2000年の『第5回 東宝シンデレラ』でグランプリを受賞し芸能界デビューして以来、シリアスからコミカルまで幅広い役柄を演じ、その確かな演技力で存在感を放っている長澤まさみ(34)。今月公開の映画『シン・ウルトラマン』では、地球上に出現した巨大不明生物の対策として設立された『禍威獣(カイジュウ)特設対策室』の分析官を演じている。俳優としてのキャリア22年の彼女に、現代を生き抜くコツや、悩みを聞いた。

■『シン・ウルトラマン』で演じた浅見は、自分自身のイメージに近い役柄

――禍威獣特設対策室(通称:禍特対)専従班メンバーで分析官の浅見弘子はカッコ良くて女性が憧れるようなキャラクター。長澤さんの持つイメージにピッタリですが、ご自身ではこの役とどのように向き合って演じられたのでしょうか。

【長澤まさみ】 彼女はとても真面目で真っすぐな人ではあるのですが、どこかユーモアがあって明るい性格だなという印象を受けました。たとえば、気合いを入れるために唐突に自分のお尻を叩いたり、『ヨッシャー!』と口癖のように言ったり(笑)。自分を鼓舞するようなシーンが多いんです。私自身、自分がそういったイメージを持ち合わせているという自覚がありますし、求められていることを意識しながら演じていました。

――2008年に公開された『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』以来、久しぶりに樋口真嗣監督とご一緒されてみていかがでしたか?

【長澤まさみ】 樋口監督は『次はこういう風に撮ります』と迷いなくおっしゃる方で、それは当時から変わっていないなと感じました。常に本音で向き合ってくださるので、こちらが取り繕ったことを言うとすぐにバレてしまうんですよね。だからこそ心から信用して安心してついていくことができますし、私も本音で話すことができるのでとても居心地が良いです。

――禍特対のメンバーで分析官という役柄だからこそ挑戦できたことはありましたか。

【長澤まさみ】 浅見は斎藤工さん演じる神永新二とバディを組んで、未知の存在であるウルトラマンを分析しながら捜査するのが仕事なので、専門的な意見や業務的な意見を述べる役柄なんですが、対人間よりもパソコンに向かって作業しながらしゃべることの方が多かったんです。こういった独特なお芝居は新鮮でしたし、とてもおもしろかったです。

――他に『シン・ウルトラマン』の現場ならではだったことは?

【長澤まさみ】 特撮のスペシャリストがたくさんいる現場だったので“専門用語”のような、意味の分からない言語がたくさん飛び交っていましたね(笑)。それと、「本当にこんなカット使うんですか?」という角度からも撮影していたのが印象に残っています。シーンによっては最大17台で撮ることもあったんです。普通の映画の現場の倍以上の数なので、すごく貴重な経験ですね。

――手前に分厚い辞書のようなものが置いてあって、その後ろに小さく人物が映っているようなカットもありましたよね。

【長澤まさみ】 そうなんです。映画って、登場人物が話しているシーンのときは俳優さんの顔がスクリーンいっぱいに映るのが普通だったりしますが、本作はスクリーンいっぱいに誰かの体の一部や物が映っていて、自分の顔は10分の1くらいしか映っていないことも多々あったので驚きました(笑)。でも、そこに庵野秀明さんと樋口監督イズムを感じていただけたらいいなと思います。

■大事にしているのは“真面目に一生懸命に取り組むこと”「それでもダメなら自給自足の生活もあり」

――長澤さんにとって“ウルトラマン”はどのような存在ですか。

【長澤まさみ】 すごく馴染みがあるヒーローというわけではなかったです。でも、本作を通してウルトラマンが世の中を救ってくれる“現代のヒーロー”のように感じました。「“ウルトラマン”をよく知らない」という方でも、気軽に楽しんでいただきたいです。

――ちなみに、馴染みのあるヒーローは?

【長澤まさみ】 やっぱり『美少女戦士セーラームーン』になるのかな? 友だちと一緒に、ステッキを持って変身ごっこしていましたよ。

――30代に入られてますます役の幅が広がっている印象を受けます。作品選びで心がけていることはありますか?

【長澤まさみ】 自分自身が共感したり、感動したものを伝えたいしという思いを大事にしながらお仕事しています。あと、周りから『こういう役が合うんじゃない?』と言われると“なるほど”と受け止める性格なので、人の意見は素直に聞くことが多いです。

――近しい人からのアドバイスとはまた別の話ではありますが、たくさんの情報が飛び交う現代では、自分独自の価値観を持つのが難しかったりします。長澤さんが気をつけていることはありますか?

【長澤まさみ】 “真面目に一生懸命に取り組むこと”を大事にしています。そうすると、想像もしていなかったような新しい自分に出会えたり、自分らしい感覚というものを掴めたりするんですね。当たり前ですが、適当にやっていたら適当な結果しか出せないので、とにかくいま目の前にあるお仕事に一生懸命になることが大切だなと日々感じながら生きています。

――ベストを尽くしながらお仕事をしていても、ときには迷ったり悩んだりすることはありませんか。

【長澤まさみ】 毎日のことに必死なので悩んでいる暇がないんです(笑)。極論じゃないですけど、俳優がダメだったらこんなバイトしようとか、自給自足の生活もいいなとか、そういう風に思える性格なので執着心があまりないのかもしれません。起きてもいないことを悩む必要はないと思っています。

――たとえば、ネガティブな意見にも、あまり左右されないタイプですか?

【長澤まさみ】 そうですね。5分後には“そんなことあったっけ?”と忘れてしまうぐらい楽観的な性格なのであまり気にしないです。人の意見に頼りすぎてしまう時期って、誰しも経験があると思うのですが、きっと心の中ではそれだけが正しいわけじゃないと気づいているはずだと思うんです。なので、それさえ忘れなければいいのではないかなと。自分の人生をどう生きるかを大事にすることがベストだと思います。

――そんな長澤さんにとってお仕事のモチベーションになっているものはなんでしょうか。

【長澤まさみ】 10代の頃は“俳優ってなんて孤独な仕事なんだ”とか“大変な職業を選んでしまったかもしれない”と思っていましたが、続けていくうちに『あの作品良かったよ』とか『おもしろかったよ』という声を頂く機会が増えたんです。そう思ってくださる人がいるなら続けていけるなって思いましたし、今もそれがモチベーションになっています。それと、自分が出演していない作品でも、俳優さんたちの素敵なお芝居に出会うと「私もがんばろう!」と、モチベーションがあがりますね。

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『シン・ウルトラマン』
出演:斎藤 工、長澤まさみ、有岡大貴、早見あかり、田中哲司/西島秀俊 
山本耕史、岩松 了、嶋田久作、益岡 徹、長塚圭史、山崎 一、和田聰宏 

企画・脚本:庵野秀明 
監督:樋口真嗣 
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