四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の北側の海域には「中央構造線断層帯」が走る。紀伊半島から伊予灘まで東西約360キロに及ぶ国内最大級の活断層帯だが、政府の地震調査研究推進本部は「断層はさらに西(大分県側)に延びる」と指摘している。大分など4県で続く同原発の運転差し止め裁判では、四国電の地震想定が妥当かどうかが主要な争点になっている。
 住民側は原発が南海トラフ地震の震源域上に位置することも含め、「特別な地震リスクがある」と主張。四国電の計算式は信頼性がなく、基準地震動(耐震設計の基準となる地震の揺れ)は過小だと訴える。
 対する四国電側は、原発周辺の地質調査で地域特性を十分把握しており「不確かさも考慮し適切に基準地震動を定めている」と全面的に反論する。

 活断層が注目され始めたのは1995年の阪神大震災だ。以降、強震動を観測する機器の設置が進んだ。2011年の東日本大震災、16年の熊本・大分地震など、大地震のたびに「想定外」が繰り返されてきた。
 伊方原発は中央構造線から6〜8キロの距離にある。かつて伊予灘の中央構造線が活断層だと指摘したことで知られる高知大学の岡村真客員教授(地震地質学)は、断層の傾斜の状態からより近くで地震が起きる可能性があると指摘する。
 「四国電は厳しい条件を重ね合わせたケースを想定しておらず、自然に対して謙虚ではない」。3月に松山市内であった講演会では「現在の基準地震動は考えられる最大の地震ではない。科学で将来の地震を正しく想定することは不可能だ」と切り捨てた。

 「地震」を司法はどう判断したか。
 3月の広島地裁。最長480キロの断層が動くことなども想定した四国電の耐震設計基準に「一応の合理性」を認めた一方、「なお慎重な検討が必要」と言及。学者の証人尋問は「訴訟ですべきで、仮処分手続きになじまない」と退けた。
 7月の松山地裁。自然災害について「発生し得る最大限度」の想定は必要なく、「合理的に予測される規模」に備えれば足りるとの見解を示した。
 今月4日、松山地裁決定を不服として高松高裁に即時抗告した住民側は「地震学者が世界最大、日本最大の地震に備えるべきだと言っているのに、非科学的だ」(薦田(こもだ)伸夫弁護団長)と批判の声を上げた。

<メモ>
 伊方原発3号機の運転差し止めを求めた仮処分申請が広島、松山両地裁で却下されたことを受けて、各住民側は即時抗告し、舞台はそれぞれの高裁に移った。今後、広島高裁は12月に決定を出す見込み。大分地裁も10月に審尋を終え、年度内に判断を示す可能性がある。