約120年ぶりに改正された債権法は知らないだけで損するレベル2020年4月1日から改正された民法が施行された。その中でも注目は約120年ぶりの改正となった債権法だったが、コロナ禍ということもあり、世間の注目がそこまで集まらなかった。しかし注目度と反比例して、今回の改正された債権法は知らないと損をするレベルの話である。

そこで今回は改正内容について、法律の専門家である弁護士に話を聞いてきた。ちなみに債権法は契約に関する基本的なルールが定められている。契約のトラブルは往々にして「知らなかった」を発端とするだけに、ご存知ない方は要点だけでも目を通すことをおすすめしたい。話を伺ったのは富士見坂法律事務所の井上義之弁護士だ。

■改正された法律の中で最も大きな変化とは?

それでは早速、生活に最も身近な部分でどのようなことが変化したのか伺った。

「生活に身近な部分での民法改正の影響としては、賃借人の原状回復義務の範囲が明確になったことが挙げられます」(井上義之弁護士)

原状回復義務とは、アパートやマンションを借りて住んでいた間に損傷した部分を元通りにする義務のことである。一般的には回復費用に敷金が充てられる。改正前と改正後にどのような違いがあるのだろうか。

「改正前民法では賃借人が契約終了時に負担すべき原状回復費用の範囲が明確ではなく、裁判で争われることがありました。その後、通常損耗(家具の設置による床のへこみ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみなど)や経年変化(日光による日焼けなど)について、賃借人が原状回復費用を支払う必要がない、ということで解釈が確立していたのですが、今回の改正では、その解釈が条文に盛り込まれ、明確になりました(民法621条)。かつての解釈が変わったわけではありませんが、借主としては、法律に明記されたことで貸主の不当な要求を拒絶しやすくなったと言えるでしょう」(井上義之弁護士)

経年劣化や通常消耗については責任を負う必要がないという。また壁などの画鋲やピンなどの穴も同様に支払義務は負わないとのこと。

■知らずに原状回復費用を払った場合に返金を請求することは可能?

もしも借り手がこの改正を知らずに、払う必要のない原状回復費用を払ってしまった場合、貸主に返金を求めることは可能なのだろうか。

「貸主と借主の間で通常損耗等の回復費用を借主の負担とする特約をすることは妨げられません。そのような特約がある場合は借主に支払義務があります(但し、明確な合意が必要というのが判例です)。そのような特約がない場合、借主は支払義務がありません。借主が支払義務のないことを知らずに支払った場合や貸主が敷金から控除した場合、借主は、貸主に対し、通常損耗等の回復費用に相当する金銭の返金を求めることが法律上可能です」(井上義之弁護士)

原状回復について特別な契約が交わされてなければ、借り手は支払う義務はなく、もしも支払ったとしても、返金を求めることが可能だという。敷金が控除された場合は、その理由も忘れずに聞くと良いだろう。

■その他に注目すべき改正は?

それでは最後にその他に注目すべき改正を伺った。

「改正前民法では法定利率が5%の固定とされていましたが、3年ごとの変動制になりました。本年4月1日以降は当面3%です」(井上義之弁護士)

法定利率の変化が私達の生活にどう影響するのだろうか。

「この改正が大きく影響するのは交通事故の場面です。例えば、交通事故で後遺症を負い、逸失利益や将来の介護費用を加害者側に請求する場合、将来的に発生する損害を前もって請求する形になるため、中間利息の控除をします。今回の改正でこの時に用いる利率が5%から3%に変更になりましたので、中間利息控除が小さくなり、実際に一括で受け取る逸失利益や介護費用が大幅な増額となります。他方、支払いを受けるまでの遅延損害金についても5%ではなく3%で計算することになり、こちらは被害者が受け取る金額が減ることになります。計算上、逸失利益等は数千万円単位の増額になりますので、全体としては改正により被害者が受け取るお金が増える方向、と言ってよいと思います」(井上義之弁護士)

いかがだっただろうか。ちなみに原状回復費用の支払義務を負わないのは通常消耗と経年劣化の場合で、タバコのヤニや猫や犬などのペットによる柱への傷等は対象外となるので、注意が必要だ。

●専門家プロフィール:弁護士 井上義之 事務所HP ブログ

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