「Q by Aston Martin」は、オーナーの要望に応える形で特別な車両を生み出す、パーソナライゼーション・サービスだ。ときにはボディパネルの素材や形状、車体構造の変更にまで至る大掛かりなカスタマイズにも対応するQの全貌をお伝えしよう。 

英国紳士が自分好みのスーツを仕立てるように、オーダーメイドで車を仕立てる(カスタマイズする)ことができるサービスが、アストンマーティンにもある。それが、2012年から始まったパーソナライゼーション・サービス「Q by Aston Martin」である。いうまでもなく、"Q"とは007ジェームズ・ボンドのために、新しいウェポンを作る、あのMI6のQ課長に因んでいるのだろうか。Qなら、なんでも叶えてくれそうではないか。
 
Qの仕事は、カスタマーの好みや想いを具現化した一台を創り上げることである。そのために、Qのデザイナーは顧客と膝を突き合わせて話し合い、想像の世界にある抽象的なイメージを、現実世界のプロダクトへと落とし込んでゆく。
 
ボディカラーや、シートやステアリングといった内装素材の色味や質感、ステッチの色やパターンなど、ごく細かなディテールに至るまで、自由にカスタマイズしていく。それらは初めから用意された素材や色の中から組み合わせることもできるが、特注の色や素材を使うことで、よりオリジナリティの高い車に仕立て上げることも可能だ。また、素材や色を選ぶだけではなく、シートやボディパネル、インテリアトリム等に特別な装飾を施すこともできる。「Q by Aston Martin」がカスタマーにもたらす選択の幅は無限大である。


 
カスタマーの想いなしには、Qの仕事は始まらない。魅力的なデザインを生み出すためには、ユニークなインスピレーションを種に、イメージを膨らませていく必要があるのだ。
 
デザインの出発点は、必ずしも自動車に関係したものでなくても良い。Qは過去にも「航空機」や「活火山」、「南カリフォルニアのライフスタイル」といったキーワードをテーマに、個性豊かな車を仕立て上げてきた。
 
また、「Q by Aston Martin」の仕事は自動車のオーダーメイドだけにとどまらない。Qはニーズと嗜好に対応した様々なアクセサリーのデザインと製作も行っているのだ。ピクニックセットや各種ラゲッジなど、専用のアイテムを愛車に備えることで、アストンマーティンのあるライフスタイルをより豊かなものにすることができる。
 
アストンマーティンをカンバスに見立て、オーナーのパーソナリティやライフスタイルを投影していくことで、より特別な思い入れのある一台となっていくのである。ショーカーの製作も手がける「Q by Aston Martin」は、世界各国で開催される主要なモーターショーを飾るショーカーの製作も手がけている。



その目的は、アストンマーティンのカスタマイズに大きな可能性があることをアピールすることだ。2017年3月のジュネーヴ・ショーにも、DB11をベースとした特別仕様車「DB11 Q by Aston Martin」が展示された。ボディカラーは特別色となるZaffreブルー。フロントスポイラー、サイドシル、リアデュフューザー、サイド・ストレーキ、ボンネット・ストレーキ、ドアミラーなど、至る所に光沢サテン・ツイル仕上げのフォージド・カーボンファイバーを採用。



インテリアは、コクピットの上下をオブシディアン・ブラック・セミアニライン・レザーで覆い、ヘッドレストにエンボス加工の「Q by Aston Martin」ロゴをあしらっている。


 
このジュネーヴ・ショーでは、もうひとつ大きなニュースがあった。それはプロダクションモデルをベースとしたカスタマイズの枠を超え、ゼロから車を生み出すことも可能な、より高度なパーソナライゼーション・プログラム「Q by Aston Martin–Commission」の登場である。Qは過去にも、2013年のアストンマーティン100周年に公開されたCC-100 スピードスター・コンセプトや、ヴァンテージGT12をベースとしたワンオフのオープントップ仕様車、ヴァンテージGT12ロードスターなどを手がけてきたが、「Q by Aston Martin – Commission」のスタートにより、今後はその体制がより強固なものとなるはずだ。


 
遠い昔、コーチビルダーが手がけたワンオフのスペシャルカーが、貴族のあいだで流行したことがある。プロダクションモデルでは実現できない、豪猪でユニークな仕様の車が多く、現在もクラシックカーオークションにおいてその芸術性が高く評価されている。

「Q by Aston Martin – Commission」のような新しい取り組みにより、今後、世界に一台しかない芸術品のようなアストンマーティンが生まれてくるだろう。