映画「カツベン!」でメガホンを取った周防正行監督と、映画初主演を務める成田凌さん。同作は、活動弁士を夢見る俊太郎(成田さん)が流れ着いた映画館「青木館」(「青」は正しくは下が「円」)のスタッフは、人使いの荒い青木富雄(竹中直人さん)や、傲慢(ごうまん)で自信過剰な弁士・茂木(高良健吾さん)、酔っぱらいの弁士・山岡(永瀬正敏さん)など癖の強い人材ばかりです。

 雑用ばかり任される俊太郎の前に初恋の相手・梅子(黒島結菜さん)や大金を狙う泥棒、泥棒を追う警察などが現れ、さまざまな騒動に巻き込まれていくコメディー作品です。

 オトナンサー編集部では、周防監督と成田さんにインタビューを実施。活動弁士の魅力や脚本の感想、お気に入りのシーンなどを聞きました。

日本に根付いている語りの文化

Q.活動弁士の魅力を教えてください。

周防監督(以下敬称略)「なぜ活動弁士という仕事が成立したかというと、そこに語りの魅力があるからなんですね。浄瑠璃や落語、講談、浪曲など語りの文化が日本には根付いていました。当時から、人々は語りを楽しんでいたし、無声映画に活動弁士の語りがつくことは必然だったと思います。活弁は語りの魅力にあふれているのです」

成田さん(同)「無声映画である活動写真があり、活動弁士は作品全体を考え、物語を説明したり、セリフを当てたりします。全体を把握しているがゆえに活動弁士にはそれぞれの個性が出るので、一つの作品が弁士によってさまざまな作品になるのは単純にすごいと思います」

Q.周防監督は、他の方が書いた脚本で監督を務めたことがないと聞きしました。

周防「これまでも、別の方が書いた脚本で監督してくれませんかという話はありました。ポリシーとして、自分で書いた脚本でしか映画を撮らないということではありません。読んで監督をしたいと思わなかっただけです。今回はシナリオが面白かったので引き受けました」

Q.監督を務めようと思った最大の理由は何でしょうか。

周防「存在を忘れられている活動弁士の物語というのもあるのですが、一番いいなと思ったのは、活動弁士の物語を活動写真のように描きたいというシナリオだったことです」

Q.成田さんは、脚本を読まれていかがでしたか。

成田「とても面白かったです。脚本を読んでからオーディションを受けさせもらったのですが、絶対にこの役をつかみ取りたいと強い気持ちで挑みました」

Q.活動弁士を演じることで内面に変化は。

成田「当たり前に受けていたものを一度考える癖がつきました。これは本当に正しいのかと考え、自分を信じる。永瀬正敏さん演じる山岡の『映画はもう勝手に出来上がっている。説明なしで映画はあり得るが、映画なしに説明はあり得ない』というセリフがあります。今回のプロモーションで、地方のアナウンサーさんが活弁を披露してくださることがありましたが、ずっとしゃべるより、必要なところだけしゃべる方が僕は魅力的に感じました」

Q.この映画を今、公開する意義は。

周防「今では映画の定義が崩れています。フィルムで撮影したものをスクリーンや壁に投影して、それを不特定多数で見る。それが映画の定義だったんですが、デジタルになり、ネットで配信され、スマホの画面で映画を見るようにもなっています。映画の定義が揺らいでいて、動画のコンテンツと呼ばれてしまったりしています。

映画はどう始まったか、日本では映像文化が始まったとき、生演奏の音楽と共に生身の人間の語りがつきました。30年も日本映画の黎明(れいめい)期を支えてきたのに、活動弁士の存在は今は忘れられています。彼らが確実に映像文化を支えていた時代があるので、そのことはみんなに知ってほしいし、映画の定義が曖昧になっている今だからこそ撮らないと、映画が何であったのか分からなくなっていくと思いました。

動画があふれ返り、映画と動画の境がなくなった後にこの作品を撮っても、活動写真と映画のつながりが見えないと思いました。今なら辛うじて映画館や往年の映画のイメージがあるので、最後のチャンスかなと思いました」

Q.初主演の感想をお願いします。

成田「主演を務めなければ分からない何かがあるなと思いました。何かは言葉ではうまく説明できませんが、責任感もありますしプレッシャーもありました。でも、この作品に関しては僕が主演だからどうこうではなく、共演者の皆さんがいろいろしてくれましたので、特別に意識することはありませんでした。共演者の皆さんと仕事ができて幸せだったなと思いました」

 映画「カツベン!」は全国公開中。