日本のほぼ中心に位置する滋賀県には、県土の約6分の1を占める湖「琵琶湖」があります。琵琶湖とその周囲が織りなす風景は、四季折々の景観が一望できることから、観光地としても大人気。滋賀県が「湖国(ここく)」とも呼ばれているゆえんです。

そんな琵琶湖周辺では、毎年様々なお祭りが開催されています。中でも琵琶湖の西南岸一帯で京都府との境に広がる大津市には、「大津祭」、「山王(さんのう)祭」、「船幸(せんこう)祭」という盛大で華やかな祭りがあり、「大津三大祭り」と称されています。それぞれどんなお祭りか、詳しくご紹介していきましょう。

(この記事は2022年に公開されたものを再編集しています。2023年10月6日 編集部更新)

からくり人形を乗せた豪華な曳山は必見「大津祭」

奈良時代に創建された天孫神社の祭礼である大津祭は、京都祇園祭の影響を受けながらも独自の形に発展したお祭りです。本祭が毎年スポーツの日の前日(日曜日)、宵宮は本祭の前日となり計2日間ですが、9月の中旬から囃子の稽古が始まるほか、山建てや曳き初めといった大がかりな準備や儀式が先駆けて行われます。

大津祭の始まりは定かではありませんが、祭礼に曳山が取り入れられたのは江戸時代初め、大津商人の塩屋治兵衛が狸のお面を被り踊ったことに端を発すると伝えられています。塩屋治兵衛が年老いた後、子どもたちが、狸が腹鼓を打つからくり人形を車に乗せて街中を曳いて歩いたことが、現在の形に引き継がれているのだとか。

大津祭の最大の見どころは、きらびやかな装飾を施した13基の曳山です。全て江戸時代に制作されたもので、お祭りの一週間前に各地で組み立てられ、本祭の翌日に解体されてしまいます。
この曳山それぞれに仕掛けられたからくりは、町内20数か所で披露されます。また、「コンチキチン」の祭囃子の音が秋の空気に心地よく響き、目でも耳でも風情を楽しめます。

ほかにも、京都の祇園祭と同様に曳山巡行の順番を確認する「くじ改め」があったり、町ごとに厄除け粽(ちまき)があったりと見どころがいっぱいです。特に、囃子方のみなさんが着ている、江戸時代に大流行した「大津絵」が背中に描かれた粋な着流しは注目ポイント!これらは下記のレポートで動画を交えてたっぷりとお伝えしていますので、ぜひご覧ください。

ピーヒャラ・ピーヒャラ!「大津祭」提灯の朱色に染まる宵宮の夜


滋賀・大津のからくり山がすごい!2023年「大津祭」の曳山巡行は7日から!

◎2023年の開催は?

2020年と2021年は新型コロナウイルスの影響で開催見送り、2022年は規模縮小での開催でしたが、今年2023年は4年ぶりに制限のない通常開催となります!10月7日(土)に宵宮、本祭は10月8日(日)です。詳細は大津祭曳山連盟公式サイトなどでご確認ください。

1200年の歴史を持つ勇壮なお祭り「山王祭」

毎年、3月の第1日曜から4月15日までの約1か月半に渡って開催される日吉大社の山王祭は、天下泰平と五穀豊穣を祈願する一大祭典です。

比叡山の麓にある日吉大社は、2000年以上の由緒ある名社で全国各地に点在する日吉・日枝・山王神社の総本宮にあたります。その歴史ある日吉大社で開催される山王祭は、延歴10年に桓武天皇が日吉社に2基の神輿を寄進されたことをきっかけに始まったとされており、1200年以上の歴史を誇ります。

お祭りの見どころは、例年4月12〜14日に開催される神事で、祭礼中、牛尾山山王七社の7基ある神輿が登場します。

まず、4月12日に行われるのが、2基の神輿が八王子山から東本宮へ鎮まる「午(うま)の神事」です。これは、大山咋神(おおやまくいのかみ)と妃神である鴨玉依姫神(かもたまよりひめのかみ)の結婚式の再現とされ、暗闇の中を松明の火のみで神輿が降りるさまが大変勇壮で、担ぎ手が命をかけて神輿を担ぐ様子に魅了されます。

4月13日には甲冑をつけた稚児たちの時代行列「花渡り式」が華やかに執り行われ、4基の御神輿を激しく揺すり、西本宮へと担ぐ「宵宮(よみや)落し神事」も見逃せません。

そして4月14日には7基の神輿が勢ぞろいし、琵琶湖を渡る「船渡御」が行われます。

これらの見どころ含め、お祭りの3日間を動画を交えてレポートしていますので、下記もぜひご覧ください。

神さまの出産がお祭りに!?日吉大社「山王祭」火祭りとだんじりが混合した勇壮な祭り

◎2023年の開催は?

2023年は、例年通りの日程で開催されました。祭りの詳細はこちらのページから、次回の開催など最新情報は日吉大社公式サイトなどで確認ください。

船団の明かりと花火が幻想的で美しい「船幸祭」

船幸祭

例年8月17日に開催される、建部大社の例祭「船幸祭」は、水面に映える船団の明かりと花火が夏の夜を幻想的に彩る水上祭です。

昼間、建部大社を出たお神輿は建部の街を練り歩き、一路、瀬田の唐橋の袂にある瀬田浜を目指して進みます。

船幸祭

日本武尊(やまとたけるのみこと)が船団を従え海路東征した故事に基づき、瀬田川を海路に見立てて船が渡御します。

大神輿を載せた御座船を先頭に、船団は約4㎞下流の黒津浜へ。その後、古式にのっとって別宮の毛知比(もちひ)神社・新宮の新茂智(しんもち)神社から供物が献じられる流れです。

船幸祭

お祭りのクライマックスには、かがり火や提灯で彩られた御座船が水面に映し出され、夜空には約1,000発の花火が上がります。大津の人々にとっては、夏の終わりを感じさせる大祭です。

船幸祭

2022年の船幸祭に行き、これらの見どころを動画を交えて克明にレポートしています。ぜひご覧ください!

船幸祭が4年ぶり通常開催!お神輿が水上を進み、花火も打ち上がる近江国一宮の祭り

◎2023年の開催は?

2023年は、例年通り8月17日に開催されました。祭りの詳細はこちらのページから、次回の開催など最新情報は建部大社公式サイトなどで確認ください。

まとめ

レジャースポットとしても人気が高い、日本最大にして最古の湖、琵琶湖。
西南岸の大津市では、豪華絢爛、勇壮、幻想的とそれぞれの魅力あふれる「大津三大祭り」が開催されています。

別の呼び方で「湖国三大祭り」と言われることも多いようですが、その場合は船行祭の代わりに、子ども歌舞伎が特徴の長浜市の「長浜曳山祭」が入って「三大」となっているようです。

今後、琵琶湖を訪れる際は、ぜひタイミングを合わせて、これらのお祭りにも参加されてみてはいかがでしょうか。

・・・

トップ画像:shutterstock/mTaira