日本代表争い”の最終メンバーを予想【FIBA バスケットボールワールドカップ 2023】
日本代表候補の(左から)須田侑太郎、渡邉飛勇、河村勇輝

8月25日〜9月10日に沖縄、フィリピン・マニラ、インドネシア・ジャカルタのアジア3都市で開かれるFIBA男子バスケットボールワールドカップ2023。出場32カ国が1次ラウンドの8グループ(A〜H)に分けられ、沖縄アリーナで熱戦を繰り広げるグループE(日本、オーストラリア、ドイツ、フィンランド)、グループF(スロベニア、ベネズエラ、ジョージア、カーボベルデ共和国)の合わせて8カ国が決定した。

徐々に機運が高まる中、FIBA バスケットボールワールドカップ 2023(※以下 W杯)本番に向けて大きな関心事がある。日本代表“アカツキジャパン”のメンバーが誰になるか、である。

代表チームを率いるトム・ホーバスHCはW杯アジア地区予選で行った12試合で、合わせて36人もの選手を招集。自らが求めるスピーディーかつスリーポイントを多用するスタイルに適した有能な若手選手を発掘したほか、競争環境をつくって中堅、ベテランの奮起も促した。

この熾烈な代表争いを勝ち抜き、日の丸を背負って沖縄アリーナのコートに立つ登録選手12人は誰なのか。そして、琉球ゴールデンキングスからの招集はあるのか。日々、仕事と趣味でBリーグ、NBAを追い掛ける筆者の独断と偏見で予想してみたい。

NBA戦士の八村、渡邊ら海外組4人は力が突出

日本代表争い”の最終メンバーを予想【FIBA バスケットボールワールドカップ 2023】
ゴール下に切り込み、ファウルをもらいながらシュートを放つ馬場雄大 = 2022年8月、沖縄アリーナ©Basketball News 2for1

まず、NBAの名門ロサンゼルス・レイカーズで主力の一人に定着している八村塁と、正確なスリーポイントや高いディフェンス力で今シーズン目覚ましい活躍を見せた渡邊雄太(ブルックリン・ネッツ)がチームの中心になる。2人とも身長203cmとサイズがありながらシュートレンジが広く、NBAに定着できるだけの体の強さ、高い機動力を備える万能プレーヤーだ。特に八村にはエースの役割が求められる。

ただ、渡邊は定期的に代表でプレーし、W杯の組み合わせ決定後に日本協会を通じて「自分がNBAでどれだけ成長したのかを見せる良い機会になります。応援してくれてる人たちと一体になって、頑張っていきたいなと思っています」とコメントするなど出場がほぼ確定的な一方で、八村は2021年の東京五輪以降、代表から足が遠のいている。22年のアジアカップも不参加だった。強豪国が揃う“死のグループ”に入った日本としては是が非でも招集したい選手のため、動向が注目される。

その他の海外組では、将来のNBA選手らがしのぎを削る米大学バスケットボールのNCAA(全米大学体育協会)ディビジョン1のネブラスカ大学に所属する富永啓生、今シーズンはNBAの下部リーグであるGリーグのテキサス・レジェンズでプレーした馬場雄大も日本選手の中では突出した力がある。

富永はリングからの距離の長さ関係なく、どこからでもクイックモーションでスリーを決めることができ、一度入り出すと止まらない爆発力を備える。際立った得点能力を評し、NBAのスーパースターであるステフィン・カリー(ゴールデンステート・ウォリアーズ)になぞらえて「和製カリー」の異名を持つ。

馬場は優れた身体能力が武器。機敏な動きでスティールを決め、速攻から豪快なダンクを決めるプレーが代名詞になっており、富永と同じくチームに勢いをもたらすことができるプレーヤーだ。近年は課題だったスリーの成功率が向上してきており、ホーバスHCのバスケに対するフィット感が増してきている。

PG「Wユウキ」が当確か 帰化枠は万能なホーキンソン

日本代表争い”の最終メンバーを予想【FIBA バスケットボールワールドカップ 2023】
スリーポイントを放つ富樫勇樹=2022年8月、沖縄アリーナ©Basketball News 2for1

次に“当確”間違い無しなのが、ポイントガード(PG)として司令塔を担う富樫勇樹(千葉ジェッツ)と河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)の「Wユウキ」だ。富樫は身長167cm、河村は172cmと国際大会では極めて小柄だが、2人のハンドリング能力とスピード、得点能力の高さは日本人PGの中では群を抜いている。

長らく日本代表を引っ張ってきた富樫は、今シーズンのBリーグレギュラーシーズンで歴代最高勝率となる53勝7敗(8割8分3厘)を記録した千葉ジェッツの主将の一人として活躍を続ける。ディフェンス力に難はあるが、スクリーンを使って自らシュートやアシストを狙う「ピック&ロール」の使い方に長け、勝負所で得点を決める「クラッチシューター」としての能力が極めて高い。

