放送から約1カ月が経過しようとしている今クールの連続ドラマ。各ドラマにさまざまなキャストが名を連ねていますが、芸能事務所・研音に所属する役者の起用が目立ちます。唐沢寿明さん、山口智子さん、菅野美穂さん、沢村一樹さんら安定感のあるベテランはもちろん、今期は特に、志田未来さん、杉咲花さん、福原遥さん、吉川愛さん、桜田ひよりさんら若手女優が存在感を放っています。彼女たちには「子役出身」という共通点も。

 研音所属の若手女優が活躍している背景について、作家・芸能評論家の宝泉薫さんに聞きました。

子役時代、「梶浦花」として活動していた杉咲花さん

 フジテレビ系連続ドラマ「監察医 朝顔」(毎週月曜 後9:00)で、上野樹里さん演じる主人公が勤める法医学教室の同僚・安岡光子役の志田未来さん。同作は月9史上初めて2クール連続で放送されており、2019年7月期に放送された第1シーズンの続編でもあります。

 志田さんは1999年、「セントラル子供劇団」に入団し、子役としてキャリアをスタート。2005年放送の「女王の教室」(日本テレビ系)で民放連続ドラマレギュラー出演を果たすとともに、主要人物の一人を演じたことでブレークを果たします。翌年に研音へ移籍し、同年10月に放送された「14才の母」(同)で連続ドラマ初主演。未成年の出産をテーマに描かれた同ドラマは大きな話題を呼び、最終回の視聴率は20%を超えるなど大ヒットを記録しました。

 以降、ドラマ「正義の味方」(日本テレビ系)、「小少女セイラ」(TBS系)や、映画「誰も守ってくれない」(2009年)、「泣き虫ピエロの結婚式」(2016年)で主演を務め、ジブリ映画「借りぐらしのアリエッティ」(2010年)では、声優初挑戦ながら主人公・アリエッティの声を演じました。直近では、NHK連続テレビ小説「エール」(2020年度前期)で主人公の弟・浩二(佐久本宝さん)の妻・畠山まき子を演じ、4年ぶりの朝ドラ出演でも注目を集めました。

「大阪のお母さん」として親しまれた女優・浪花千栄子さんをモデルに、戦前から戦後の大阪で貧しく生まれた少女の女優を目指す生涯を描いたNHK連続テレビ小説「おちょやん」(月〜土 前8:00)。同作で、ヒロイン・竹井千代役を演じているのが杉咲花さんです。

 かつて、「梶浦花」の芸名で子役として活動していた杉咲さんですが、2011年から研音に所属し、現在の芸名に。味の素「Cook Do」のCMでホイコーローを食べる少女を演じて話題になり、以降、ドラマ「夜行観覧車」(TBS系)に出演。映画「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016年)での演技が高く評価され、「日本アカデミー賞」の他、各映画賞で助演女優賞を受賞しました。

 その後、ドラマ「花のち晴れ〜花男 Next Season〜」(TBS系)、「ハケン占い師アタル」(テレビ朝日系)や、映画「パーフェクトワールド 君といる奇跡」(2018年)、「青くて痛くて脆い」(2020年)など近年は主演を務めることも多く、朝ドラは「とと姉ちゃん」(2016年度前期)以来の出演となります。

 同じく、「おちょやん」で、杉咲さん演じる千代と共に京都のカフェ「キネマ」に住み込みで働いている宇野真理を演じているのが吉川愛さん。

 吉川さんは3歳のときに芸能界入り、「吉田里琴」の芸名で子役として活動をスタートしましたが、2016年4月、学業専念を理由に芸能界引退を発表。しかし、研音にスカウトされたのをきっかけに現在の芸名で再デビューし、2017年7月放送のドラマ「愛してたって、秘密はある。」(日本テレビ系)で復帰を果たしました。

 以降、ドラマ「初めて恋をした日に読む話」「恋はつづくよどこまでも」(いずれもTBS系)などの話題作に出演し、今年7月公開予定の映画「ハニーレモンソーダ」では、ヒロイン・石森羽花役を務めることが発表されています。

