所有者不明土地法はどんな法律?どんな人が救われる?罰則は?弁護士に聞いてみた2017年6月に所有者不明の土地の総面積が九州よりも広大(全国の土地の2割・約410万ヘクタール)であると明らかになった。これによって自治体や企業が所有者を特定する手間が増えていた。また景観を損ね、地域の治安を脅かしているとも言われ、この問題は人口減少や少子高齢化によって増え続けるとのことだった。

それから4年経過した2021年4月21日、所有者不明土地法が成立した。所有者不明土地法は所有者を明らかにすることで、公共事業や都市部の再開発の促進、土地取引の機会増、休眠状態の不動産の流動性向上を目的としている。そこで今回は富士見坂法律事務所の井上義之弁護士に所有者不明土地法の細かい詳細を伺った。

■発生防止と利用円滑

「今回成立した法律は、簡単に言うと(1)所有者不明土地の発生を防止し、かつ、(2)既存の所有者不明土地についてその利用を円滑化するための対策を講じるものです」(井上義之弁護士)

(1)所有者不明土地の発生防止
相続によって不動産を取得した場合にその取得を知った時から3年以内に相続登記の申請をすること及び不動産所有者の住所や氏名が変わった場合に変更日から2年以内に変更登記の申請をすることが義務化されます。登記官が職権的に変更登記をする仕組みも導入されます。また、一定の条件のもとで、相続により取得した土地を国庫に帰属させることができる仕組みも導入されます。

(2)所有者不明土地の利用円滑化
裁判所の関与の下で、所有者不明土地・建物を管理する制度が創設されます。連絡がつかない共有者がいる場合でも共有物の変更や共有関係の解消を可能にする仕組みも導入されます。また、相続開始から10年経過した場合、原則として特別受益及び寄与分の規定の適用がなくなり、シンプルな法定相続分で遺産分割されることになります。さらに、土地の利用を促進する趣旨で、ライフラインの導管設置権など相隣関係の規定も整備されました。

■罰則は5万〜10万円の過料

登記しなかった場合の罰則はあるのだろうか。

「相続登記を正当な理由なく怠った場合10万円以下の過料が科され、住所等の変更登記を正当な理由なく怠った場合5万円以下の過料が科されます。前科が付く刑罰ではありませんが、うっかりしていると不測の支出を強いられる可能性があるので注意が必要です」(井上義之弁護士)

■誰が救われるか

所有者不明土地法によってどんな人が救われるだろうか。

「今回成立した法律は、国土の効率的利用のために所有者不明土地の解消を目指すものであり、個人の権利救済というよりも、もっぱら公益的な目的に基づくものと言えます。しかし、例えば、所有者不明土地が適切に管理されていないために被害を被っている隣地所有者や一部の共有者と連絡がつかないために土地の利用や処分が制限されている相続人などにとって、この法律は歓迎すべきものといえるでしょう」(井上義之弁護士)

■懸念点は

最後に所有者不明土地法の懸念点を伺った。

「先ほど述べた通り、今回の法律により民法が改正され、相続開始から10年経過した場合、原則として特別受益及び寄与分の規定の適用がなくなります。遺産分割の基準をシンプルにすることで所有者不明土地の解消を促す狙いです。一般に、相続開始から長期間が経過すると、特別受益や寄与分の立証は困難になっていきますので、その意味でも合理的な改正といえると思います。ただ、通常、相続財産には土地だけでなく建物、株式、預貯金、現金なども含まれます。特別受益や寄与分の規定はそのような様々な相続財産全体の分割に関わるルールです。そのようなルールを、もっぱら所有者不明土地の解消をねらいとして変更することが果たして妥当か、という疑問がないではありません」(井上義之弁護士)

所有者不明土地法による登記の義務付けは2024年を目処に始まる。対象者は是非気をつけていただきたい。

●専門家プロフィール:弁護士 井上義之 事務所HP ブログ

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