河村は、現在“日本人ナンバーワンPG”と言っても過言ではない。前線からプレッシャーを掛ける1対1のディフェンスが武器で、国際大会でも得意のスティールから流れを引き寄せることができる数少ないプレーヤーだ。鋭いドライブからのアシストはもともと得意だったが、ホーバスHCに積極的なシュートを求められ、今シーズンは得点能力も開花。Bリーグレギュラーシーズンの各平均スタッツは19.5点(リーグ5位)、アシスト8.5本(同1位)、スティール1.5本(同6位)と各項目でトップ10に食い込んだ。

一人のみ登録が可能な「帰化枠」はジョシュ・ホーキンソン(信州ブレイブウォリアーズ)が日本のバスケにフィットしそう。代表候補の中で最高身長となる208cmのサイズがありながら、柔らかいタッチでシュートレンジが広く、機動力やアシストでまわりを生かす器用さも備える。2月に日本国籍を取得した直後に群馬県であったWindow6の2試合に招集され、2試合続けて得点、リバウンド数が二桁の「ダブルダブル」を記録し、アシストやブロックでも存在感を示した。

「リムプロテクター」渡邉飛勇がサイズを克服

日本代表争い”の最終メンバーを予想【FIBA バスケットボールワールドカップ 2023】
ゴール下で躍動する渡邉飛勇=2023年4月、沖縄アリーナ©Basketball News 2for1

琉球ゴールデンキングスの渡邉飛勇も有力な選手の一人だ。ホーバスHCはポジションに関係なく全選手にスリーが打てるシュートレンジの広さを求めているが、渡邉にそれはない。それでも選出の可能性が高いと思われる理由は、渡邉が持つ二つの能力にある。

一つ目は“高さ”だ。渡邉はBリーグの日本人選手の中で最も高い207cmの身長があり、もともとバレーボール選手でもあったため、素早く、高く飛ぶことができる。リバウンドはもちろんのこと、日本人ビッグマンとしては稀なブロックを得意とする「リムプロテクター」としての能力は、国際大会で長らく日本の課題となってきたサイズ不足を克服する可能性を秘める。

もう一つは“走る力”である。凡庸な表現ではあるが、機動力の低い選手も多いインサイドプレーヤーにとっては大きな特殊能力の一つになり得る。渡邉はディフェンスでリバウンドやブロックに全力で飛んだ後、いち早く反対側のゴールに向かって走り、相手ビッグマンを置き去りにして簡単なレイアップを決める場面も多い。速い展開を好むホーバスジャパンには適したセンターだろう。

W杯の組み合わせ抽選会が行われた翌日の4月30日、キングスのホーム戦後に渡邉にW杯への意気込みを聞くと、こんな言葉が返ってきた。

「代表合宿に選ばれるかどうかがスタートになるので、まずはキングスでやるべきことを優先的に考え、それに集中してきたいです」

2021年の東京五輪で日本代表に選出されたが、キングス入団直後に大怪我を負い、今年2月にやっとBリーグデビューを果たしたばかりの渡邉。ホーバスジャパンでのプレー経験も少ないため、本人が言うように、目の前にあるBリーグの試合で好パフォーマンスを発揮し続けることが、代表選出に向けての一番の近道になるのは間違いない。

その他の選手に求められる「3&D」

日本代表争い”の最終メンバーを予想【FIBA バスケットボールワールドカップ 2023】
日本代表を率いるトム・ホーバスHC=2022年8月、沖縄アリーナ©Basketball News 2for1

これまでに紹介した8人の中では八村、渡邊雄太、ホーキンソン、河村、富樫らが長い時間出場することが予想されるため、残り4人には短いプレータイムでも存在感を示すことが求められる。そのために必要なのは、チームに勢いを与える高確率のスリーポイントと国際大会でも通用するディフェンス力を備えた、いわゆる「3&D」の能力である。

「3&D」の能力を念頭に、あとの4人は元キングスの須田侑太郎(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)、張本天傑(同)、井上宗一郎(サンロッカーズ渋谷)、テーブス海(滋賀レイクス)を予想する。テーブスは3&Dのイメージが強い訳ではないが、国際大会ではボールを前線に運ぶこと一つ取っても高いハンドリング能力が求められるため、富樫、河村に続くPGとしての役割が期待される。

その他、代表で才能を開花させた若手の吉井裕鷹(アルバルク東京)や西田優大(シーホース三河)、長らく代表を牽引してきた比江島慎(宇都宮ブレックス)、Bリーグの日本人選手の中で際立った存在感を放つ原修太(千葉ジェッツ)、安藤誓哉(島根スサノオマジック)、藤井祐眞(川崎ブレイブサンダース)なども十分に選出の可能性がある。

また、渡邉飛勇の他にも、これまでキングスから岸本隆一、コー・フリッピン、今村佳太もホーバスジャパンに招集されており、再び声が掛かることにも期待したい。

5月いっぱいまで続くBリーグのチャンピオンシップ終了後、6月からW杯本番に向けて本格的な合宿をスタートさせ、国際強化試合もこなしていく代表チーム。大詰めに入る最終メンバーの選考過程を見守りながら、皆さんも“JAPAN”を背負う独自の12人を予想してみてはいかがだろうか。