生活感あふれる私鉄沿線住宅地のジオラマ(Ruinsさん提供)

 鉄道模型の楽しみ方は色々ありますが、車両のコレクションとともに人気なのがレイアウト、いわゆるジオラマ(情景模型)作り。100円ショップで売られているコレクションケースに収まる、とある私鉄沿線をモデルにしたリアルな住宅地のジオラマが、Twitterで注目を集めています。

 大学2回生のRuinsさんは、鉄道模型のレイアウトやジオラマ作りを中学時代から続けています。今回Twitterに投稿したジオラマは、オリジナルの住宅作りの練習として取り組んだものだといいます。

ありがちな住宅地の風景がモチーフ(Ruinsさん提供)

 作り始めるにあたっては「住宅街、築堤、架道橋の3点を再現したいテーマとして設定しました。また、今作で使用する100均ケースはフタがついていて破損のリスクが小さいことから、できる限り細部まで表現することも目指しました」とRuinsさん。縮尺はNゲージの1/150スケールとなっています。

玄関先の郵便受けやプランター(Ruinsさん提供)
プロパンガスのボンベやポリバケツ(Ruinsさん提供)

 このため、従来では省略していた洗濯物や地デジのアンテナ、玄関先に置かれたプランターなど、生活感を表現する細々したものも再現したそうです。帰宅した高校生の娘さんを2階ベランダで洗濯物を取り込んでいる家族が迎える、といった光景もあり、時間帯としては16時〜17時ごろといった感じ。

地デジのアンテナ(Ruinsさん提供)
高校生の帰宅(Ruinsさん提供)

 とある私鉄沿線の住宅地をモデルにしていますが、あくまでもイメージの土台として参考にしたもので、実際の風景とは異なるとのこと。Googleストリートビューで候補地を探し、架道橋についてはロケハンもしたそうです。

跨道橋のスケッチ(Ruinsさん提供)
跨道橋の風景(Ruinsさん提供)

 コレクションケースの中に収まるよう、住宅地や線路の配置はオリジナルで設計。Ruinsさんは「フタが閉まるギリギリまで用地面積を取り、ベースとなるケースの形状にも配慮しつつ各住宅の設計を行いました」と語ってくれました。

使用したコレクションケース(Ruinsさん提供)
平面の設計図(Ruinsさん提供)

 住宅については「せっかくの自作ということもあって、あえて建物の形状を複雑に設定したので、特に屋根周りの設計には苦心しました」とのこと。何度も紙でモックアップを作り、形状と配置を検討したそうで、用地に合わせて建てなければいけない実際の建築設計と似ているかもしれません。

モックアップで確認(Ruinsさん提供)
屋根の組み方(Ruinsさん提供)

 建物は、プラシートから切り出した部品を組み合わせる「箱組み」と呼ばれる手法で作られています。Ruinsさんは「各部品をゆがみのないように切り出し、組み立てる点に苦労しました」と語ってくれましたが、複雑な形状の部分もあり、また窓枠はサッシの重なりを考慮して切り出されていて、とても繊細な作業であることが分かります。

素材のプラシート(Ruinsさん提供)
壁の切り出し(Ruinsさん提供)
窓枠の切り出し(Ruinsさん提供)
サッシの重なりも表現(Ruinsさん提供)

 ケースの角を斜めに横切る鉄道の築堤も、プラシートの箱組みで作られています。コンクリート擁壁のディティールは、パテを盛って研ぎだし、風化した雰囲気を再現。

築堤も箱組み(Ruinsさん提供)
築堤のディティール(Ruinsさん提供)

 線路に沿って配置された、信号ケーブルを収納している「トラフ」と呼ばれる側溝のような設備は、本物と同様に少し地面から浮かせてあります。架線柱を避けるため、一部曲がっているところもリアルですね。

地面から浮かせているトラフ(Ruinsさん提供)

 架線柱は市販のものをベースにしていますが、そのままだと上部がボッテリしているので、鉄骨の繊細な構造を表現するため、上部の梁を切り取り、細いプラ材に置き換えています。築堤のフェンスはステープラー(ホッチキス)の針を植えて再現。

架線柱の元の形(Ruinsさん提供)
梁を細くしてリアルに(Ruinsさん提供)

 細かい部分のディティールは、100円ショップの意外なものが素材になっています。窓の格子部分は網戸補修シール。目の粗さが、ちょうどいい感じです。

窓格子の材料は網戸補修シール(Ruinsさん提供)
スケール感がちょうど合う(Ruinsさん提供)

 ベランダに干された洗濯物自体はエッチングキットだそうですが、物干し竿を受ける部分はキットに入っていなかったため、縫い針の糸通し部分を切り取り、壁に接着。

縫い針の頭を切り取る(Ruinsさん提供)
壁に接着し竿受けに(Ruinsさん提供)

 別の物干しではピアノ線で物干し台を作り、竿受け部分はラバー製の歯間ブラシ。先端のブラシ部分がちょうどよくハマっています。

物干し台の設計図(Ruinsさん提供)
歯間ブラシの先端を切り取る(Ruinsさん提供)
完成した物干し台(Ruinsさん提供)

 雨戸は結束バンドのギザギザした部分を切り取り、使用しています。模型とは関係ない身近なものが素材になっているのは面白いですね。

結束バンドが雨戸の材料(Ruinsさん提供)
雨戸のディティール(Ruinsさん提供)

 構想から7か月ほどかかって完成した、生活感あふれる私鉄沿線の住宅地。Ruinsさんは「ひとつひとつ丁寧に作業したつもりではあるのですが、至近距離で見るとゆがみや不整合が目立つ箇所も少なくないので、よりカッチリとした仕上がりを目指していきたいと思っています」と、今後の課題を挙げています。

住宅の2階から見下ろした感じ(Ruinsさん提供)

 今回の作品は展示会などに出品する予定はなく、実家に飾っておくとのこと。しかし「ジオラマに完成はないとよく言いますし、思いつきで少し手を加えたりすることもあると思いますので、その際はこれまで通りTwitter等で記録を残していこうと思います」とRuinsさん。更なる変化も期待できそうです。

<記事化協力>
Ruinsさん(@ruins_cheerful)

(咲村珠樹)