シングルシーターの世界でスキルを磨いてきた3名の女性ドライバーが、その活躍の舞台をヨーロッパから世界へと移す。"才能のある女性の育成を目指す"リシャール・ミル レーシングチームが挑む世界最高レベルでのチャレンジについて、チームメンバーのひとりであるタチアナ・カルデロンにインタビューすることができた。

百年に一度のパンデミックといわれるコロナ禍、世の中の活動が止まってしまったように見えても確実に時とき間は進み、しかもさまざまな変化への対応が求められる状況下で、誰もがこのしたたかなウイルスと対峙し、何かしらと戦い続けているのではないか。そんなときにアスリートやマイ・ヒーローの活躍が力やモチベーションとなることもある、と改めて思えるニュースが海を越えて飛び込んできた。スイスのエクストリームウォッチブランドであるリシャール・ミルが昨年始動したレーシングチームが、2021年に予定通り新たなステージに挑むという。
 
リシャール・ミルはこれまでも様々なジャンルのエリート・アスリートやチームとのパートナーシップ、イベントサポートなどを行っているが、なかでもリシャール・ミル レーシングチームの活動は特別だ。創設者の名前=同ブランド名でもあるリシャール・ミルを冠したレーシングチームを2020年に初めて結成。才能ある女性たちを育成し、より飛躍させることを目的とした、100%女性ドライバーによる耐久レースへの参戦だ。

モータースポーツはマシンを介し男女が対等に戦える競技として、FIAも女性ドライバーの育成をサポート。そのFIA で議長を務めるほどモータースポーツを愛するジェントルマンとして知られるリシャール・ミル氏は女性たちの可能性と才能を証明する機会をつくったことになる。ドライバーはアルファロメオF1チームの開発ドライバーであり、昨年から日本のスーパーフォーミュラに女性初となる参戦を果たした、今、最もF1に近い女性ドライバーとされるタチアナ・カルデロン、そして2000年生まれのミレニアム世代、ソフィア・フローシュ、さらに二人と同じくカートやフォーミュラで経験を積んできたベイスク・フィッセールの3名。
 
同チームの活動初年度となった2020年はCOVID-19の影響で思うような準備、活動が行えなかったのはモータースポーツ業界だけではない。が、そんななかでリシャール・ミルレーシングチームはヨーロッパを中心に転戦するELMS(ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ)に計画を変更することなく挑み、シリーズでトップ10入りを果たした。これに加え、スタート前から話題と注目を集めたのが世界三大レースでも知られるル・マン24 時間レースへの参戦だった。プライベートチームだけが参加できるLMP2クラスで9位、総合13位で初参戦、完走を果たした。これはお世辞抜きで素晴らしい結果を残したと言ってよいはずだ。
 
リシャール・ミル レーシングチームは2021年、舞台をヨーロッパからFIA WEC(世界耐久選手権)という世界のステージに移す。9月には日本(富士スピードウェイ)でもレースが開催されることになっている。

「今年は新たな挑戦の年になりそうですが、すでにドライバー同士、またエンジニアリング面においても皆のナレッジは共有できているし、成果も実感しています。が、まだまだマシンの研究も必要です。FIA WECでは世界最高レベルのドライバーたちを相手に戦うことになります。これは間違いなく私たちのキャリアにおいて画期的な出来事となるでしょう。しかし昨年、あのような状況下でも1年間で得られた実績が自信に繋がっているのは間違いなく、チーム一丸となって新たなステップを踏み出すことが今はとても待ち遠しく、楽しみです。トップ5を目指したい」とタチアナ・カルデロン。



彼女は今年も日本のフォーミュラの最高峰、F1に最も近い全日本スーパーフォーミュラ選手権への参戦が決まっている。つまり日本のサーキット経験は今年2年目ということで彼女がリーダー格ともいえるだろうが、実はソフィア・フローシュも2018年に一度、富士スピードウエイで開催されたレースへの参戦経験がある。日本でのサーキット経験があると聞けば、チームの活躍をますます期待したくなるというものではないか。
 
FIA WEC の開幕は5月。そして8月にリスケジュールされた第4戦のル・マン24時間耐久レースを経て、9月24日〜26日に第5戦富士6時間耐久レースが富士スピードウエイで開催される予定だ。
 
常に先進的な技術やイノベーションの追求の歩みを、時とき間を止めることなく前進し続ける「リシャール・ミル」が挑む世界最高峰の耐久レース。リシャール・ミル レーシングチームの活躍に注目し、日本で開催される貴重な一戦をこの秋、リアル観戦してみてはいかがだろう。


文:飯田裕子 写真:リシャール・ミル Words:Yuko IIDA Images:Richard Mille