東京五輪が1年遅れで開幕しました。8月8日まで熱戦が繰り広げられます。この世界的、かつ歴史的なイベントによる影響が懸念されているのが、連続ドラマです。元々、夏はレジャーシーズンとあってドラマが苦戦しがちですが、夏季五輪と重なる場合は特に不利になるとされています。

 しかし、過去をさかのぼれば、大ヒットした作品もあります。1992年、バルセロナ五輪の夏に放送された「ずっとあなたが好きだった」(TBS系)もその一つ。放送前はほぼノーマークでしたが、佐野史郎さん扮(ふん)するマザコンキャラの「冬彦さん」がブレークして、初回の13%台から最終回は34%台と、視聴率も大飛躍を遂げました。

 この五輪では、14歳の岩崎恭子さんが彗星(すいせい)のように出現して、金メダル。それに優るとも劣らない快挙です。

健闘目立つ医療ドラマ

 それ以降だと、医療モノの健闘が目立ちます。1996年、アトランタ五輪の夏に放送された「ナースのお仕事」(フジテレビ系)や、2004年、アテネ五輪の夏の「世界の中心で、愛をさけぶ」(TBS系)などなど。中でも注目したいのが、2008年、北京五輪の夏に放送された「コード・ブルー −ドクターヘリ緊急救命−」(フジテレビ系)です。

 北京とは時差も少なく、テレビは五輪ムード一色となりましたが、この作品は同じ期に放送された連ドラで最高の平均視聴率を記録。五輪真っただ中の回でも10%台を保ち、最終回は20%に迫ってフィニッシュをしました。

 主演の山下智久さんをはじめ、戸田恵梨香さんや新垣結衣さん、比嘉愛未さんという、人気と実力を兼ね備えた若手たちが共演。そこに子役出身の浅利陽介さんが加わり、コミックリリーフとしての役割もこなして頭角を現します。

 ただ、浅利さんはこの抜てきに重圧を感じ、当初は「現場に居るのが嫌で嫌で(略)早く帰りたいとずっと思っていた」そう。しかし、山下さんたちのサポートもあり、実力を発揮できるようになりました。この作品と出会っていなかったら、という問いに「(役者を)辞めてたんじゃないかと思います」と語っているほどです。

 また、主題歌はMr.Childrenの「HANABI」。実はミスチル、NHKの北京五輪テーマソング「GIFT」も担当していました。こうしたタイアップの状況だけ見ても、このドラマが五輪という難敵にがっぷり四つで渡り合おうとしていたことがうかがえます。

 そんな強度も合わせ持ったドラマでしたが、成功の最たる理由はやはり、ドクターヘリによる緊急救命医療に若者たちが挑むというテーマでしょう。視聴者は毎回、極限的緊張感と偉業の達成感とを味わうことになります。つまり、五輪中継に通じる魅力があるのです。医療モノが五輪シーズンに強い理由も、そこに関係しているのかもしれません。

「コード・ブルー」に似た作品

 そして、今期の連ドラにも「コード・ブルー」に似た作品があります。月9ドラマの「ナイト・ドクター」(フジテレビ系)と日曜劇場の「TOKYO MER〜走る緊急救命室〜」(TBS系)です。前者は夜間救急の専門医たち、後者は手術も可能な「ERカー」で治療する救命救急チームの姿が描かれます。

 どちらの枠も長年にわたってヒット作を生んできた老舗。こうしたものが五輪に強い傾向を踏まえての作品選びなのかもしれません。主演も前者が波瑠さんで、後者が鈴木亮平さん。共に多くのドラマをヒットさせてきた実力派であり、強度は十分です。

 その強度を高めるべく、さらなる工夫も施されています。例えば、「ナイト・ドクター」は6月21日というイレギュラーなタイミングでスタート。好調だった前作「イチケイのカラス」から間隔を空けないことでその勢いを生かし、また、連ドラの空白期に注目を集めたいという狙いが見て取れます。

 さらに、五輪が始まる直前の第5回(7月19日放送)では、衝撃的なラストが用意されました。ヒロインが体調不良により、危険な現場で転落事故に遭ってしまいます。どこか「コード・ブルー」っぽい展開だなと思っていたら、翌週と翌々週が休止で、第6回(8月9日放送予定)は15分拡大になるという告知がされました。ヒロインの容態が不明なまま、五輪中も興味をつなぎ、再開を盛り上げたいという思惑でしょう。

 一方、「TOKYO MER」は7月4日にスタート。前作「ドラゴン桜」の最終回が6月27日だったので、こちらもすぐのバトンタッチです。その最終回終盤には、第1シリーズのレギュラーたちがサプライズで登場。その中には、山下さんや新垣さんという「コード・ブルー」のレギュラーもいます。そして、最後に「TOKYO MER」の告知がされました。

 こうした流れから、「コード・ブルー」のファンは「TOKYO MER」にも興味をかき立てられたのでは。狙ったわけではないでしょうが、効果的な番宣になった気がします。

 また、「TOKYO MER」は文字通り東京が舞台ですし、石田ゆり子さん扮する女性都知事も活躍します。さらに、第3回(7月18日放送)のラストでは「すべての医療従事者の皆さんへ最大の敬意とエールをこめて−−」というメッセージが流れました。これは五輪へと向かう中、コロナ禍と現場で戦う人たちにも寄り添うドラマだという意思表示にも思えます。

新たな才能が出現?

 そんな医療モノに比べ、恋愛モノは五輪シーズンに弱い傾向があります。例えば、5年前、リオデジャネイロ五輪の夏に放送された月9ドラマ「好きな人がいること」(フジテレビ系)。桐谷美玲さんに山崎賢人さん、三浦翔平さんという華のあるキャストで挑みましたが、五輪期間に数字を落としました。やはり、「冬彦さん」くらいのインパクトがないと、恋愛モノは苦戦するのかもしれません。

 あと、「コード・ブルー」のときには、サスペンスタッチの復讐(ふくしゅう)劇「魔王」(TBS系)もヒットしました。嵐の大野智さんの初主演連ドラで、ヒットした韓国ドラマのリメークでもあります。今期も韓国ドラマをリメークした「彼女はキレイだった」(関西テレビ・フジテレビ系)がありますが、こうした、すでにファンのいる作品で勝負するのも一つの手。漫画やアニメ、小説の実写化モノも五輪シーズンに善戦する傾向があります。

 不利だと言われるからこそ、ここで成果を出せば作品も人も評価が高まります。シリーズ化にもつながりやすく、佐野さんや浅利さんのような才能が世に出たりするわけです。今期もきっと、そんな作品や人に出会えることでしょう。

 夏ドラマにも大いに注目して、五輪に負けない興奮や感動を味わいたいものです。