大工の棟梁に聞いた!昔ながらの日本家屋は今でも作れるの?近年、世界中で社会の「持続可能性」が問われている。人工的な物質や量産技術に頼りすぎない、より自然環境に寄り添った商品やサービスを目にする機会が増えたのでは。そのような潮流の中で、昔ながらの日本家屋に注目が集まっているようだ。「教えて!goo」にも「昔ながらの日本家屋って今でも建てられる?」と、その快適さを実感しているというユーザーから質問が寄せられていた。そこで今回は、伝統構法による木造日本建築を行う工務店「惺々舎(せいせいしゃ)」主宰で大工棟梁(とうりょう)の深田真さんに、日本家屋とはどのような家のことか、今でも建てることができるのかを聞いてみた。

■“昔ながらの日本家屋”ってどんな家?

日本家屋とは、具体的にどのような建物を指すのだろう。

「『伝統構法』とよばれる技法で作られた木造住宅のことをいいます。木の特性を最大限生かした、伝統的な木組みの構造になっています。柱や梁(はり)など家の骨組みとなる木材の多くが、隠れることなく意匠になっているのが特徴です」(深田さん)

材料となるのは、自然素材だそうだ。

「木材のほか、土壁を作るための土や竹、藁(わら)に加え、屋根を作るための瓦や萱(かや)が主な材料です。建具や表具には和紙なども使われます。そのほとんどが、地場で採取される自然素材です」(深田さん)

そのような日本家屋で、当時はどのような暮らしが送られていたのか。

「畳が敷かれ、食卓にはちゃぶ台か座卓が使われていました。ほかには茶箪笥や桐箪笥などが置かれ、わずかな家具のみで生活していました。茶の間は食事などの一家団らんの場であり、座敷は客間です。それと同時に、それぞれの部屋に布団を敷き寝室にしたり、障子やふすまを外しひとつながりの広い部屋にしたり、多目的に部屋を使って暮らしていたのです」(深田さん)

生活空間の様子だけでも現代人の暮らしとは異なるが、実はもっと大きな違いがあるとか。

「一昔前の日本人にとって、家とは周囲の自然と気持ちよく共に生きるためのものでした。庭に花や樹木を植え自然と交流しながら心豊かに生きられるよう、先人が長い年月をかけて試行錯誤しながら作ったひとつの『型』なのです」(深田さん)

そのような理由から、日本家屋は自然と人間の双方にメリットがあるようだ。

「地場の材料だけで作ることができ、寿命が尽きたあとも大地に還ります。環境負荷が極めて少ないこと、自然素材で作られているため住む人の健康によい室内環境を作れることなどのメリットがあります。ほかにも耐震性に優れ、手入れさえ怠らなければ数百年維持することができるなど、魅力に溢れています」(深田さん)

デメリットは、職人の手作業で作られるため、工期が長く費用が割高になることだそう。自然環境との親和性が高い日本家屋は、まさに持続可能性の高い建築といえそうだ。

■今でも建てられる?

昔とは環境が変化した現在でも、日本家屋は建てることができるのか。

「『仕口(しくち)』や『継ぎ手』とよばれる伝統的な木組みで構造を作るなど、熟練の技が必要です。そのような技術を持った職人は減ってきてはいるものの、建てることは可能です。中部地方以西の方が伝統建築を手掛ける職人が多い傾向にあります」(深田さん)

建てるのに適した地域はあるのだろうか。

「日本家屋はその土地の気候や風土に合わせたバリエーションがあります。環境が大きく異なる北海道を除いては、構造や意匠の根本原理は共通しています。地域による建てやすさの違いはありません。材料はスギ、ヒノキ、マツ、クリなど国産の木材が適しており、自然豊かな環境に建てる方が土地と建物がなじみやすいです」(深田さん)

新築やリノベーションなど、建てる際の条件により向き不向きがありそうだが……。

「新築の場合、一般住宅より長工期で費用が割高になります。適した設計者や工務店の数も多くはないため、探す際には注意が必要です。リノベーションの場合は、元になる建物がおよそ昭和20年代以前に伝統構法で建てられた木造建築であれば、再生や移築が可能です。現代的な工法で建てられた建築は、構造自体が異なるため昔ながらの日本家屋にすることはできません」(深田さん)

現代でも伝統的な日本家屋を建てることが可能だとわかり、夢が広がった人もいるのではないだろうか。社会の持続可能性を問われる現代人は、日本家屋の構造だけでなく、当時の暮らし方や価値観からも学べることが多そうだ。

●専門家プロフィール:深田 真(惺々舎)
現代の日本では数少ない、伝統構法と土壁により昔ながらの日本家屋を建築する工務店「惺々舎」を主宰。自身が設計から施工までを一貫して行い、日本全国への出張施工にも対応している。画像提供:惺々舎

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)