徴税が逆に税金を無駄にする?国税の無理筋な訴訟とそのリスクを元国税の税理士が解説節税はシロで脱税はクロ。ではその間には何があるかといえば、租税回避と呼ばれるグレーな行為がある。租税回避行為とは税法が規定していない行為を行って、合法的に税負担を軽減することをいう。しかしこの租税回避行為について納税者と国税は度々争ってきた。

「教えて!goo」でも「節税 脱税」と検索すると、節税か脱税かあるいは租税回避行為かを問う質問が数多く投稿されている。そこで今回は、かつて元国税調査官として税金を徴収する立場として、そして今は税理士として納税者を守る立場の松嶋洋氏に、節税と脱税と租税回避の歴史について話を聞いてみた。

■税金を減らしたい納税者 VS 国税

「​​節税も脱税も、税金を減らす行為であることは間違いありませんが、前者は法律で認められた範囲で税金を減らすことを意味し、後者は法律に違反して税金を減らす行為を言います」(元国税調査官・松嶋洋税理士)

税金を減らしたい納税者。でも違法行為はしてはならない。となると租税回避行為となるのだろう。

「節税と脱税の間のグレーな部分として、租税回避行為があります。節税は合法、脱税は違法とざっくり整理できますが、租税回避行為はその整理がうまくできません」(元国税調査官・松嶋洋税理士)

■租税回避行為が問われる問題点と具体例

「租税回避行為とは、法律を違反していないため違法とまでは言えないものの、その行為を認めてしまい税金が減らされるのは常識からして不合理、と判断できるような税の節約行為を言います」(元国税調査官・松嶋洋税理士)

やりすぎはいけないようだ。租税回避行為の具体例を聞いてみた。

「典型例として、よく言われることの一つに、令和2年度改正でブロックされた金還付スキームと言われるものがあります。これは、消費税の還付スキームで、不動産投資家が購入した居住用マンションの消費税について、通常は還付が認められないのに、所定の金額の金取引を行うことだけで消費税の還付が認められるという、夢のようなスキームをいいます」(元国税調査官・松嶋洋税理士)

どこがやりすぎなのだろうか。

「​​このスキームを使っても、法律上は消費税は還付されますので違法な税の節約ではありませんが、税金の還付を受けるためだけに金取引をしていること、一般庶民はこのようなスキームをやりたくても不動産投資のお金も金取引のお金もないのでできないこと、といった点を踏まえると、不合理な税の節約行為と評価されます。一定の者にのみ不合理な税の節約が認められるとなると、大多数の国民は納得できません。税は平等に負担するものとされていますので、このような裏道を使うことも許されないと国税は主張しています」(元国税調査官・松嶋洋税理士)

■租税回避行為かどうかが争われた裁判

【国税敗訴】

「国税が負けた事例として有名なものは武富士事件と言われるものです。この事件では、贈与を受けた自社の株式に対し、後継者の贈与税が問題になりました。法律上、国内で譲り受けた財産については、その財産の価額に応じて贈与税が課税されるとされています。一方で、当時の法律では、外国で譲り受けた財産については、日本の贈与税が課税されないとされていましたので、敢えてこの納税者の方は香港に住所をうつし、それから自社株の贈与を受けたのです。武富士株は非常に高額でしたので、香港に行くだけで相当の贈与税が削減できたのですが、外国に行くだけで税金が安くなる、というのは不合理ですので租税回避行為と判断できます」(元国税調査官・松嶋洋税理士)

【国税勝訴】

「先日最高裁で判断された相続税の事例です。相続税対策として、借金をしてマンションなどを買うと、相続税は安くなりますから、この事例の主役の方もこのスキームを使って税額を0円にまで下げていました。この事例において最高裁判所は、多額の借金ができるのは金持ちで、一般国民はほとんどできないことを踏まえ、課税の公平の点から問題があるとして、租税回避行為と判断しています」(元国税調査官・松嶋洋税理士)

■国税が敗訴すると税金が無駄になる?!

租税回避行為かどうかを争い、国税が敗訴すると、還付加算金と呼ばれる利息分を払わなければならないが、この原資は私達の税金である。上述した武富士のケースでは約400億円分の税金が武富士側に支払われた。となると国税の強引な課税処分は私達国民にとってややリスクがあると考えていいだろうか。

「税処分がなされると、それが裁判で取り消される前で有効ですから、慎重にやるべきです。しかし、近年は調査がコロナ禍でやりにくいからか、より強引な調査も多く行われていると耳にします」(元国税調査官・松嶋洋税理士)

●専門家プロフィール:元国税調査官・税理士 松嶋洋 税務調査対策ドットコム Twitter Facebook

東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在の専門は元国税調査官の税理士として税務調査のピンチヒッターと税務訴訟の補佐。税法に関する著書、講演、取材実績多数。
記事提供:ライター o4o7/株式会社MeLMAX
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