国家を揺るがす脅威に人知れず立ち向かう”忍び”が、現代日本にまだ潜んでいたら――。これまで何度も映像化され世界中を魅了してきた忍者とサスペンスドラマが融合した異色のエンターテインメント、Netflixシリーズ「忍びの家 House of Ninjas」が2024年2月15日(木)に世界独占配信開始された。

伝説の忍者・服部半蔵の血を引く俵家は、忍び稼業を捨て庶民に紛れ、普通の生活を送っていた。しかしある日、国の危険を防ぐ秘密組織・忍者管理局から、再び任務復帰を要請される‥‥。

主演には賀来賢人。忍者の末裔である俵家次男を演じる。父親には江口洋介、母親に木村多江、長男に高良健吾、長女に蒔田彩珠、三男に番家天嵩、そして祖母役に宮本信子と、日本のエンターテインメント界を牽引し続ける役者陣が集結した。

ハリウッドも注目する新進気鋭のデイヴ・ボイルを監督に迎えて挑んだ、国境を超えたプロジェクト。共同エグゼクティブ・プロデューサーとして製作陣にも名を連ね、本作を企画した賀来さんに、その並々ならぬ想いを伺った。

企画はどう生まれたか、なぜ“忍び”だったのか

ーーまず、“忍び”というテーマをNetflixへ提案した動機をお聞かせください。

“忍び”というカルチャーが、おざなりになっているんじゃないかと思ったんです。これは子どもと忍者村へ行った際に感じたことなんです。

子どもは興奮しているし、外国人の方もめちゃめちゃ興奮している。でも、僕たち日本人の大人からすると、どこか冷めた感覚があって”ちょっともったいないなぁ”と思ったんです。これをエンタメに昇華できたら、”きっと世界中が楽しめる作品になるんだろうな”と感じたのはそこからですね。

ーー本作にはもうひとつ”家族”というテーマもありますよね?

そうですね。”普遍的なもの”を撮ってみたいというのがあって、”僕の中の普遍って何だろう?”と考えたときに、それが家族だったんです。忍者と家族、その2つのキーワードをくっつけるところから作業が始まったっていう感じですかね。

ーー具体的に原案制作は、どのような感じで進めていったんですか?

緊急事態宣言が出されたときに、「死にたい夜にかぎって」というドラマでご一緒した村尾嘉昭監督と、Zoomで作品を作ろうという話をしていたんです。最初、2人でやっていたんですけど、”俺たち文章が書けないな”ってことに気づいて(笑)。

それで役者も脚本もやっている今井隆文君に、僕たちが言ったことをひたすら文章にしてもらって、企画書を出しました。

ーー企画を提出した段階で、手応えを感じましたか?

僕は常に根拠のない自信がある人で”これは絶対いける!”って感覚でいったんですけどね‥‥(笑)。読んでくださったNetflixの方が、すごく可能性を感じてくださって、お会いした際、”もっとキャラクターとストーリーに広がりがあるといい”という話になって、デイヴ・ボイルというクリエイターを繋げてくれました。彼が僕たちの企画書を何十倍にも広げて、それでゴーサインがでたという感じです。だからデイヴがいなければこんなストーリーは作れませんでしたね。

ーー企画を見たデイヴ・ボイル監督は、最初はどういった反応でしたか?

彼は日本のカルチャーに造詣が深いアメリカ人で、忍者というキーワードにすごく興味を示してくれました。やっぱり海外から見た忍者って絶対的に違うんですよね。だから彼なら面白い視点で描いてくれるだろうな、っていう感覚がありました。

例えば、忍者って縛りが結構あるんですよ。肉食べちゃいけない。酒飲んじゃいけない。セックスしちゃいけない。そういう面白いキーワードをピックアップして、窮屈な忍者像を、今回の作品で表現した。僕は、その発想に触れたとき”その手があったか!”と思いましたね。

ーー面白いキーワードといえば、本編中、雑誌「ムー」が実名で出てきますね。

「ムー」さんは、すごく面白がってくれて全面協力してくれました。本編に出てくる雑誌も「ムー」さんがわざわざ作ってくれたんです。

ーー本物が偽物を作ったんですね。

そう、すごいです(笑)。

ーー賀来さんご自身は、未解決事件とか都市伝説とか‥‥。

大好き(笑)。

ーーそうなんですね(笑)。元々そういったものが好きで、忍者というキーワードが引っかかったのかなと思いました。

ワクワクするジャンルですよね。僕はエンタメを見るときは、”こうだったらいいのにな”というワクワクするジャンルがあると、必ず観に行くんですよ。

クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』っていう映画ありますよね。もし夢に入れたら‥‥っていう話。僕自身、夢というジャンルにすごく興味があるので、あの作品も”初日にすぐ観に行きたい!”って思いました。

令和に生きる忍者の家族

ーー「忍びの家 House of Ninjas」に関して、アイデアの基になった映像作品はありますか?

