新型コロナウイルスの影響と、夏の大雨による川の増水のため、例年ではお盆の最終日(8月16日)に行われる「盛岡舟っこ流し」が、今年は8月20日(土)に行われました。

舟っこ流しとは?

諸説ありますが、およそ300年前に盛岡藩4代藩主、南部行信の七女である麻久子姫が、川での溺死者などの霊を弔うための大法事を行ったのが、舟っこ流しの始まりとされています。そして1815年、現在舟っこ流しが行われている北上川のあたりまで遊びに来ていた、当時遊郭として繁盛していた津志田の遊女が、大雨で川が氾濫して帰れなくなり、帰ろうとして乗った舟が転覆して命を落としました。川で亡くなった霊を慰めるため、舟に位牌や供物を乗せて流すようになり、以後盛んに行われるようになりました。

今では、祖先の霊を送り、無病息災を祈る行事となっています。また、盛岡市指定無形民俗文化財にも指定されています。

舟っこ流し先祖の霊を送る舟

真心込めて造られる精霊舟

舟っこ流しで使われる舟は、昔から決まった山から杉や笹竹を調達し造られます。以前は町内会の人たちで作っていましたが、最近では大工さんに依頼することも多くなりました。
よく燃えるように稲わらや花火が仕込まれた舟は、数万円から数十万円の花火代がかかり、その費用は町内会や企業からの寄付、戒名料で賄われるそうです。

舟っこ流し祖先を思い造られる

台風の影響で延期…大雨の中の準備された舟っこ流し

2022年8月20日、台風6号の影響なのか15時ごろから開催が心配されるほどの大雨が降りつけました。「盛岡舟っこ流し協賛会」の役員の皆様は、雨の中、川岸に設置されたテントの中で雨雲の動きを確認していました。

舟っこ流し夕方には晴れるから大丈夫と語る「盛岡舟っこ流し協賛会」佐藤 修 会長

「盛岡舟っこ流し協賛会」佐藤 修 会長に状況をお伺いすると、「3年ぶりの開催とあって、わくわくしています。今日の雨の動きは、会員で確認しています。大丈夫です。やりますよ。昨日は川の上流にあるダムに行き、舟が川に入る時間を考えて水量を調節してもらうようお願いしてきました。今の雨の量も考えてもらっているから大丈夫だよ」と、力強いお言葉をいただきました。

舟っこ流し雨の中で始まる準備

舟を川に流す前に、送り盆の儀式である合同法要が行われます。各地区の新盆を迎える方々、東日本大震災で亡くなった方々のご冥福をお祈りしました。

舟っこ流し新盆を迎える方、東日本大震災で亡くなった方のご冥福をお祈りする

夕暮れの北上川を赤く染める舟

北上川は、岩手県中央部を北から南に流れ、宮城県石巻市追波湾(おっぱわん)に注ぐ1級河川です。長さ249キロ、流域には北上盆地があります。盛岡市内を流れる北上川は、中津川、雫石川と並んで市内を潤す生活の川です。

舟っこ流し雨の北上川

そして、いよいよ舟っこ流しが始まりました。

最初は、仙北2丁目自治会の皆様。先頭を切って、川に入り水の状態を確かめるのは仙北の河童と呼ばれる方です。
まだ小雨が残る中、男衆はすべる足元に注意して慎重に舟を運びます。

舟っこ流し先陣を切るのは仙北2丁目自治会の皆様

名物の赤い下帯姿の男たちは真っ白な足袋をはいて、舟を担いで川に入っていきます。

舟っこ流し雨で足元が悪い中、川に向かう

川に舟を浮かべ、点火。
美しく高く炎が燃えて御霊が浄化するよう願いを込めます。

舟っこ流し舟につけられた花火に点火

今年は、昼からの大雨で舟を流す距離を短くし、そしてコロナ禍の影響で例年より少ない8団体の参加となりましたが、たくさんの見物客から大きな拍手が送られていました。

舟っこ流し南大通二丁目町内会の皆様

舟っこ流し駒形自治会の皆様

舟っこ流し舟によって色の違う火

天空で燃え上がる!投げ松明で先祖を供養

盛岡舟っこ流し行事の一つ「投げ松明(たいまつ)」は、地域の子供たちが手作りした松明を使って行います。

舟っこ流し火の付いた松明をまわして真ん中の籠に火をつける

「蜂の巣」と呼ばれる麦わらで編んだ籠を載せた、高さ8mの竿を川原に立てた後、火のついた松明を持った子供たちが、投げ入れの合図とともに「蜂の巣」に向かって投げあいます。

うまく命中すると「蜂の巣」が天空で火の塊となって燃え上がります。

舟っこ流し5〜6回目でやっと真ん中の籠に火がつきました

燃え尽きた後、竿を揺さぶると、あたかもクス玉を割ったように、折からの風に乗って火の粉が飛び散っていく様子は心に深く感じいります。
川で亡くなった人の霊を供養するとともに、水の恩恵に感謝し五穀豊穣を願います。

クライマックスは夜空に輝く大輪の花

舟っこ流し盛岡の短い夏の終わりを感じさせる花火

舟っこ流しの最後を飾るのは花火大会。ご先祖様のご供養と盛岡の短い夏の終わりを惜しむように花火が上がります。

今年は3,000発の花火が盛岡の夜空を彩りました。

最後に、「盛岡舟っこ流し協賛会」事務局長鈴木一夫さんに今年の舟っこ流しについてお伺いしました。
「今年は、コロナの影響で開催できなかった舟っこ流しを行うことができて嬉しいです。地域の皆様、支えてくださる皆様に感謝しています。最後の花火にたくさんの方が来てくださるのはありがたいのですが、本来はご先祖様の供養です。その心を忘れないでこの行事を次の世代に繋げていきたいですね。」と力強く語ってくださいました。

舟っこ流し「盛岡舟っこ流し協賛会」事務局長鈴木一夫さん

舟っこ流しは伝統を伝える気持ちのこもった素敵な行事でした。
来年は、ぜひ実際にご覧になってみてはいかがですか。

盛岡舟っこ流し公式サイト
盛岡市公式サイトお祭り情報