連日、大みそかの「第70回NHK紅白歌合戦」に関するニュースが流されていることに、お気付きでしょうか。その大半を占めているのは追加出演者の発表です。

 11月14日の出場歌手発表後、22日に竹内まりやさん(「いのちの歌」)、25日にRADWIMPS(「天気の子 紅白スペシャル」)、12月11日に映画「アナと雪の女王2」の中元みずきさん(「イントゥ・ジ・アンノウン〜心のままに」)、映画「トイ・ストーリー4」のダイヤモンド☆ユカイさん(「君はともだち」)、映画「アラジン」の中村倫也さん&木下晴香さん(「ホール・ニュー・ワールド」)、15日にYOSHIKI feat. KISS<YOSHIKISS>(曲未定)、19日に松任谷由実さん(「ノーサイド」、ラグビー日本代表選手も出演)、20日にビートたけしさん(「浅草キッド」)、24日にSixTONES、Snow Man率いるジャニーズJr.(「LET’S GO TO EARTH」「Let’s Go to Tokyo」)と、次々に追加出演者が発表されています。

 これは今年に限った話ではなく、昨年も北島三郎さん、サザンオールスターズ、松任谷由実さん、米津玄師さんらが11月の出演者発表後、「追加出演者が決定」というニュースとして報じられました。

 なぜ、近年の「紅白歌合戦」は一度にまとめてではなく、さみだれ式に出演者を発表しているのでしょうか。

期待感を徐々に高める定番の方法

 制作者と出演者への取材を進めていくと、「PR」「大物交渉」という2つの理由が浮かび上がってきます。

 まず、テレビ番組の「PR」をする際のさみだれ式は極めてオーソドックスな方法。単発の特番だけでなく連ドラなども、情報をさみだれ式に出して繰り返し目にしてもらうことで印象付け、期待感を徐々に高めていくことができます。

 もともと、「紅白歌合戦」は「出演者の発表から放送まで1カ月以上時間が空き、その間の話題作りが難しい」と言われ、29日から31日にかけて行われる「リハーサルしか十分なPRができない」とされていました。

 また、ウェブメディアの環境が大きく変わったことも、さみだれ式のPRを後押ししています。2010年代に入って「オトナンサー」のようなウェブ専門メディアが増えただけでなく、雑誌や新聞などの各媒体がウェブメディアを運営し、連日多くの記事を配信するようになりました。

 そのため、「紅白歌合戦」のようなバリューのある番組が「出演者の追加発表」などのニュースを流すと、数十ものウェブメディアが記事を配信することになり、さらにそれがSNSで拡散されることで、多くの人々に知ってもらえるのです。

 そんなウェブメディアの記事が「紅白歌合戦」にとって重要なもう一つの理由は、若年層にリーチできること。近年、「紅白歌合戦」はメインとなる中高年層に加えて、「若年層の視聴者をどう集めるか」が重視されていますし、それがうまくいけば視聴率の低下を防ぐことにつながります。

大物交渉と民放の長時間フェス番組

 次に「大物交渉」について。先述したように、昨年も今年も追加発表されたのは大物ばかりで、普段、テレビ番組にほとんど出演しないアーティストも少なくありません。昨年、米津玄師さんにNHKからさまざまな提案や粘り強い交渉があったことが報じられていたように、「当初は断っていたけど熱意で翻意した」というケースも多いそうです。

 また、紅白歌合戦の置かれた環境が変わってきたこともポイントの一つ。民放各局が、紅白歌合戦と同等レベルの長時間音楽フェス番組を放送するようになり、物理的なスケール感で勝ることが難しくなりました。そのため、「紅白歌合戦は大物を狙って質の高さで勝負していく」という差別化がより必要になっているようなのです。

 NHKとしては、受信料の是非が問われている上に、ネット同時配信への理解を得なければいけないという状況の中、よい番組を制作して存在意義を示し、好感度を高めておきたいところ。とりわけ、「朝ドラ」「大河ドラマ」「紅白歌合戦」の3番組は高視聴率獲得が求められています。

 しかし、今年は大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」の視聴率が低迷し、現在放送中の朝ドラ「スカーレット」も久々に平均視聴率20%を下回るなど苦戦が続き、「紅白歌合戦だけは失敗できない」のです。だからこそ、放送直前まで追加出演者の発表があるかもしれませんし、あらゆる努力をギリギリまで続けるのではないでしょうか。