新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、電車から自転車に通勤手段に切り替えたという声を耳にする。通勤電車での感染リスクを下げるため、運動不足の解消、あるいは、おしゃれで高性能なe-bike(イーバイク)の登場が、後押ししているのかもしれない。一方で関心はあるけれど、会社までの距離や体力の不安から、二の足を踏んでいる人もいるはずだ。日頃からロードバイクが趣味の自転車乗りでなければ、自分がどれくらい走れるか見当もつかない。それに毎日、汗だくになってまで自転車で通勤したいとは思わないだろう。そこでcannondale(キャノンデール)の最新グラベルロードeバイク「Topstone Neo Carbon Lefty 3」を手配し、運動習慣ゼロの筆者が片道約15kmの自転車通勤に挑戦した。eバイクなら40代でも自転車通勤ができるのか? 自転車通勤を快適にしてくれるおすすめ最新ウェアやギアとともに、eバイクの乗り心地を検証する。

グラベルロードバイクの先端技術と電動アシストが融合したeバイク

走行の様子を語る前に、まずは今回、試乗したeバイクを紹介しておこう。cannondale(キャノンデール)は1971年にアメリカで生まれた自転車メーカー。1980年代には他社に先駆けてマウンテンバイクを発売したことでも知られる。また、ユニークな設計や独自のテクノロジーを重んじる企業で、製品はもちろん、そのフィロソフィーに惚れ込む自転車愛好家も多い。

試乗車である「Topstone Neo Carbon Lefty 3」のフロントサスペンションフォークを見れば、cannondaleの独自性の一端が伝わるだろう。通常はタイヤを挟み込むように2本あるフロントサスペンションが1本になっているのだ。実は2本よりも剛性が強くなり、しかも1本少ない分、軽量だという。フロントが軽くなれば、ハンドル操作がしやすくなるメリットも生まれる。

1本のサスペンションフォークは、性能はもちろん、デザイン面でのインパクトが強い

なお、「Topstone Neo Carbon Lefty 3」のようなロードバイクのフォルムに、太いタイヤを装着した自転車はグラベルロードバイクと呼ばれる。ダート(砂利道)と舗装された道の両方を走行することを想定していて、悪路での制動性能に秀でたディスクブレーキを搭載しているのが特徴だ。

筆者の自宅は、東急池上線の「雪が谷大塚」が最寄り駅だ。会社のある新国立競技場近郊へは、五反田で山手線に乗り換え、代々木で下車。そこから総武線で千駄ヶ谷まで乗車する。通勤時間はドアtoドアで1時間ほどだろうか。それがeバイク通勤に変更すると、どれくらいの所要時間になるのか? 気になるポイントだ。手始めにGoogleでルート検索してみると、1時間弱と出た。計算上は自転車のほうが若干、早いことになる。ただ、これは起伏を無視した直線的なルートでの話だ。試しに自転車用のルート検索でも走行路を割り出してみると、北上し、国道246号線を通って、千駄ヶ谷を目指すルートを推奨された。体力に自信がないビギナーは、間違いなく国道246号線経由を選ぶべきだが、eバイクの性能を体感するためにも、険しい道を選んだほうがいいだろう。今回はGoogle Mapに従って、直線的なルートを進むことにした。

炎天下の自転車通勤は流石に厳しい。真夏は早朝から気温が上昇することもあるので要注意

なお、1点お断りしておくと、初日は検証できない事態に陥ってしまった。通常の出勤と同じ時刻に自宅を出発したのだが、その日は30度を超える猛暑。朝からぐんぐんと気温があがり、強い日差しと暑さで走行どころではなくなってしまったのだ。自転車通勤は時間帯も考慮すべきという学びを得ることになった。気を取り直し、翌朝は日の出とともに自宅を出た。

一度体験するともう戻れない素人には電動アシストが不可欠

早朝に出発すれば、交通量も少なく、気持ちよく走行できるというメリットもある

AM5:00。東から昇る日差しは昨日とは違い、優しい。まずは、電動アシストをオフにして自転車としての乗り心地を試してみる。ひと漕ぎで、性能の高さが素人にもわかるほど、足取りが軽い。普段、乗っているママチャリとは大違いだ。それもそのはず、Topstoneシリーズのフレームは、リアの三角形の部分がコンパクトに設計されていて、自転車を漕ぐ力がロスしないように計算されているとか。だから、軽く踏み込むだけで、滑るように進んでいくのだ。

続いて、電動アシストをオンにする。ディスプレイはボタンが大きく、操作しやすいのが特徴だ。最も出力の弱い「ECO」に入れ、「TOUR」「SPORT」「TURBO」と出力を上げていく。自宅からしばらく走行する中原街道はアップダウンを繰り返す。電動アシストの性能が試される。

ハンドルを支えながらでも、操作できるようボタンの角度や形状が工夫されている

「Topstone Neo Carbon Lefty 3」には、ボッシュ社の「Bosch Performance Line CX 250W」というドライブユニットが搭載されている。ドライブユニットは電動アシストの心臓部であるモーターのこと。「Bosch Performance Line CX 250W」は「Topstone Neo Carbon Lefty 3」の無駄のないフレームに収まるほど、コンパクトに設計されているが、最大駆動トルクは75Nmと非常にパワフルだ。脚力が要求される坂道発進でも、軽くペダルを踏むだけで、凄まじい推進力が発生する。馬など、生きた動物に跨り、操っているような錯覚さえ覚える。自力で坂を登っているという感覚がゼロになるのだ。自転車通勤をこれからはじめるビギナーにとって、これほど心強いアシストはないだろう。

