東京にある個性的な地ビールブルワリーを訪問。醸造所を見学しながら、ビール造りにかける思いをインタビュー。併設されたレストランや売店にも立ち寄り、そのブルワリーならではの地ビールの魅力を探る。

今回は、JR中央線・武蔵境駅の高架下にある「26Kブルワリー」を訪れた。

■大人が楽しめる武蔵野市の特産品を造りたい

26Kブルワリーのある建物は武蔵境駅と東小金井駅の高架下にある

JR中央線の「武蔵境駅」と「東小金井駅」の間の高架下には、「ののみち」という回遊歩行空間がある。そこには小さな店が軒を連ね、地域の人たちの集まる場となっている。

「26K(ニロクケー)ブルワリー」は、そんな高架下にある醸造所として、2018年にオープン。たった3坪の小さな醸造所として始まった。運営しているのは、武蔵野市に拠点を置く広告企画会社・株式会社スイベルアンドノットだ。

「当社は、武蔵野市に特化したプロモーションを得意としています。武蔵野市は、吉祥寺を擁していて、住みたい街ランキングでも上位に入る街です。しかし、当初は『武蔵野市といえばこれ』というような特産品はありませんでした。それなら自分たちで造ろうと始まったのが、26Kブルワリー。武蔵野の資源を活用してビールを造っています」と、ビール事業部の平槇駿一さん。

醸造を担当するビール事業部の平槇駿一さん

ビールの原料は、麦芽、ホップ、水。このうち、水は武蔵野の地下水を一部使用。武蔵野に流れる水は、多摩丘陵の森で育まれた地下水が井戸からくみあげられている。さらに武蔵野市内で栽培された生ホップや、副原料として農作物がビールに使われているという。

武蔵野市で育てられたホップは冷凍保存して使用される

「意外に思われるかもしれませんが、武蔵野市には農地があり、かつて武蔵境はトウガラシの産地として知られていました。その取り組みを地元ボランティアの団体・武蔵境活性化委員会が復活させ、そのコラボ企画としてトウガラシを使ったビールも造っています。また、2020年からは、武蔵野市の農家さんの畑3か所を使ってホップの栽培も始めました。収穫や仕込みには武蔵境にキャンパスのある亜細亜大学の学生さんにも協力してもらっています」

ビールが地域をつなぐ媒介となり、それが地域の特産品になる。そうした好循環ができている。最近では、井の頭自然文化園のオリジナルビールの製造も行っている。26Kブルワリーは地域を活性しながら、武蔵野と共に歩んでいる。

■武蔵野の原料を使った、軽い飲み心地のビールを醸造

左から「みんなのレールエール(880円)」「吉祥寺生ホップエール(880円)」「初恋セゾン(880円)」*みんなのレールエールは小売のみの販売

26Kブルワリーでは、常時5種類のビールがブルワリーと同じ施設「Ond」内で販売されている。ビールのラインナップは、誰もが飲みやすく飲み飽きないように苦味をおさえたスタイルが中心。軽い飲み心地のビールやフルーツを使ったビールが多く醸造されている。

●Mr. SAKAI
Style:Spice Ale
ABV:4.5% IBU:26
武蔵境産のトウガラシを使用したレッドエール。モルト(麦)の旨味、優しい甘さの陰に、トウガラシの辛みがほんわりと立ち上がるスパイスビール。辛いのが苦手な人でも楽しめるよう、トウガラシの香ばしさや旨味の感じられるよう設計されている。

●シューティングスター吉★祥★寺
Style:Brut IPA
ABV:6.5% IBU:20
2022年から26Kブルワリーの新たな定番になったBrut IPA。26K史上最大のホップ投入量を誇り、ホップの苦味ではなく爽やかかつジューシーな香りを存分に味わえる。
IPAなのに飲み疲れない、非常にドライな飲み口のBrut IPAは、6.5%のアルコール度数を感じさせない仕上がり。

●みんなのレールエール
Style:Fresh Hop Fruit Ale
ABV:5.5% IBU:26
武蔵野市産生ホップと、宮崎県産へべす果汁を使用した26Kの代表ビール。
軽い飲み口と、さわやかなホップの風味が特徴で、ビールが苦手な人におすすめのビール。武蔵野市内を中心に、瓶でも展開されている。

●吉祥寺生ホップエール
Style: Fresh Hop Ale
ABV:5.0% IBU:26
2022年に吉祥寺の畑で収穫された生ホップを贅沢に使用したクラフトビール。2022年7月上旬に収穫し、鮮度が落ちる間もなくすぐに仕込みへ。生ホップらしいフレッシュな香りと、優しい麦の旨味がしっかりと感じられるビール。

●初恋セゾン
Style:Saison
ABV:4.0% IBU:20
26Kブルワリーで作成したレシピを元に、高円寺・アンドビールさんで特別に醸造した限定ビール。柚子果汁と柚子ピールを大量に投入し、初恋のような甘酸っぱい香りが楽しめる。暑い夏にぴったり、ゴクゴク飲めるフレッシュなビール。

昨年6月から設備を一新

2018年の開業時から3年の時間を経て、26Kブルワリーは2021年6月に設備を一新。それまで冷蔵ストッカーを用いた簡易的な設備だったが、200Lのドイツ製コニカルタンクを導入。品質の安定したビール造りができるようになった。

同時にボトリング設備も導入したことで、今後は流通にのせてボトリングビールを販売していく予定。武蔵境まで行かなくても、26Kブルワリーのビールが購入できるように。新たなファンの獲得につながりそうだ。

■ライトなビールは、カレーやケーキと楽しむべし

OND内のテーブル席
OND内のカウンター席

26Kブルワリーがあるのは、Ondという施設内。Ondには、ビール醸造所以外に、コーヒー焙煎所の4つのショップがある新しいスタイルの場所。ビールにあわせてカレーやデリ、ケーキがボーダーレスに楽しめるのが魅力。

ビアパブではないため、家族で訪れるのもおすすめ。それぞれが好きなものを注文してくつろぎの時間を過ごすことができる。26Kブルワリーのビールは、軽い飲み心地やフルーティーなスタイルが多いので、甘いものやカレーにも合う。

「キーマ&サグ&ポークビンダルの3種がけ」1,480円

なかでもおすすめの組み合わせは、カレー。3種のカレーをかけたスパイスカレーをはじめ、レモンカレーやシーフードホワイトカレーなど辛さをおさえたメニューもある。苦みの利いたビールにも、柑橘系のさわやかなビールにも合う。テラス席もあるので外でいただくこともできる。

今後の展開としては、来年は7月中旬から8月にかけてのホップの収穫体験をするイベントを計画中。ホップはビールにするだけでなく、アルコールが含まれず、お酒が苦手な人や子どもでも楽しめるホップサイダーを販売する予定もある。自分たちの口に入れるものを収穫する経験は食育にもなり、子ども連れにもおすすめだ。

いま、多摩地区は近場の旅行先として注目を集めるエリア。そんな武蔵野市の恵みを使ったビールを家族と一緒にいただけるのが26Kブルワリーの上手な利用の仕方。ビアバーでいただくのとは、ちょっと違うビールの楽しみ方を発見できるかもしれない。

【26Kブルワリー】
住所:東京都武蔵野市境南町3-2-13 Ond内
TEL:0422-38-5500
営業時間:10:00〜21:00
定休日:水曜日
https://26k-brewery.com

取材・文:岡本のぞみ(verb) 撮影:山田大輔

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