例年、4月〜7月初めくらいまでの田植えの時期になると、日本の各地で「御田植祭(おたうえさい)」と呼ばれるお祭りが開かれます。社寺の斎田で田植え唄や楽器の演奏にあわせて早乙女が実際に早苗を植え、その年の五穀豊穣を祈る祭りです。なかでも、

◎香取神宮の「御田植祭」(千葉県)
◎住吉大社の「御田植神事」(大阪府)
◎伊雑宮(いざわのみや)の「磯部の御神田(おみた)」(三重県)

の3か所が、「日本三大御田植祭」と称されています。
この記事では、そもそも御田植祭とはどのようなものなのかと、日本三大御田植祭それぞれについてご紹介します。

御田植祭の由来と目的は?

日本では稲作が広まった弥生時代以降、米作りを中心に暮らしてきました。五穀豊穣は人々の切なる願いであり、春には田の神様を迎えてその年の豊作を祈り、秋には収穫を神様に感謝するため、一年を通じていろいろな行事や祭りを行ってきたのです。

それと同時に、重労働である田植えを少しでも楽しみながらできるよう、歌を歌いながら田植えをする風習も生まれました。田んぼのそばで太鼓や笛を演奏したり、踊ったりして田植えを盛り上げる場面が平安時代の習俗を伝える文献や屏風絵に描かれていますが、田植えを娯楽としても楽しむ部分がのちに芸能として「田楽」になったとも考えられています。

出典:ColBase 「月次風俗図屏風」より一部拡大して加工

このように、田の神様への豊作の祈願と、自分たちが楽しみながら田植えを行う風習が結びついて発展してきたのが御田植祭です。現在の御田植祭は、その地域を代表する古くからの社寺の年中行事として伝えられる場合が多く、地域ごとの芸能要素が加わるなどして特徴ある行事が繰り広げられます。

また、新年が明けたお正月や旧正月の頃、あるいは田植えがまだ始まらない2月〜3月に、各地で「田遊び」「田遊祭」といった行事も行われています。こちらは、社寺の境内などで一年間の農作業や秋の収穫までを模擬的に演じる行事で、あらかじめ期待する結果を表現しておくとその通りになると信じて行う、予祝(よしゅく)行事と呼ばれるものの一種です。広くはこの田遊びも御田植際に含めるという考え方もあります。

田遊神事で有名なものとしては、東京・板橋区の「徳丸北野神社田遊び」と「赤塚諏訪神社田遊び」がありますが、静岡県〜愛知県にかけても多く行われていて、オマツリジャパンには現地からのレポート記事もありますのでぜひご参考に!

藤守の田遊びとは?約1000年伝わる厳かな舞を一目見に行ってみよう!


米作りの過程を七段の舞いに、暴れ牛の登場も!静岡県袋井市の田遊祭の奥深い魅力に迫る

では、ここから三大御田植祭を一つずつご紹介していきましょう。

香取神宮の「御田植祭」(千葉県)

 

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千葉県香取市に鎮座する香取神宮の御田植祭は、通称「かとりまち」ともいわれ、史料によると明徳2年(1391年)にはすでに行なわれていたことがわかっています。

毎年4月の第一土曜日、日曜日に斎行され、例年、1日目には「耕田式」、2日目には「田植式」が行われます。

 

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1日目の耕田式は拝殿前庭を斎場とし、鎌・鍬・鋤を持った所役や牛によって田植え前の田んぼを耕す様子を模した儀式と、8人の稚児による田舞や、早乙女手代による植初め行事が奏されます。2日目の田植式では拝殿前庭から斎田へと進み、早乙女手代たちが田植歌を歌いながら苗を植えていく姿を見ることができます。

例年この時期にはちょうど境内や一帯の桜が見頃を迎えるため、その年の五穀豊穣を祈る祭典は華やかに彩られます。御田植祭の詳細や最新情報は、香取神宮の公式サイトからご確認ください。

住吉大社の「御田植神事」(大阪府)

 

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大阪市住吉区にある住吉大社では、毎年6月14日に「御田植神事」が行われます。儀式を略することなく、古い様式と格式を守り、現代でも華やかかつ盛大に開催されています。

御田植神事では、まず植女や稚児など行事に携わる人がお祓いを受け、第一本宮で神事の奉告祭をしてから、行列は御田へ向かいます。その後、御神水を御田の四方に注ぎ清め、植女が神前より授かった早苗を替植女に渡して田植が始まります。

御田の中央には舞台が組まれ、次々と舞や踊りが繰り広げられ、見ている人を楽しませてくれます。

神楽女(巫女)8人による「八乙女舞」のほか、「神田代舞」の奉納、鎧兜で行う風流武者行事が続きます。

地元の子供たちが「田植踊」を奉納し、最後に「住吉踊」を踊ります。住吉踊は特に有名で、心の字をかたどって踊る姿は、とてもかわいらしく微笑ましい場面です。

 

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御田植神事の詳細や最新情報は、住吉大社の公式サイトからご確認ください。

伊雑宮の「磯部の御神田」(三重県)

 

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伊勢神宮は正式名称を「神宮」といい、内宮(ないくう)・外宮(げくう)の両正宮を中心として14社の別宮、109社の摂社・末社・所管社あわせて125社の総称です。その別宮の一つが三重県志摩市に鎮座する「伊雑宮(いざわのみや)」です。

伊雑宮の御田植祭は南北朝時代の建武2年(1335年)に斎行されたのが最も古い記録として残っています。現在は「磯部の御神田(いそべのおみた)」と呼ばれ、毎年6月24日に行われます。

 

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平安朝の衣装をまとった奉仕者たちは御前でお祓いを受け、拝礼したのち、代表が早苗を捧げて御田に向かいます。田道人(たちど=立人)、早乙女らが、苗取りを終わると、まずはじめの見どころとして勇壮な「竹取行事」が始まります。

 

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竹取行事は、地元の青年たちが大きな団扇のついた忌竹(いみだけ)を奪い合う行事です。それが終わると一転、のどかな田楽に合わせて田植が始まります。

 

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これらが終わると「おどり込み行事」が繰り広げられ、一連の行事が終わり御田植祭は例年午後5時ごろに幕をおろします。

伊雑宮の磯部の御神田についての詳細や最新情報は、伊勢志摩観光コンベンション機構公式サイトなどからご確認ください。

御田植祭は他にもたくさん!

今回ご紹介した日本三大御田植祭の他にも、例えば下記のように全国各地で御田植祭は行われています。

●慶徳稲荷神社の御田植祭(福島県喜多方市)
●伊佐須美神社の御田植祭(福島県会津美里町)
●都々古別神社の御田植祭(福島県棚倉町)
●秩父神社御田植祭(埼玉県秩父市)
●下村加茂神社の御田植祭(富山県射水市)
●吉備津彦神社の御田植祭(岡山県岡山市)
●布施神社の御田植祭(岡山県岡山市)
●若宮八幡社の田植祭(大分県杵築市)

さらに、広島県北広島町で毎年6月の第一日曜日に、市街地に程近い田を会場に盛大に行われる「壬生の花田植(みぶのはなたうえ)」は、ユネスコの無形文化遺産保護条約の「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に記載されています。

古から日本人の暮らしの中心になってきた稲作にまつわるお祭り。ぜひお近くの開催場所を探して一度訪れてみてはいかがでしょうか。