戦争の爪痕が色濃く残る昭和32年の被爆後の長崎を舞台に、焼け落ちた浦上天主堂に残るマリア像を人知れず運び出そうとする鹿(高島礼子)と、忍(黒谷友香)の2人の女性を描いた人間ドラマ、映画『祈り ―幻に長崎を想う刻(とき)―』が、8月13日よりユナイテッド・シネマ長崎(長崎)にて先行公開、8月20日よりシネ・リーブル池袋(東京)ほか全国で公開される。

 先の戦争で長崎に投下された原爆は浦上天主堂の上空に投下。長崎市の人口24万人のうち約7万4千人が一瞬にして亡くなりました。長崎市民は「最後の被災地であってほしい」と今も慰霊をささげ、世界に向けて平和国家を祈り続けています。昨年の戦後75年ではコロナ禍の影響により式典など中止が相次ぎ、戦争を知る世代が少なくなっている今、戦争の悲惨さ、愚かさを伝える貴重な作品となる。

 本作は、明治の長崎市に生まれ、文学座創設への参加や岸田国士戯曲賞の審査員を務めるなど1990年に亡くなるまで、劇作家・演出家として日本の演劇界に多大な影響と発展に寄与した田中千禾夫(ちかお)が、戦争と原爆の悲惨さを後世に伝えていきたいと1959年に発表し、第6回岸田演劇賞、第10回芸術選奨文部大臣賞を受賞した戯曲『マリアの首-幻に長崎を想う曲-』を初めて映画化した作品。

 被爆のケロイドを持つカトリック信徒・鹿役の高島、詩集を売りながら、原爆の跡地で自分を犯した憎き男を探す忍役の黒谷のほか、田辺誠一、金児憲史、村田雄浩、寺田農、柄本明、温水洋一らが出演。

 監督は、『天心』『サクラ花-桜花最期の特攻-』『ある町の高い煙突』などを手掛けた松村克弥。撮影は高間賢治、編集には川島章正が手掛けるなど一流のスタッフが結集した。

 このたび、長崎県長崎市出身で、本作において被曝した「マリア像の首」の声を担当した美輪明宏より直筆コメントが、本作の主題歌に「祈り」(新自分風土記 I〜望郷編〜)を提供したさだまさしからもコメントが届いた。

■美輪明宏のコメント

 「マリアの首」を演じさせて頂いた美輪明宏です。出演のお話を頂いた時、不思議な御縁を感じました。と申しますのは、戦前の私の養家先が、山里町202番地で、浦上天主堂の近所だったからです。今は平和町と町名が変わっておりますが、天使様の御引き合わせだと思い、お受けさせて頂きました。多勢の心ある方々に、ぜひ御らん頂きたいと思います。

■さだまさしのコメント

 日本人として、長崎人としてこの作品を心から応援します。はじめ映画音楽の相談にお出で下さったスタッフの皆さんが偶然僕の「祈り」という歌を気に入って下さったことから、光栄にも楽曲の提供をさせていただくことになりました。この平和の祈りが世界中に届くことを強く信じます。

■高島礼子のコメント

 撮影前に長崎で被爆者の方から直接お話を伺ったことで、とても気持ちの入った演技ができました。教科書では習わなかったことや被害の大きさ、被爆者差別などを知って愕然としました……コロナ禍にある現在との共通点も強く感じます。本作では、皆さんが1つの目的を持って力を合わせれば、きっと成果につながるという熱いメッセージが込められています。是非、映画をご覧いただき、何かを感じ取っていただければと思います。

■黒谷友香のコメント

 76年前に上空約500メートルの高さで炸裂した一発の原子爆弾により、長崎の街は一瞬で破壊され多くの方々の命が奪われました。長崎ロケに向かう飛行機が徐々に高度を下げ、眼下に広がる街並の中に人々の暮らしを見た時、戦争は過去にあった出来事などではなく、人類が確かに行ってしまったしわざであって、何かの歯車が少し狂っただけで、この当たり前な平和は保っていられなくなるのだと強く感じました。世代を超えて、特に若い方々に是非観ていただけたらと思っています。

■松村克弥監督のコメント

 長崎の被爆を舞台にした作品は多いが、田中千禾夫の原作は戦後10余年の設定にしたところが秀逸。経済成長をめざす流れの中、被爆の記憶を必死に残そうとする名もなき市民、しかも女性たちが主役である。戦争は悲劇であるはよく言われるが、田中の原作は、戦後もそれが続く現実を庶民の目から徹底的に真摯に描く。戦後75年を超え、いまだ悲しいニュースや不穏な時世に揺れる日本と全世界に、田中が遺した劇中のセリフを捧げたい。私たちに今も響く真の言葉である。「一緒にいのちのゆくえば祈りましょう」