色鉛筆で描かれた猫のイラスト(音海はるさん提供)

 繊細な描写で、本物と見間違えるほどリアルなイラスト。そこには作者の細かい観察力と、多彩なテクニックが隠されています。

 片手を伸ばし、何かを掴もうとしている猫さんのイラスト。毛並みを1本ずつ細かく描写した顔だけでなく、ピントの合っていない部分のぼやけた描写まで、画面の隅々まで気が配られていることが分かります。

 このイラストを描いたのは、色鉛筆画家の音海はるさん。これまでにも、繊細な毛並みの1本1本まで描写した細密イラストをたくさん発表されています。

 今回の作品は、依頼をうけ制作されたものだそう。写真をもとにイラスト化したそうです。写真にはピントの合う範囲の「被写界深度」と、そこから外れてぼやける部分とが混在していますが、その点についても意識して描かれています。

 鉛筆で形をとり、主題となる顔、特に表情を決める目元の描写から鼻まわり……と描き進められた猫さん。瞳の奥深さや、鼻の濡れている部分も細かなハイライトで表現されています。

まずは表情を決める目元から(音海はるさん提供)

 細かい毛並みについては、ベースとなる色を下塗りしたところに、鉄筆やネイルアート用のドットペンを使って紙を細かくへこませ、その部分に色付けしていくことで立体感のある表現に。鼻先にいくにつれ、毛並みはスエードのように短くなっていきますが、その質感の違いも描き分けられています。

顔のディティールが描き込まれる(音海はるさん提供)

 顔の輪郭付近はピントが合っておらず、ぼやけているので細かな毛並み描写をグラデーション化して表現。ちょうど頬のあたりで、スムーズにぼけていく描写のつながりを堪能することができます。

全身の描写へ(音海はるさん提供)

 アウトフォーカスにしていく部分も胸元から後ろ脚にかけて、ぼやけ方は大きくなっていきます。このあたりは様々な色を薄く重ね、徐々に毛並みが溶け込んでいく柔らかな描写に。シャープな顔周りと全く違う技法だけに、より顔が強調されて立体感が増しますね。

柔らかいボケをタッチを変えて表現(音海はるさん提供)

 仕上がりまでは「約25時間です」と音海さん。目の部分をよく見てみると、撮影している飼い主さんの姿も映っています。撮られてるのが分かって、猫さんがちょっかいを出しているところなんですね。

瞳には撮影する飼い主さんの姿も(音海はるさん提供)

 毛並みの1本1本から柔らかくぼやけた様子、それに加え瞳に映る飼い主さんの姿まで。細かい部分もおろそかにせず、場所に合わせて適切な技法を違和感なく溶け込ませた作品は、猫さんに顔を触られるのではないかと思わせてくれます。猫さんは、この作品を見てどんな反応を示すのか、楽しみですね。

<記事化協力>
音海はるさん(@huwahuwa1_25)

(咲村珠樹)