犯罪被害者や遺族の経済的な被害回復の状況を知るため、加害者側から支払われた賠償金の実態を初めて調査した県弁護士会は9日、結果を公表した。殺人など重大な犯罪ほど十分な支払いを受けておらず、加害者の資力によって賠償額に差が生じている問題が浮かび上がった。

 県弁護士会は「犯罪被害者の置かれている現状が明らかになった」と強調。公的支援制度の必要性を訴えている。
 調査は殺人、傷害など生命・身体に重大な結果をもたらす犯罪や、強制性交(強姦(ごうかん))などの性犯罪が対象。5月から6月にかけ、同会所属の弁護士160人にアンケート用紙を配り、被害者側の代理人を務めた事件に関し、56件の回答があった。
 賠償の状況について、被害者側の請求額に対して加害者側が全額を支払ったケースは、全体の25%。一方、支払いがゼロも25%に上った。支払いはあったものの半額に満たなかったケースは34%を占めた。
 重大犯罪の殺人と傷害致死に限ると、さらに厳しい。回答のあった9件のうち、賠償金の支払いがあったのは4件。このうち半額以上だったのは、わずか1件だった。
 同会は「金銭的な被害回復ができているかどうかは二極化している。賠償金の支払いは8割が500万円未満で、損害額がそれを上回る場合は被害の回復が困難。請求額の大きい重大犯罪ほど進んでいない」と指摘する。
 請求額と支払額に差がある理由は「相手に資力がない」が最も多く、44%。次いで「早期解決を優先した」が30%だった。
 結果をまとめた同会犯罪被害者支援センターの森脇宏弁護士は「同じような犯罪でも支払いの有無が生じている。誰もが犯罪の被害に遭う可能性があり、賠償を受けられないというリスクは、社会全体で共有するのが望ましいのではないか」と話した。
 調査は犯罪被害者救済の県条例の制定に向けて活動している大分被害者支援センター(大分市)の要請で実施した。警察庁や識者によると、同種の実態調査は全国でも珍しいという。