家族というテーマだと『リトル・ミス・サンシャイン』。あの映画からちょっと影響を受けました。かわいらしい家族にしたかったんですよ。懸命に生きている人たちというものを描きたかったんで、いろんな世代がいる大家族を僕は見たかった。

本編の俵家でいうと、下は小学生だし、ティーンの女の子がいて、僕がいて、多江さん、江口さんの世代がいて、高良くんがその間にいて、上におばあちゃんがいる。家族という単位があると、そこでいろんな人が感情移入できる。

ーー家族の描き方としてこだわったポイントについて教えてください。

みんなが主役であることが、今回のテーマです。一応、僕が主役という形ですけど、画面に出ている量ってみんなと変わんないですよ。みんなに均等に感情移入ができるように作っているんです。

俵家の各々が葛藤も謎も抱えています。この作品は、登場人物のキャラクターが、少しずつわかっていくように構成しています。ある種、一番難しいやり方なんですけど、丁寧に捲れば捲れるほど、視聴者は、どんどんこの家族に共感してくれるんじゃないかな、という思いでこういう形にしました。

ーー今作は、いわゆる忍者アクションとは違うように見えました。

今回のアクションは、ド派手というより、見た目が地味な実践的な殺陣です。この作品では忍者に関してリアルを追求しています。忍者がスパイになっては、絶対にいけない。そうでないと、忍者にも、忍者という文化にも失礼だし、世界の人が観たときにガッカリすると思ったんです。

常にそこを意識しながらやっていたので、アクションの部分でも魔法使いみたいな忍者というより、古風な忍者が令和に生きているように描いている。伝統を残している、伝統から抜けられないという動きにしていました。

ーー女性陣も殺陣とアクションが素晴らしかったですね。普段のイメージにないのでビックリしました。

そうそう。”多江さん、なんであんな動けるんだろう?”ってね(笑)。僕の妹役の蒔田彩珠さんも、最初は床に手が付かないくらい硬かったんですよ。劇中で、大アクションがあるんですけど、よくあそこまで‥‥。あと、仲万美さんもドラマ後半すごい動きを見せていて、女性陣は本当に格好よかった。

ーー男性陣と比べても遜色のないアクションでしたよね。

そうですね。女性の方が強いんですよ(笑)。ドラマの後半では、それが結構ポイントかもしれない。何より宮本信子さんが演じている、おばあちゃんが一番強いんで(笑)。 

日本屈指の画作りに感動

ーー光と闇の映像美がすごかったですね。

嘘みたいに超一流のスタッフの方々が集まってくださったんです。カメラマンに江原祥二さん、照明に杉本崇さん、美術に林田裕至さん、衣裳デザイナーに小川久美子さんと、もう日本の映画界オールスターみたいな方々なんですよ。

ーー名だたる映画作品に携わってきた豪華メンバー陣ですね。

最初はみなさんこの座組を”大丈夫かな?”と思っていたと思うんです。でも、このチャレンジングな企画をとにかく面白がってくれた。何より誰も現場で遠慮しなかったし、常に提案をしてくださった。

僕たちが何も言わなくても、想像を遥かに超えるような画作りをセッティングしてくださって、本当に助けられまくりました。”やっぱり一流って、すごいな”って痛感しました。準備段階って、俳優だけをやっていると見ないじゃないですか。こうやってゼロからイチになるんだっていう感動を味わいましたね。

ーー確かに、今回のドラマシリーズは毎回映画並みのクオリティーですよね。予算も相当かかったのでは?

