WOWOWプライム「有村架純の撮休」(土曜0時)が面白い。売れっ子女優・有村架純がある日ふいに手に入れた撮休をどう過ごすか。8パターンの妄想撮休を、ベテランから新鋭まで様々な脚本家と監督の顔合わせで描く。4月6日(月)現在、第3話まで放送されていて、見たら3作とも満足度が高かった。

第1話「ただいまの後に」(比嘉さくら脚本/是枝裕和監督)では、有村架純が撮休で実家に帰るところからはじまる。黒づくめの服を来て実家の駅に降り立つと母(風吹ジュン)が迎えに来る。関西弁で話す有村架純。ゆったり地元の街を母とふたりで歩き、買い物をする。実家のトイレットペーパーはシングルという質素さ。部屋には「ビリギャル」ほか有村架純の出演作のポスターが貼ってある。

母子ふたりの時間にふらりと訪れる若い男(満島真之介)。この男と母の意外な関係。有村架純の真骨頂は、一人娘として母にどこか甘えているときと、この男に出会ったときと、真実を知ったときの変化。そのニュアンスを是枝監督は淡々と撮っていく。

それにしても、有村架純は里帰りが似合う。朝ドラ「ひよっこ」(NHK)でも東京に出稼ぎに出たあと、たまに地元・茨城に帰るエピソードがなんともまったりしていて良かったのだ。有村架純はメリハリある芝居も巧いけれど(「SPEC」の雅ちゃんとか)、少し力を抜いた感じがすこぶるいい。すなわちこの「撮休」という企画は彼女にピッタリな気がする。とりわけオープニングのブルーバックの前でぼーっとしている表情がいままで見たことのない顔で心惹かれる(OPと予告は星野源の音楽ビデオや「忘却のサチコ」などの演出を手掛ける山岸聖太が担当。山崎は4、8話の監督も)。

「ひよっこ」といえば第2話「女ともだち」(ペヤンヌマキ脚本/今泉力哉監督)。架純の親友に伊藤沙莉が扮している。伊藤沙莉は「ひよっこ」でヒロインの幼馴染の妻役だった。ただ、有村も伊藤も「ひよっこ」のイメージとは違う役柄。そこがやっぱり俳優の面白さである。有村は、「ひよっこ」で演じた役ほど純朴な娘役ではなく、芸能界を生き抜いてきて冷めた視点をもっているふうに描かれている。世の男性が自分に求めることに諦念気味で、親友の同僚(若葉竜也)の架純に対する態度にも苛立ってしまうという、いま、何かと問われがちなセクハラ的視点をユーモラスに描いているが、そこが主眼ではなく、有村架純と伊藤沙莉の演じる親友の、変わらない友情が大事なんだろうなあと思う。適度に甘く、でも、どこかクールな部分もあって。これくらいの距離の友達がいいなあと感じた。ふたりの部屋の美術もいい感じなのである。脚本は、女子の本音を鋭く描くペヤンヌマキ、監督は「愛がなんだ」が大ヒット、女子の共感を最高に獲得する今泉力哉。

さてここで念のため書いておくと、「撮休」は有村架純のドキュメンタリーではないし、本当の撮休のオフショット映像でもない。あくまで、架空の物語である。だから、有村架純として出ている有村架純は、自分の素っぽさを演じている。兵庫出身であることは本当なので関西弁になるところとかはものすごくリアルで、本当にこんな感じなのかなと思わせるので、ふつうの演技を見ているときよりドキドキする。毎回、冒頭に出てくるマネージャー(野間口徹)とプロデューサー(黒田大輔)の業界あるある会話によって、ほんとうにこういうことが起こっているのかも……とも思わせる。

第3話「人間ドッグ」(砂田麻美脚本/是枝裕和監督)は有村架純が人間ドッグで腹部に器械を当てられている場面が白眉。

サブタイトル通り、有村架純が人間ドッグを受ける話。病院でバッタリ出会う、昔、仕事をしたことのある映画監督をリリー・フランキーがいかにもな感じに演じていて可笑しいし、対する架純のリアクションもまたとてもいい。さらに担当の検査技師(笠松将)が地元の友人というかちょっと架純とワケありな人らしく、是枝監督は第1話に引き続いて言葉にしないでお互いが間合いをはかっている秘密めいた心理劇を静かに、静かにスリリングに描く。有村架純がこんなに色っぽく見える作品はこれまでなかった気がする。そして、人間とは、びしっと作り込んでいるときよりも、素に見えるほど、ほのかに毒が滲んで魅力的になるようにも思えた。脚本は父の死を追った「エンディングノート」やジブリを追った「夢と狂気の王国」などドキュメンタリーに定評のある砂田麻美。

「撮休」は全8回。これからの放送は、4月10日放送の第4話「死ぬほど寝てやろう」(篠原誠脚本 山岸聖太監督 出演・柳楽優弥)、17日放送の第5話「ふた」(ふじきみつ彦脚本 横浜聡子監督 出演・蒼井旬、水野哲志)、24日放送の第6話「好きだから不安」(今泉力哉監督脚本 出演・渡辺大和、徳永えり)、5月1日放送の第7話「母になる」(津野愛脚本、監督 出演・福島星蘭)、5月8日放送の第8話「バッティングセンターで待ちわびるのは」(三浦直之脚本 山岸聖太監督 出演・前野健太 田村健太郎)。

脚本、監督のみならず、ゲスト俳優も毎回、ユニークな才能ぞろい。これだけ隙のない面子による作品にもかかわらず、休日感にあふれ、見ていると呼吸が楽になる。

再放送などもあるので詳細はWOWOWの公式サイトで確認を。

文・木俣冬

放送情報 『 有村架純の撮休』

女優、有村架純の架空の休日を描く8つのストーリー。突然撮影が休みになったら、女優はどう過ごすのだろうか? そんな妄想の世界を気鋭の監督・脚本家たちが描く異色ドラマ。
監督:是枝裕和、今泉力哉、山岸聖太、横浜聡子、津野愛
脚本:今泉力哉、砂田麻美、篠原誠、ペヤンヌマキ、津野愛、比嘉さくら
出演:有村架純 柳楽優弥 満島真之介 伊藤沙莉 渡辺大知 笠松将 前野健太 リリー・フランキー 風吹ジュン ほか
音楽:七尾旅人
主題歌:竹内アンナ「RIDE ON WEEKEND」(テイチクエンタテインメント・インペリアルレコード)
制作協力:ホリプロ
製作:「有村架純の撮休」製作委員会
毎週金曜深夜0時〜(全8話)第1話無料放送
WOWOWメンバーズオンデマンドでは、各話終了後 見逃し配信
TSUTAYAプレミアムでは、各話終了後 配信スタート
©「有村架純の撮休」製作委員会
特設サイト:http://www.wowow.co.jp/drama/satsukyu/