冬のバータイムを彩る暖かな空間と気の置けない仲間たち、そして、寒い冬に身も心も温めてくれる一杯の酒。ようこそ芳醇なホットカクテルの世界へ。

心と体を温めるホットカクテルの愉しみ

扉を開けると、木枯らしで冷え切った体が、暖かな空気にふわりと包まれる。そこに待つのは、磨き込まれたバーカウンター。腰を下ろせば、ゆったりとした時間が静かに流れ出す。

そんな冬のバータイムの一杯目、いつものようにキリッと冷えたコールドカクテルから始めるのも良いが、グラスを包む掌と体を芯から温めてくれるホットカクテルも捨てがたい。

「普段、ホットカクテルを嗜まない方も、最初の一杯に選んでみてはいかがでしょう」と話すのは、神楽坂の名店「サンルーカル バー」のオーナーバーテンダーの新橋清さん。

神楽坂の名店「サンルーカル バー」のオーナーバーテンダー新橋清さん。

日本を代表する名バーテンダー上田和男氏のもと、資生堂パーラーの「バー ロオジエ」で修業を積んだ後、独立した上田氏が銀座に開店した名店「テンダー」でもその右腕を務めた当代の名バーテンダーだ。

「アルコールには体を温める作用がありますが、ホットカクテルは、その効果をより高めるために飲まれていました。例えば、フランスで『ヴァン・ショー』、ドイツでは『グリューワイン』と呼ばれる、いわゆる『ホットワイン』は、大きな鍋にハーブやスパイスを入れ、熱した鉄剣を突っ込んで温めて飲んだのが始まりだとされています」と新橋さん。

その歴史は、19世紀以降に生まれたコールドカクテルの歴史よりはるかに古い。気候が寒冷化した中世ヨーロッパで、ワインやスピリッツにハーブやスパイスなどを加え、温めて飲むことが流行したのが誕生のきっかけだったという。

ホットカクテルの定番「ホットバタードラム」。シナモンスティックが香りを添える。

長い歴史を持つホットカクテルは幾世代を経て、さまざまに洗練されてきた。そんな中から新橋さんがスタンダードなホットカクテルとして紹介してくれたのが、「ホットバタードラム」「アイリッシュコーヒー」「ホットワイン」「カンパリお湯割り」「ホットブランデーエッグノッグ」「ホットジントディー」の風味豊かな6種である。

【Column】お湯割りにお勧めのリキュール

リキュールのお湯割りは、自宅でも手軽に愉しめるホットカクテル。普段とは違った丸みのある味わいに。「お湯割りに合うのは、カンパリなどのビター系やハーブ系リキュールです。逆にフルーツ系はあまり向いていません」(新橋さん)。

カクテルベースとしてポピュラーなカンパリも、お湯割りにするとビターな風味が引き立ち意外な美味しさに。レモンが彩りを添える。

それぞれのレシピや味わいは本稿末尾にゆずるが、いずれもほど良い甘さやスパイシーな香りを特徴とする。また、温めることで香りが引き立ち、まろやかな味わいになるホットカクテルならではの魅力が感じられる。

例えば、アメリカでは定番のクリスマスドリンク「ホットブランデーエッグノッグ」や、イギリスで風邪のひきはじめやナイトキャップ(寝酒)に飲まれるという「ホットバタードラム」などは、まさにこの季節こそ味わいたいホットカクテルだろう。

「ホットカクテルをあまり飲まれない方には、まずはウイスキーやラムのお湯割りをお勧めしています。これらも立派なホットカクテルですが、バーではそうしたスピリッツのお湯割りに2つ3つ手を加えて、風味を変えてみると良いですね。とくにスタンダードなカクテルには、それぞれのバーのキャラクターが出ます。バーに足を運んだ際は、そうした違いも愉しんでいただきたいと思います」と新橋さん。