予算的に「これ以上は無理だよ」と言われることもありました。僕の仕事は、デイヴやスタッフのクリエイティブを通すことだったので、”わかるけど、じゃぁこれを削って、ここにお金を使いたい”っていう動きはしましたね。

林田さんの作ったセットとかとんでもないですから(笑)。僕たち家族が住む一軒家、あの日本家屋を建てたんです。あれはすごかった。本当に人が住めますからね。

プロデューサー兼俳優として

ーー今回は共同エグゼクティブ・プロデューサーも兼ねられています。俳優としてだけ参加する撮影現場と比べて関わり方の変化はありましたか?

今回は役者の皆さんが、どれだけ居心地よい環境で仕事ができるかっていうことを一番気にしました。

自分たちが、どれだけ頑張って作った脚本でも、”これは動けない”とか”これではちょっと会話ができない”っていう状況って、やっぱり生まれるんです。どんな完璧な脚本でもそうなんです。僕は現場レベルでそういうことを経験しているから、皆さんが迷っているようなら、すぐ飛んでいきました。

ーー原案を練り上げ、また主演もこなすというのも初めての経験だと思います。演じるときに、今までとは違う感情が生まれましたか?

当初は、自分が原案を作った作品に主役として関わるのは難しいだろうなと思ったんですよ。実際、演じてみると、原案に携わったこともあって作品自体への理解はすごくあるから、迷うことはなかったです。現場でデイヴへ提案もできたし、編集段階で色々試したり、作品を理解しているからこそ出来たこともいっぱいあった。

ただ次は自分が役者として参加しないで、プロデューサーだけに専念するっていうのも将来的にやりたいな、と思っています。

ーー今後、主演兼監督というチャレンジしたいとも思いますか?

主演兼監督は僕にはできないと思いました。付き合いのある監督たちは「次は撮れよ」って言うんですよ。1話でもいいからって。でも無理ですね。自分の準備ができなくなっちゃうので、どっちも疎かになっちゃう。出演しないで監督だけだったらできるかもしれないですけど、それにはまだ経験値が足りていない。

経験を経て得たのはシンプルな気持ち

ーーインタビューで、見どころを聞かれると思いますが、今作ではプロデューサーの目線と主演の目線で観てほしいポイントに違いはありますか?

ひとつの作品を立ち上げから編集まで付き合って思ったのは、いろんな視点があるということです。このインタビューもそうですけど、いろんな人から初めての意見を聞くことによって、いろんな楽しみ方があっていいと思えるんです。

以前は、ここを観てほしいというものがあったんですけど、いまは「ただ面白かった」って言ってくれればいい。1話から8話までを全部観て、その人の娯楽の一部になってさえいれば”どう受け取られても別にいいや”という結論に至りました。

また観たいって言ってくれる人もいたり、このキャラクターが好きだったって人に話してくれたり、忍者っていうものに興味を持ったり、日本に興味を持ったりというきっかけになれば、僕たちがこのドラマを作った意味はあるのかな。今回の経験を経てそういうシンプルな気持ちになりました。

ーー最近、賀来さんだけじゃなく、俳優がプロデュースする映像作品が増えてきたと思います。こういう流れ、動きについてどう受け止められていますか?

単純に”もっとやればいいのにな”って思いますね。やっちゃいけないことじゃないし。やりたい人もいるだろうけど、難しい状況だとは思うんですけどね。ただ、プロデューサーじゃなく、俳優がアイデアを出すことで、日本から出てくる作品のレンジは間違いなく広がると思うんです。

ーー先ほど次は製作側に徹してみたいという話も出ました。次回はどんな作品を企画したいですか?

内緒です(笑)。

取材・⽂ / 小倉靖史
撮影 / 曽我美芽

スタイリスト:小林新/UM
ヘアメイク:西岡達也/leinwand

作品情報 Netflixシリーズ「忍びの家 House of Ninjas」

歴史の節目に幾度となく存在してきた‟忍び”が今もなお、この日本社会で秘密裏に任務を請け負っていたとしたら‥‥。現代の日本を舞台に、過去のとある任務をきっかけに忍びであることを捨てた最後の忍び一家・俵家が、国家を揺るがす史上最大の危機と対峙していく。

監督:デイヴ・ボイル、瀧本智行、村尾嘉昭

原案:賀来賢人、村尾嘉昭、今井隆文

出演:賀来賢人、江口洋介、木村多江、高良健吾、蒔田彩珠、吉岡里帆、宮本信子、田口トモロヲ、柄本時生、嶋田久作、ピエール瀧、筒井真理子、番家天嵩

Netflixにて世界独占配信中

公式サイト netflix.com/jp/title/81465101