「歌手」や「モデル」としての活躍も

 菅野美穂さん、浜辺美波さんが親子役を務める日本テレビ系連続ドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(毎週水曜 後10:00)では、菅野さん演じる売れっ子恋愛小説家の担当編集者・橘漱石(川上洋平さん)の恋人役で福原遥さんが出演しています。

 福原さんは小学1年生のとき、ドラマ「恋の時間」(TBS系)に出演し子役としてデビュー。2009年から放送された子ども向け料理番組「クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!」(NHK・Eテレ)で主人公・柊まいんを演じたことがきっかけで、「まいんちゃん」の愛称で広く知れ渡り、ブレークを果たします。

 2015年に研音へ移籍し、2018年公開の「女々演」で映画初主演、同年4月放送のドラマ「声ガール!」(朝日放送テレビ・テレビ朝日系)で地上波の連続ドラマ初主演を果たしました。また、2019年8月にはデビューシングル「未完成な光たち」をリリースするなど、女優業だけでなく歌手としても活躍しています。

 米ドラマ「24 −TWENTY FOUR−」シーズン1のリメーク作品として放送中のテレビ朝日系連続ドラマ「24 JAPAN」(毎週金曜 後11:15)では、主演を務める唐沢寿明さんと木村多江さんの娘役で桜田ひよりさんが出演しています。

「成田ひより」の芸名で、モデルを中心に幼い頃から活動していた桜田さんは小学4年生のとき、研音のオーディションに応募したことがきっかけで現在の芸名へ改名。2014年放送のドラマ「明日、ママがいない」(日本テレビ系)や、その翌年に放送されたドラマ「ワイルド・ヒーローズ」(同)ではそれぞれ、物語の中心人物に抜てきされました。

 2017年にはドラマ「咲−Saki−阿知賀編 episode of side−A」(MBS・TBS系)で初主演を飾り、その後製作された同作の映画版でも主演を務めた他、翌年にはファッション誌「Seventeen」の専属モデルオーディションで「ミスセブンティーン 2018」に選出されるなど、ファッションモデルとしても活躍をしています。

子役出身者の移籍先として安心感

 研音に所属する子役出身の若手女優たちがなぜ、活躍しているのか。宝泉さんは「幼い頃から蓄えてきた基礎の力と応用力の表れでは」と分析します。

「『子役は大成しない』というジンクスがあるように、子役出身で活躍を続けている人はそんなに多くいません。ですが、現在も多くの作品に起用され、活躍を続けているということは、しっかりとした基礎の力があることに加え、応用力が備わっていることの表れです」(宝泉さん)

「特に、この5人は小中学生時代に結果を出し、それぞれ成功を経験していますが、その頃の成功体験を引きずっているわけではなく、そこからのスキルアップができています。幼い頃から演技を続けていると、子どもの演技と大人の演技の違いに苦しむことも多いのですが、そこに気付くことができ、環境の変化にも対応しながら乗り越えられたことが、活躍を続けている理由の一つでしょう」

 研音の特徴にも宝泉さんは言及しています。

「所属者には生え抜きに負けず劣らず、他事務所からの移籍組も多いという特徴が挙げられますが、これは、移籍してきた人であっても活躍できる事務所であるという印象を与えることにもつながっています。また、2007年に小中学生を対象としたセクションを設けて、自社の子役育成に力を入れていることからも、子役出身者の移籍先として安心感があり、ステップアップできる環境が備わっていることが特徴と言えるでしょう」

 宝泉さんは、この先の20〜30代の期間が女優として今後も活躍を続ける鍵になっていると話します。

「20代後半になると、女優として今後の方向性を考え始めなければならない難しい時期に差し掛かってくるでしょう。特に、若くしてすでに自身の代表作といえるような作品に巡り合った志田さんと福原さんの20〜30代の乗り越え方には注目しています。すでに子役のイメージから脱却しつつある5人ですが、この先も『子役は大成しない』ジンクスを覆すような活躍、成功例を示し続けてほしいと期待しています」