1.海外勤務をする海外駐在員とは

本稿で紹介する海外駐在員とは、どういった働き方のことを指すのか。

分かりやすく言えば、海外駐在員とは日本の企業から海外へと赴任している会社員のことを指す。ここでの日本企業とは所在地が日本の企業であり、外資系企業も含む。業種は問わず、海外への転勤であれば海外駐在員となる。総合商社や大手メーカー企業に多く、基本的には資本が潤沢な大企業で見られる働き方だ。

海外駐在員となれる業種

それでは、海外での転勤が可能な業種にはどのようなものがあるだろうか。期待できる業種としては大きく分けて次の3つがある。

  • 商社
  • メーカー
  • 銀行(金融業)

特に総合商社では国内にいながら海外顧客やパートナーと連携を取る場合や、出張ベースで海外を訪れて仕事を行う場合。そして海外赴任する場合など、複数のパターンがある。海外駐在員ではなくともグローバルに働くチャンスは広がっているため、優先して検討したい業界となるだろう。

2.海外駐在員(海外勤務)になるためには

海外駐在員となるには、どういったスキルが求められるのであろうか。ひとつに語学力、とりわけ英語には秀でている必要がある。

出典:TOEIC公式サイト

TOEIC公式サイトに掲載されている、「上場企業における英語活用実態調査」によると、上場企業の国際部門の社員が期待される点数は660〜840点と記載されている。また、上記図の「コミュニケーション能力レベル」として、外語コミュニケーションの素地が備わっているのは730点以上とされている。

このことから、海外勤務を目標として英語学習を行う場合は“TOEIC730点以上”を一つの目安として考えるのが良いだろう。

また、海外駐在員となるためには「自立して仕事を行えるスキル(管理職スキル)」も必要だと考えられる。海外駐在員での赴任は、現地スタッフを束ねる管理職としての採用がメイン。そのため現地スタッフに指示を出すスキルが求められる。指示を待つスタンスでは到底務まらないのだ。

英語力と自主的な動きができるスキル、さらには管理職としての経験が海外駐在員として必須となる。

3.海外駐在員(海外勤務)の年収相場

海外駐在員として働くにあたり、最も気になるのは給与面ではないだろうか。ここでは、基本的な給与と併せて福利厚生などの特別手当を見ていこう。なお、ここで紹介しているのはあくまで一例だ。所属する企業やポジション、そして駐在する国によっても異なるため、参考例として見てほしい。

3-1.年収(給与)の待遇について

年収は日本での金額よりも1.5倍程度が相場とされている。加えて、海外で支払う税金は企業が負担する場合が多いため、手取りとしては1.8倍まで跳ね上がるケースが多いようだ。

国によっては日本よりも多くの税金が徴収される。ただし、所得税や住民税などの大きなウェイトを占める税金は所属企業が支払うことが多いため、日本で引かれていたそれらの税金が引かれなくなるようなイメージとなる。

さらに、企業によっては現地法人から現地通貨で、そして日本法人から日本円で同時に振り込まれる場合もある。現地通貨は現地での生活費として支払われるので、日本円での振込には手を付けず、貯蓄に回せるケースも少なくないようだ。

このことから、給与面のメリットは比較的大きいと考えて良いだろう。

3-2.福利厚生の待遇について

さらに、海外駐在員は福利厚生が充実していることも大きな特徴だ。具体的には以下のような福利厚生を受けることができる。

住宅手当・家賃手当

勤務地での家賃は基本的に企業が全額負担する。発展途上国などの家賃が安い国ではちょっとした豪邸に住めることもあるようだ。ただし、一定の金額を超えると自己負担になるケースもある。

帰国時の交通費

交通費は企業が全額負担する。また、年に何度かの一時帰国の際の交通費も企業が負担するケースが多いようだ。ただし、冠婚葬祭などの自己都合で帰国する際は基本的に自己負担となるので注意が必要。

子どもの養育費

子どもがいる場合は、インターナショナルスクールなどに通う際の学費を企業が負担するケースがある。一般的には3歳以降の学費となるようだ。

医療費・治療費

企業負担で医療保険に加入することができる。そのため、軽度の風邪から高額な医療費まで全額非負担で利用することが可能。ただし国によっては歯の治療など、例外はあるようだ。

