1976年モントリオール五輪(カナダ)の柔道で銀メダルを獲得した日田市天瀬町の蔵本孝二さん(65)が、2020年の東京パラリンピック日本代表の男子強化コーチに就任した。4月に発足した新チームの指導者ではただ一人の五輪メダリスト。「3年後の大舞台を夢見る選手のために、できる限りの力を貸したい」。“お家芸”の技、日の丸を背負う重みを伝えていく。

 日田市庄手出身。三隈中学、南筑高校(福岡県久留米市)から拓殖大学(東京)に進み、史上最強の柔道家といわれた木村政彦監督(1917〜93年)の薫陶を受けた。
 神奈川県警に就職後、全日本選抜体重別選手権3連覇などの実績を重ね、24歳でモントリオール五輪に出場、軽中量級(70キロ以下)の表彰台に立った。2006年、日田市に帰郷した。
 パラリンピックの柔道は視覚障害者で競う。寝技を好む選手が多い中、近年は抑え込みの時間を短くするルール改正があった。強化コーチとして立ち技に加えて、試合の鍵を握る寝技の技術指導も期待される。
 日本代表男子の熊谷修監督(46)=東京都=は学生時代、蔵本さんの指導を受けていた。「教え方が理論的で丁寧なので視覚障害者に向いている。申し分のない実績があり、実質的にはチームの師範」と喜ぶ。
 強化指定選手は約20人。蔵本さんは定期的に強化合宿に参加している。「思い切って足をはね上げよう」「手首の力を抜いて」などと声を掛け、寝技では相手をコントロールする体の使い方を実演。選手たちに手で触らせて動きをイメージさせている。
 「モントリオールではすさまじい緊張感と闘った」と語る銀メダリストは、大舞台の重圧を身をもって知る。「東京パラリンピックは注目度が違う。世界で戦う心構えや体力づくりなど、僕の経験を全てさらけ出して選手に伝えたい」