これまでにも『家政婦のミタ』ほかエッジの効いたドラマを世に送り出してきた脚本家・遊川和彦氏&大平太プロデューサーのコンビが手がけた新作ドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ系)。なぜいま“過保護”をテーマにしたのか?大平プロデューサーに聞いた。

◆過保護をネガティブには捉えていない

“過保護”がテーマの本作では、親の寵愛を受けて育った世間知らずの大学生・カホコ(高畑充希)の成長物語が描かれていくが、そもそもの企画はどこからスタートしたのだろうか。

「基本的なスタンスとして、自分の身近にある題材のなかからテーマを探してドラマにしています。『女王の教室』では娘の学校の授業参観で驚いたことが発端になっていますし、『○○妻』のときは遊川さんが結婚に迷われていて、僕も結婚生活について考えることがあったところから始まりました。今作も、まさにうちの1人娘が21歳の大学4年生で、かなり過保護に育ててしまい、それを遊川さんに話しているうちに企画として進んでいきました。ただ、過保護とは、過干渉とも甘やかすこととも違って、ネガティブには捉えていません。ドラマはそれを否定も肯定もしませんが、愛情をかけすぎて悪いということはなくて“過保護のススメ”という面もあるのかなと思っています」

 過保護に育てられた娘の親離れ、そして親たちの子離れという普遍的なテーマがありつつ、そこは遊川作品。社会性を有した一筋縄ではいかない展開が期待される。

「最後は、親離れしました、子離れしましたという結末になるのだけれど、それだけでは連ドラとして厳しいというのが遊川さんの意見でした。そこで、主人公は何もできない女の子ではなく、自分のなかに眠っていたものが、周囲の人々と触れ合うことによって開花していくという展開になりました。加えて、家族や周囲の人間もいろいろな問題を抱えているなか、必死に生きている家族賛歌の物語にしたかった。遊川さんは『1億総過保護時代』という意識を持たれていて、彼ならではの社会への問いかけもあります」

『女王の教室』や『家政婦のミタ』もそうだが、回が進むごとに視聴率を上げていく傾向がある遊川脚本。そこにはキャラクター造詣への徹底したこだわりがあるという。

「遊川さんは打ち合わせの際に『それって普通だよね』とよくダメ出しするんです。理屈よりもおもしろいものを採用する。そのためには広くアイデアを募って、おもしろいものだったらどんな立場の人間の意見でも採用します。そこから主人公を含めた登場人物のキャラクターを徹底的に作り上げていく。さらに現場にも足を運んで、俳優たちともしっかり話をするし、そこで生まれた意見も取り入れていきます」

◆視聴率で恩返しをしたい

 こうしたこだわりから、キャラクターはどんどん多面的になり躍動する。それによって物語が展開していくので、視聴者も感情移入しやすくなる。そんな物語を情感豊かに盛り上げる要素のひとつが主題歌だが、今作では歌手としても俳優としても引っ張りだこの星野源を起用した。

「キャストのダンスはありません(笑)。ダメもとのオファーだったのですが、台本を読んでドラマの趣旨を理解したうえで、オリジナル曲を書き下ろしてくださいました。『懐かしい感じ』とだけリクエストさせていただいたところ、ソウルミュージックを意識されたという物語にピッタリのメロディを作っていただいて、一発でハマりました。『家族』というキーワードをしっかり捉えた素敵な曲です。改めて星野さんの底力を感じています」

 第1話の平均視聴率は11.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。SNS上ではカホコのキャラクターに感情移入したという意見も多く、数字も含めて幸先の良いスタートを切ったといえるだろう。

「僕はディレクター出身のプロデューサーですが、ディレクターはおもしろい作品を完成させることで、スタッフやキャストに対して恩返しできます。でも、プロデューサーは企画をゼロから立ち上げていくにもかかわらず、そこに達成感はないんです。だからこそ、プロデューサーが唯一、みんなに恩返しできるのが視聴率だと思っています。たかが数字ですが、されど数字。そこにこだわりを持って臨んでいます」

 昨今のドラマ離れと言われる状況を「制作者として真摯に受け止めている」と語る大平プロデューサー。身近なテーマを取り上げつつ、社会性のある切り口で掘り下げることで、誰もの心に刺さるドラマを送り出していく。
(文:磯部正和)
(コンフィデンス7月31日号掲載)