危険地域手当・ハードシップ手当

中東や南米の発展途上国、また中国の奥地など危険地域とされる場所への駐在では別途手当が支払われる。

上記もろもろの福利厚生を踏まえると、30代で1,000万、2,000万といった年収は十分に現実的な数字であると言える。繰り返しになるが、企業や駐在国によって年収や手当は大きく開きがある。ただし、役職以上の給与的待遇が得られるのはほぼ間違いないだろう。

4.30代が海外勤務で得られるメリット

給与的なメリットは上で触れた通りであるが、海外勤務にはその他にも国内での勤務では得がたい大きなメリットがある。続いては、特に30代で得ることができる海外勤務のメリットについて解説していこう。

メリット1.語学力(国際感覚)の向上

既に英語に秀でている人が担当するであろう海外駐在員だが、実際に勤務を経験することで語学力が飛躍的に向上するだろう。日本で学習した語学ではなく、現地での業務、さらには生活を通じて得たネイティブな語学は海外勤務でなければ、なかなか得ることのできないスキル。在住期間は否が応でも英語(外国語)を使わなければならないので、学習意欲も高く維持できるはずだ。

また、語学力が向上することと同時に国際的な感覚を掴むこともできる。日本以外の異なる視点を身につけることで、今後のキャリア形成において優位となる価値観や考え方を吸収することができるのも大きなメリットだ。

メリット2.マネジメント能力の向上

前述の通り、海外駐在員として赴任する際は管理職・マネージャー職としてのポジションで働くケースが多くなる。海外にある会社で現地スタッフをまとめ上げた経験は、日本に戻って同様の業務を任される際にも必ず活かすことができる。

現地のスタッフと仕事をしていくには、言語の壁はもちろんのこと、国民性から来る価値観の壁もある。試行錯誤を行う中で得たマネジメントスキルは、同世代のマネージャー陣と比較しても秀でるものとなるであろう。

海外に赴任されることは、大企業では出世コースのひとつとして考えられている。将来的に部長、役員と役職が上がっていくにあたり、このようなマネジメントスキルは必然的に求められることでもあるのだ。

メリット3.現地国での人脈形成

海外での勤務では、日本ではなかなか得ることができなグローバルな人脈を築くことができる。また、人脈が築きやすい環境はある程度できていると考えられる。

例えば、日本人の価値観、働き方、文化などに関心度の高い外国人は一定数いるものだ。また、日本でビジネス展開をしたいと考えている外国人も少なくないだろう。そのため、パーティーや勉強会などの会社以外の社交的な集まりに出席すれば、少なからず声をかけてもらえる可能性が高いのだ。

このことからも、比較的人脈は作りやすい環境で仕事ができると考えられる。

メリット4.今後のキャリア構築に有利

なにより、海外勤務は今後のキャリア形成において大きな優位性を発揮する。

30代を経て、40代、そして50代となった際に企業から求められる人材にはいくつかのパターンがある。それが「マネジメント経験者」「特定のスキルに特化した人材」そして「海外勤務経験者」だ。

海外勤務を経験することで「マネジメント経験者」と「海外勤務経験者」という大きなカードを一度に手に入れることができる。海外勤務経験者は上で触れた語学力やマネジメント経験の他にも、見知らぬ土地で業務を遂行したというメンタル面の強さ・適応能力も評価ポイントとなる。

単なるスキルだけではなく人間性としても評価されるため、人材価値を高める経験としてはうってつけのキャリアとなるのだ。

5.海外勤務を狙うなら「転職エージェント」を利用する

このようにメリットが豊富な海外勤務だが、その分求人倍率は高くなるだろう。また、そもそも海外駐在を行っているような大企業ともなると競争率は相当なもの。自分で該当企業を調べ、直接応募するのもひとつの手である。しかしながら、より採用の確度をあげたいのであれば「転職エージェント」を利用するべきだ。

出典:DODAエージェントサービス

転職エージェントとは、担当制の転職支援サービス。登録することでエージェントと呼ばれる担当者が付き、マンツーマンで転職をサポートしてくれるのだ。具体的には、以下のようなサポートを受けることができる。