コンパクトなボディからは想像できないパワーを誇るボッシュのドライブユニット

衝撃を吸収するサスペンションが疲れや不安定さを軽減してくれる

五反田から目黒に向かう道は、再び登り坂だ。最大出力の「TURBO」にして、一気に登り切る。その後、プラチナ通りに折れ、外苑西通りを目指す。ここからは長い下り坂。手元のディスプレイには走行中に速度が表示される仕様になっているが、時速30kmを示していた。道路交通法で、電動アシストが作動できる速度は時速24kmまでになっているが、時速24kmを超えたのは、この長い下り坂くらいだった。

また、「Topstone Neo Carbon Lefty 3」には、「KingPinサスペンション」という非常に軽いリアサスペンションが搭載されている。最大30mmというストローク量で衝撃を吸収すると同時に、路面に吸い付くようなトラクションを実現している。ハイスピードな走行に慣れていない素人にとっては、自転車をコントロールさせやすく、サスペンションのありがたみを感じる。

超軽量のリアサスペンション「KingPinサスペンション」

外苑西通りに入り、西麻布を通過。青山通りの手前に最後の登りがある。夢中で走ってきたため、どれくらいの時間、走ってきたのか把握していなかったが、まだ40分程度だった。予想よりもかなり早い。体力も余裕があり、再び「TURBO」で駆け上がる。思えばどんな傾斜が厳しいところでも、一度も立ち漕ぎをすることがなかった。多少息が切れるものの、平地とほとんどペダルの重さが変わらない。

電車通勤のストレスを考えると自転車通勤の解放感はやはり魅力的

青山通りを越えると後は下りだけだ。ほどなく、新国立競技場が見えてきた。一般的に自転車通勤の距離の目安は15kmだと言われている。道路事情にもよるが、45分〜60分程度の走行時間だ。今回のルートは14kmで、かかった時間はおよそ50分だった。体力的にはまだまだ走れるという感覚だ。この余裕はeバイクでの挑戦だったということが大きいだろう。通常のロードバイクだったら平坦な道を選ばないと、相当きつかったはずだ。なお、「Topstone Neo Carbon Lefty 3」はフル充電で、最大170km走行できるという。走行距離によっては週に1度の充電でも十分かもしれない。

40代で初めての自転車通勤になった今回の検証。運動習慣がないだけに、完走できたとしても、疲労でその日の仕事に支障が出るのでは?という不安もあった。ただ、それは完全に杞憂だったと断言できるだろう。幾度も通過する登り坂でも、電動アシストのサポートで快適に走ることができた。登りという苦痛がゼロになることで、自転車に乗ったときに感じる、爽快感だけを体験できるeバイクは極めて現実的な選択肢だと感じた。多少高いが一生物の買い物と考えれば、悪くない。

cannondale Topstone Neo Carbon Lefty 3
682,000円

自転車通勤を想定した機能的なセットアップもある

自転車通勤で悩ましいのは服装だ。自転車に乗ることを考えれば、漕ぎやすさ、動きやすさを重視したサイクルウェアになる。ただ、カジュアルすぎるためオフィスワークには適さない。そこで近年、ファッションブランドから自転車通勤を想定した機能的なセットアップが続々と登場している。ABAHOUSEと老舗サイクルウェアブランド「パールイズミ」によるコラボアイテムもそのひとつ。サイクルコミュニティの「CC TOKYO」が監修に加わっており、機能性とファッション性を両立している。素材には伸縮性に優れた2WAYストレッチタイプの生地を使い、耐摩耗性や高い引き裂き強度を持つコーデュラの糸を採用することで、撥水性とウォッシャブル性能を併せ持ったセットアップだ。

ジャケット3万3000円、パンツ1万6500円/ともにアバハウス(アバハウス 池袋パルコ店TEL:03-3987-8025)、シャツ8800円、バッグ2万9700円/ともにブリーフィング&ニューバランス(ブリーフィング 表参道ヒルズ店TEL:03-6459-2448)、サングラス2万900円/ハーレー×アイヴォル(ハーレーTEL:03-6434-9851)、時計4万3890円/スント(スントURL: https://www.suunto.com/ja-jp/Support/customer-support/)、靴3万8500円/パントフォラ・ドーロ(カメイ・プロアクトTEL:03-6450-1515)、その他は私物
自転車に跨ったまま小物の出し入れがしやすいように、背中にポケットが
走行中に車や自転車が弾いた小石が飛んでくることもあり、サングラスは必ず着用したい
アッパーはドレッシーなレザー仕様だが、ソールは滑りにくいパントフォラ・ドーロのスニーカー
SUUNTO 5 PEAKなら時刻の確認はもちろん、GPSによるナビゲーションや走行ログの記録もできる
BRIEFINGとNew Balanceによる2wayバッグ。自転車乗り用に最適化されている

取材・文=梅中伸介(verb)

撮影=森 カズシゲ

スタイリング=稲田一生