アイドルグループ・ももいろクローバーZの17thシングル「BLAST!」が8月2日に発売された。ミュージックビデオには、柔道・リオ五輪女子78キロ超級銅メダルの山部佳苗選手、重量挙げリオ五輪48キロ級銅メダルの三宅宏実選手など、錚々たる“モノノフアスリート”たちが総出演。そもそも一流アスリートたちは試合前に集中力を高め、自身を奮い立たせるために音楽を拠りどころとするケースが非常に多い。その要因は今回の「BLAST!」を聴いても一目瞭然だ。

■メジャー後も毎年ももクロを“入場曲”に起用するモノノフ・田中将大

 先ごろ、『Oha!4』(日本テレビ系)で放送された同曲のメイキング映像で山部選手は「いつも、ももクロちゃんの曲を聴きながら試合へ行ってます」とコメント。試合前、自身を奮い立たせるのにももクロ楽曲は欠かせない。このように、さまざまなアスリートは練習中から音楽を聴いたり、あるいは競技によっては、“入場曲”として起用し、自身のモチベーションを高めてきた。

 野球であれば、阪神の「六甲おろし」など“球団歌”もあるのはもちろん、選手個人の“入場曲”がそれぞれに存在。熱烈な“モノノフ”であるニューヨークヤンキース・田中将大投手は、2012年の「走れ!」以降、ももクロ楽曲を使用し続けており、ヤンキース移籍後も2014年の「My Dear Fellow」、2015年の「勝手に君に」は田中投手のために書かれ、2016年の「GET Z, GO!!!!!」では田中投手自身が作詞に参加している(ももクロ、NAGAEと共作)。さらに、今年の入場曲として使用している「何時だって挑戦者」には、彼の座右の銘“氣持ち”を織り込まれており、今回の「BLAST!」に収録されるに相応しい楽曲といえるだろう。 

 田中投手以外にも、マウンドに上がる際、バッターボックスに立つ際に自身を奮い立たせるために、多くの野球選手がアーティストとコラボを果たしている。元広島カープ・黒田博樹氏は日本復帰に合わせてB'zが書き下ろした「RED」を使用。北海道日本ハムファイターズ・中田翔選手は、ビーグルクルー書き下ろしの「MY HERO」を使用し、MVに本人が出演。

 またサッカーの場合は、各チームにオフィシャルソングがあるケースが多いほか、FIFAの大会で流れる公式アンセム「FIFA anthem」、日本代表オフィシャル応援歌「We Are The Champ?THE NAME OF THE GAME?」、TUBEのギタリスト・春畑道哉による「J'S THEME」などがサッカーを象徴する曲として知られている。傾向としては、インストゥルメンタルの曲が多いのが特徴。さらにラグビーでも、ニュージーランド代表(オールブラックス)がマオリ族の民族舞踊「ハカ」を踊ることで有名。歌や踊りを伴った独自の方法で自らを鼓舞し、テンションを高める伝統の儀式として周知されている。全てのスポーツ競技において、アスリートを鼓舞する音楽は、必要不可欠なツールだということがわかるだろう。

■テンポの速い楽曲は瞬発力を向上、遅い楽曲は集中力を高める効果が

 “相思相愛”なももクロとヤンキース田中投手のように、有名アスリートがある特定の楽曲を聴いてテンションを上げているという話が世に広まったきっかけは、2000年のシドニー五輪女子マラソンで優勝した高橋尚子選手が練習中やレース前に、hitomi「LOVE 2000」を聴いていたエピソードが有名。同曲はBPM170程度とやや早めのテンポで、走りながら聞くには最適。hitomiは「私の作品が頑張る力になれたことは光栄でとてもうれしい。自分への応援歌として書いたこの曲で、より多くの人が頑張ってもらえたら」と語っており、アーティストサイドにも良い影響を与えている。

 テンポの速い音楽は脳を刺激して、瞬発力を向上させる。逆に、ゆっくりしたテンポの音楽は心を落ち着かせ、集中力を高める効果があるとされている。感じ方はそれぞれだが、競技によって、このように適したテンポもあるのかもしれない。

 今回の新曲「BLAST!」の作詞、作曲、編曲を担当した、気鋭の音楽ユニット・invisible mannersによると、同曲の基本コンセプトをディレクターから提示され、打ち合わせを重ねていくうちに「“様式”はHIPHOP的だけれども“ポップス”という文脈で語られる楽曲」という答えに行き着いた。また、歌詞についてもinvisible mannersは「アスリートの内的葛藤に重点を置いてます」と解説。デビューから今に至るまで一貫する、彼女たちの妥協を許さない姿勢に、多くのアスリートたちが自身を投影し、リスペクトを贈っているのだ。

 楽曲自体の魅力はもちろんのことながら、アスリートたちが競技のために、全精力を傾けて練習し、その成果を発揮した奮闘ぶりを見ることでさらに感動が増幅され、人々の記憶にその勇姿と楽曲が永遠に記憶に刻まれる。

 速さ、タイミングなど“0.1秒”にこだわって、パフォーマンスを上げていくアスリートと、“0.1秒”の正確性が求められるアーティストは共通する部分が多い。前述の田中選手、山部選手だけでなく、福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐選手、千賀滉大選手、アルビレックス新潟の大谷幸輝選手、プロレスラーの邪道選手なども“モノノフ”としておなじみ。数々のアスリートを魅了する、ももクロの新曲「BLAST!」。歌詞にもある通り「勝利のアンセム」として、2020年の東京五輪を前に、日本中の“頑張る人”を鼓舞する名曲がまたひとつ誕生した。