・現在の市場価値やキャリアプランへのアドバイス
・キャリアプランや希望に応じた求人の紹介
・履歴書や職務経歴書など、応募書類の添削
・面接内容のアドバイスや模擬面接の実施
・企業との面接日程の調整
・面接後に企業担当者へのフォローやプッシュ
・内定後の給与交渉、など

特に「キャリアプランや希望に応じた求人の紹介」では自分一人では見つけ出すことのできなかった海外勤務が可能な企業を紹介してもらうことができる。また、面接や応募書類のアドバイスや面接後のフォロー・プッシュなどにより、選考の通過率も格段にアップ。倍率の高い企業へ転職を希望している人にこそ利用してもらいたいサービスだ。

ただし、転職エージェントはマンツーマンの担当制ということもあり、担当になったエージェントのスキルや熱意が低いというリスクがある。その問題を解決するために、転職エージェントの複数登録を推奨している。

転職求人サイト大手の「リクナビNEXT」の調査によると、エージェント利用者のうち、転職活動を成功させた人は平均して4社以上のエージェントを利用していたという結果が出ている。

以下で紹介する転職エージェントサービス全てに登録し、面談やメールのやり取りを経て、スキルや熱意が高い、あるいは相性が良いと感じたエージェントを2,3社に絞り込んで利用するのが転職成功の近道なのだ。

5-1.リクルートエージェント

出典:リクルートエージェント

転職エージェント業界最大手のリクルートエージェントは、業界で転職実績をあげている転職エージェント会社だ。求人数も業界最大規模で、より多くの求人を知ることができる。海外勤務を目標とする場合は倍率が高く、熾烈な選考となるだろう。そのため、優良な求人により多く応募することが大切となる。

業界トップの求人数を誇るリクルートエージェントは、その点でアドバンテージがある。また、老舗の企業である大企業からの信頼も厚く、大手企業も多くの求人を出していることが予想されるのだ。海外勤務での転職はもちろんのこと、転職を検討しているすべての人が登録するべき転職エージェントのひとつである。

>リクルートエージェントの公式サイトはこちら

5-2.JACリクルートメント

出典:JACリクルートメント

30代で海外勤務を検討している場合、すでに一定の実績やキャリアがある人が多いのではないだろうか。そんな人には、年収500万円を超えるミドル層の転職に強いJACリクルートメントの利用をおすすめする。

JACリクルートメントは特に外資系企業の求人に特化している。エージェントの中にはネイティブのスタッフも在籍し、英文の応募書類や英語での面談のサポートを行ってくれることも。外資系企業から海外勤務を叶えるルートも十分に考えられる。一定の年収がある人は、一度相談してみるのが良いだろう。

>JACリクルートメントの公式サイトはこちら

5-3.Spring転職エージェント(旧:Adeco(アデコ))

出典:Spring転職エージェント

スイスに本社を持つアデコグループは世界60カ国、5,000以上の拠点を持つ世界最大の人材紹介会社。そんなアデコグループの日本法人としてエージェント事業を展開しているのがSpring転職エージェントだ。アデコの持つ世界規模のネットワークを活用し、外資系企業だけでなく現地採用の可能性も広げることができる。

日本ではあまり名前を聞かないかもしれないが、30年以上の歴史を持つ老舗エージェントのひとつ。企業側からの信頼もあるので、優良な案件が期待できるだろう。

>Spring転職エージェント公式サイトはこちら

5-4.ランスタッド

出典:ランスタッド

Spring転職エージェントと並び世界に拠点を持つのがオランダ発の人材紹介会社ランスタッドだ。世界約40カ国に拠点を持ち、日本国内だけでも50箇所以上の拠点がある。コンサルタントの質が良いことでも知られ、株式会社リクルートキャリアが発表した「転職エージェントランキング(2016年秋)」では個人総合1位を獲得しているほど。

海外の拠点が多いため、Spring転職エージェント同様に外資系企業や現地採用企業の求人を知ることができると推測される。Spring転職エージェントとあわせて登録したいエージェントだ。

