列シート(8人乗り) 11,356,481円(税込)