正看護師としての職務経験ン十年の筆者(梓川)です。その経験を生かしてこれまでにも健康に関する話題を書いていますが、本稿から始まる「突撃となりの患者さん」(不定期連載)では、患者さんへ直接インタビューした内容をご紹介します。第1回は、手術で取りたくても取る事ができずに、薬を使いつつ閉経を待たざるを得ないという子宮筋腫の患者さんに話を聞きました。

 40代後半のAさん。24年前に緊急帝王切開となった際、血液の凝固系に異常がある事が発覚しました。毎回訪れる生理時の異様なまでの経血量が原因で、重度の貧血も併発しています。

■ 子宮筋腫とは

 子宮筋腫とは、そのまま子宮のどこかしらにできる良性腫瘍の事を指します。子宮の内側(粘膜下筋腫)、子宮の筋肉の中(筋層内筋腫)、子宮の外側(漿膜下筋腫)に主に分けられ、大きくなるほど貧血や痛みなど様々な症状の原因となります。生理痛が酷くなる、経血量が多くなるほかに、生理以外でも出血が来る「不正出血」や、腹痛、腰痛、頻尿、便秘、時には習慣流産や不妊の原因にもなります。

 子宮筋腫自体は全く珍しいものではなく、小さいものも含めると30歳以上の女性の20〜30%ほどの人にあると言われています。生理が人よりも重い気がする、寝込むほど痛みが酷いという症状などから発覚する人が多いのですが、妊娠時の検診で発覚する人や、子宮がん検診でびっくりするほど大きな筋腫が発見される事もあります。

 子宮筋腫は女性ホルモンの影響で大きくなっていくため、小さくて症状も酷くないものであれば、そのまま経過観察となるのですが、症状が酷いと筋腫を手術で取る事もあります。

 しかし、筋腫のできた場所によっては子宮を全部摘出する必要があったり、筋腫だけをくりぬくように手術をするにしても、全摘よりも出血量が増える、目につかない程の小さな筋腫まで取り切れないなどのデメリットもあるため、妊娠の希望があるかどうかで治療方法を考える必要があります。

■ 生理の重い軽いの基準とは?

 生理痛の重さや経血量は人によって様々ですが、一般的には多い日でも2時間に1回程度の多い日用ナプキンの交換で済む場合、平均以内と考えて良いでしょう。夜用の大きなナプキンを頻繁に取り換えないと間に合わない場合は、平均よりも多いと考えてください。

 また、生理痛は健康な状態であればほとんど感じない事が多いのですが、痛さのあまりに動けず寝込んでしまう、痛みで吐き気がする、めまいがして起き上がれない状態は明らかに重い状態。病的な症状といえます。

 経血量が多いと、月経過多症という状態を引き起こし、重度の貧血に繋がります。生理が軽い女性は、つい自分の状態と比較して「大げさな」と思う人も割といますが、比較する基準は、自分の生理の軽さではなく、客観的に見た症状からの判断となります。

■ Aさんの場合

 さて、冒頭のAさんの場合に話を移します。Aさんが子宮筋腫と診断されたのは、今から4年ほど前。診断されるまでにあったAさんの症状は、めまい、頻脈、あまりの痛みの酷さに動けず寝込むなど、明らかに血液不足による症状と、血液凝固作用不足による貧血と筋腫による月経困難がみられていました。

 診察で分かった事は、子宮の内側にできた、成人の握りこぶし一つ分の筋腫。正常な子宮の大きさ自体が鶏の卵ほどの大きさが平均的なので、この筋腫の大きさは明らかに大きいと言えます。

 通常、このサイズで妊娠の予定がないのであれば、子宮を全摘する事が多いのですが、Aさんは血液が固まりにくい体質。つまり、お腹を切って子宮を摘出する時に止血が困難となり、大出血となり得るという大きなリスクが伴います。

 このため、血液内の鉄分不足に対応するために鉄剤の内服、そして女性ホルモンを抑えて子宮内膜を厚くさせないための低用量ピルの内服を行っていましたが、鉄剤の内服は胃部不快感や吐き気、嘔吐の症状が強く出てしまうためにやむを得ず中止へ。現在は鉄剤の注射薬に切り替えての治療を続けています。働きながら治療を受けていたAさんは、勤務先のトイレで何度も嘔吐を繰り返すほどだったとの事。

 鉄分は赤血球の中に存在し、酸素と結びついて全身に酸素を送る役割を担うのですが、物理的に血液が体内から不足してしまうと、重度の貧血となり、動悸や息切れ、全身のだるさといった自覚症状が出ます。

 さらに、爪がもろくなって反り返ってしまい、スプーン状になる、顔色が悪くなる、肌荒れや髪の毛の傷みが激しくなるといった他覚症状もみられます。

 鉄不足で特有なのが、「氷食症」という症状。無性に氷をかじりたくなり、しょっちゅう冷凍庫の氷などをガリガリと食べてしまうのですが、やはりAさんも氷食症の症状が出たそうです。貧血の症状としては意外と世間に知られていない症状の一つかもしれません。

 やむを得ず内科的な治療を受けながら、あと数年の閉経まで待つという治療法の選択肢しかなかったAさんは、ひたすら対症療法を続けています。今でも、生理が重くなる事があり、貧血が酷くなってしまった場合は鉄剤の注射とは別に、輸血を受ける事もあるのだそう。そんな時はもちろん、体を起こす事も困難な状態です。

■ 女性なら生理は必ず来るけど甘く見ないで!

 生殖機能に問題がなければ全女性に起こる毎月の出血。毎月の事だから、自分の出血が多いかどうか分からないから、などと我慢していると、気付かない間に女性特有の子宮の病気に繋がっていくなど、じわじわと貧血が進行していく場合があります。少しずつ進む貧血は、意外と自覚症状に乏しい事があります。

 Aさんは、自身の経験から「貧血症を甘く見ないで、しっかり治療して欲しい。重度貧血症の疑いのあるとき、氷食症という異常なまでに氷を食べずにいられなくなる現象が起こることもあるから、おかしいかもと思ったら早めに診察を受けて欲しい」と呼びかけたいと話していました。

 もし、自分だけでなく、周りの人や自分の娘が生理で苦しんでいる時は、どうか婦人科の受診を勧めてあげてください。婦人科の診察は内診などを想像してハードルが高く感じるかもしれません。でも、自分の体を守るためにも必要な検査。つらくて心細い人に、どうか寄り添ってあげて欲しいと願っています。

<記事化協力>
匿名Aさん

<参考>
子宮筋腫|公益社団法人 日本産科婦人科学会
子宮筋腫|日本婦人科腫瘍学会
貧血で処方される薬剤のランキング – 医薬情報QLifePro
あなたの月経は正常ですか?:基礎体温計測推進研究会
ほか

(梓川みいな/正看護師)