>ランスタッド公式サイトはこちら

5-5.ビズリーチ

出典:ビズリーチ

エグゼクティブ層向けの転職支援サービスであるビズリーチは、これまで紹介してきた転職エージェントと若干異なり、スカウトでの採用を獲得することができる。自身のレジュメ(職務経歴書)などをデータベース上に公開することで、人材紹介会社のエージェント(ヘッドハンター)や、企業の人事担当者から直接アプローチを受けることができるのだ。

大手企業がグローバルな人材をターゲットとして探していることもあるので、縁があれば海外勤務での転職に直結している転職支援サービスとなるかもしれない。ただ、あくまでも受動的な転職方法になるため、他の転職エージェントサービスとの併用を強く推奨している。

>BIZREACH(ビズリーチ)の公式サイトはこちら

6.日本人が海外勤務をしている国は?

外務省が発表している海外在留邦人数調査統計(平成29年)によると、現在133万人強が海外に在留しており、日系企業の拠点数が多い国は以下の通り。

順位国名日系企業拠点数前年比
1位中国32,313-3.2%
2位アメリカ8,422+7.3%
3位インド4,590+6.4%
4位ドイツ1,811+1.9%
5位インドネシア1,810 +6.7%

特に中国・アメリカ・インドに占める割合が高く、日本企業の進出先として勢いのある国が伺える。

中国は国内総生産でもアメリカに次ぐ世界第2位の経済発展を遂げている。市場規模も大きいことから進出先として拡大の一途を辿った結果、現在の拠点数があるものと考えられる。また、中国は現地での人件費も安く、オフショア開発地としても重用されてきた。それに伴い、海外駐在員も拡大しているものと考えられる。

【備考】日本人が住みやすい国は?

人数はさておき、どういった国が日本人の駐在先として働きやすいのだろうか。最後に、働きやすい環境が整っている国をいくつか紹介する。

タイ

物価が安いタイは金銭面でも働きやすさの恩恵をうけることができるだろう。食事についてもタイ料理だけでなく、日本食も味覚に合うものが多く、困ることが少ない。意欲さえあれば英語だけでなくタイ語も学べる点も嬉しいポイントと言える。

シンガポール

物価がやや高いものの、治安がよく、気候も安定した働きやすい環境が整っている。また、多民族・他宗教・多文化国家とも呼ばれるシンガポールでは、自分の能動的な動き次第ではタイ以上に多国籍の人々と交流をすることができるだろう。

アメリカ

都心であれば、アメリカでの駐在も良いとされている。自立性を重んじるアメリカの国民性に触れることができるため、決断力や競争社会で生き残る術を学ぶことができるだろう。ただし、田舎の工場近辺に赴任する場合は、あまり良い待遇は望めないケースもあるようだ。

その他発展途上国

意外かもしれないが、発展途上国への駐在はメリットが多いと言われている。例えば、家賃を考えてみよう。

発展途上国は物価が安い傾向にあるため、家賃補助の金額が同等であれば、先進国よりも遥かにグレードの高いホテルや住居に住むことができる。もちろん、衣食住の「住」だけでなく「衣」や「食」も安価に手に入る。危険地域では別途手当が出る企業もあるため、優雅な暮らしをしつつも多額の貯蓄をすることができるのだ。

また、多くの場合先進国よりも発展途上国のほうが、人件費が安いこともあってか高いポジションでチームを任せてもらえる可能性が高くなる。先進国での赴任では現地の上司の指示のもと、働くケースが多いかもしれないが、途上国ではその限りではない。途上国では、大きな成果と大きなチャレンジに立ち向かう機会を得ることができるのだ。

7.まとめ

メリットの多い30代での海外勤務だが、とりわけキャリア構築に与える影響は多大だろう。一定の期間を海外で経験を積むことで、人生の選択肢は大きく広がるに違いない。

もちろん、悪いところに目を向ければ相応の不安が生まれる。言葉の壁や国民性の違いなどもあり、苦労も絶えないだろう。しかしながら、赴任当初からうまくいく方のほうが稀なのではないだろうか。苦労があるからこそ、大きな成長がその先にあるのだ。

30代という忍耐と精神力が成熟した時期に、辛くともその先の未来が明るい海外企業への転職を検討してはいかがだろうか。