ウイスキーとザラメを温め、「アイリッシュコーヒー」を作る。

ホットカクテルは季節を問わず愉しめるドリンクだが、その一杯から感じる温かさと心地良い安心感は、この季節ならではのものだ。新橋さんは最後にホットカクテルとともに過ごす冬のバータイムをこう提案してくれた。

「例えば、最初の一杯にホットカクテルで冷え切った体を温め、カウンターでゆっくり好きなお酒を愉しんだ後、最後の一杯にホットカクテルでもう一度温まって家路に就く。そんな過ごし方をされてはいかがでしょう」

この冬のバータイムは、いつもと少し趣向を変えてホットカクテルで過ごしてみたい。

一度は試しておきたい!「Standard Hot Cocktails」

洗練されたシンプルさゆえに、それぞれのバーの個性が光るスタンダードカクテル。まずは、名バーテンダー新橋さんが勧める定番レシピから、ホットカクテルの愉しみを探してみたい。

【NO.1】Hot Wine

ホットワイン(1500円)

スパイスとフルーツ(オレンジやレモンなど)を赤ワインに漬けて温めたもの。飲み残しのワインを使えば、自宅でも気軽に愉しめる。シナモンスティックを添えるとより美味。(※同店での呼称は「ヴァン・ショー」です)

【NO.2】Irish Coffee

アイリッシュコーヒー(1700円)

アイリッシュウイスキーをベースに、珈琲、砂糖、ホイップクリーム(生クリームの場合も)を加える。フランベして軽くアルコールを飛ばす演出もバーならではで愉しい。

【NO.3】Hot Buttered Rum

ホットバタードラム(1500円)

ラムに砂糖を加えお湯を注ぎ、バターを浮かべる。新橋さんはダークラムを使い、シナモンスティックでひと味加えている。牛乳で作れば「ホットバタードラムカウ」となる。

【NO.4】Hot Gin Toddy

ホットジントディー(1400円)

「トディー」はグラスに砂糖を入れ、スピリッツと熱湯を注ぐ飲み方。ウイスキーが基本だが、ジンを使うとよりスパイシーな仕上がりに。新橋さんはサントリーの「六」を使用。

【NO.5】Hot Brandy Eggnog

ホットブランデーエッグノッグ(1800円)

泡立てた卵白と卵黄に砂糖を入れ、ブランデーに少々のダークラムを加えて、温めた牛乳を注いでステアする。アメリカではクリスマスから新年にかけて飲まれる定番ドリンクだ。

【NO.6】CAMPARI & Boiling water

カンパリお湯割り(1400円)

ハーブ系リキュールの代表格カンパリ。カクテルベースとしての印象が強いカンパリだが、お湯割りにするとそのビターな味わいが一層際立って意外な美味しさに。

美味なるCocktailの名店
「サンルーカル バー」(神楽坂)

時間によって趣を変えるチーク材のカウンター。

「早く開き、早く閉める店を」と営業は14時から。店名はシェリーの名醸地であるスペインの港町にちなむ。「シェリーの勉強に訪れたサンルーカルの1日の光の変化を思い出して名付けました」(新橋さん)。

窓から差し込む光の変化を感じながら、本格的なカクテルを愉しめるバーだ。平成22年(2010)開業。

チョコレートクリームリキュールとアマレットに生クリームを載せたオリジナルカクテル「ブレンネロ峠の冬」(1500円)は冬の人気メニュー。
フランベの演出も愉しい「アイリッシュコーヒー」。

東京都新宿区神楽坂6-43 K’s Place102
TEL:03-6228-1232
営業時間:14:00〜23:00
定休日:月曜 
アクセス:東京メトロ「神楽坂駅」よりすぐ

文/田端広英 撮影/米屋こうじ

カクテル言葉の主要60種類一覧|恋愛・別れ・夜の誘いなどシーン別に解説
覚えておきたい定番カクテルおすすめ27種類|名前&作り方一覧
BARデビューにおすすめ!銀座の名バーテンダーに聞く「ルール&マナー」