「排水ポンプとシャッターは初の運用だったが、操作はうまくいった。堤防の安心感も大きかった」
 福岡・大分豪雨から1カ月となった今月5日の日暮れ前。中津市本耶馬渓町青地区の村上昭二さん(63)と御座(おざ)和司さん(59)は、穏やかに流れる山国川を見詰めた。
 
 雷を伴った豪雨が山国川を激しく打ち続けた7月5日夕。村上さんと御座さんは堤防内側にたまった水を山国川に排出するポンプのそばに陣取った。
 雨がっぱにヘッドライトを着けた2人は、地区内の青の洞門から住宅地への浸水を防ぐため、鉄製の可動式シャッターを閉鎖。翌日未明までポンプに張り付き、水のたまり具合や排水口が詰まっていないか確認作業に没頭した。
 「山からの水が減ってきた時はほっとした」

 青地区は周囲より土地が低く、台風や豪雨の度に浸水を繰り返してきた。
 5年前の県豪雨では約50戸のうち43戸が浸水。現地では、10年以上にわたって堤防整備やかさ上げなど国による大規模な工事が進んだ。完成したのは2015年3月。シャッターやポンプもこの時、導入された。操作は地区でも若手の村上さんら2人が担っている。
 今回、耶馬渓地域は7月6日午前11時までの24時間雨量が290・5ミリに達した。記録的な豪雨ながら、同地区の家屋に浸水はなかった。
 災害弱者をどうするか。あらかじめ避難手順を決めており、介助が必要な高齢者も混乱なく避難所に姿を見せた。過去の水害を教訓に、地区全体で危機意識を共有・徹底していたため、住民は声を掛け合いながらみんなで難を逃れることができた。
 一方で、避難所には他地区からの住民も集まり、食事の準備に手間取った。改善を要する新たな課題は次々と見えてきた。
 都甲哲男区長(74)は気を引き締める。「堤防があっても過信してはならず、避難をする重要性は変わらない。過疎、高齢化で住民が減る中、いざというときにどうするか。経験を踏まえた継承が大事になる」
 次への備えはもう始まっている。 
 =終わり=