耳が聞こえない女性が役所で体験したエピソードを描いた漫画「耳が聴こえない人&書くのが苦手な人」がSNS上で話題となっています。数年前、役所で、窓口の男性職員に「聞こえないから筆談をしてください」と頼んだ女性。男性職員は戸惑いながらも、意を決して…という内容で「苦手なことは人それぞれですね」「勉強になりました」「こういうことを、たくさん知っていきたい」などの声が上がっています。作者の女性に聞きました。

筆談が苦手な人の会話は?

 この漫画を描いたのは、イラストレーターのミカヅキユミ(ペンネーム)さんです。インスタグラムやツイッター、ブログ「背中をポンポン」でコミックエッセーを発表。「レタスクラブWeb」では「聴こえないわたし 母になる」を連載中です。

Q.漫画を描き始めたのは、いつごろからでしょうか。

ミカヅキさん「小さい頃から絵を描くことが好きだったので、聞こえない自分の日常を漫画に描いてみようと思い、2013年ごろからブログで発表するようになりました」

Q.今回の漫画を描いたきっかけは。

ミカヅキさん「耳が聞こえず、手話で話す人と目が見えない人はどうやってコミュニケーションをとるのだろうという話は、私たち、ろう者の間ではよく話題になります。対策として、指点字や触手話(手で手話に触れる)という方法があることも私の周りでは認識されています。では、筆談が必要な人(ろう者)と、手話ができず、筆談も苦手な人はどうやって会話をするのだろう?と考えたときに『面白いな』と思ったのがきっかけです」

Q.通常、役所など公的機関で筆談を依頼するとスムーズな流れで筆談ができるのですか。

ミカヅキさん「そうですね、役所にはいろいろな人が訪れるので、皆さん、スムーズに対応してくださいます。公的機関でなくとも、書くことに抵抗がない人であれば、どこでも変わらないと思います」

Q.彼は字を書くのが苦手そうだと気付いたとき、どのような印象を受けましたか。

ミカヅキさん「『ほお〜、初めて見たなあ!』と思いました。相手の手元や表情をじっくり観察していました(笑)書くのが苦手な人がいても、全然不思議じゃないなと思いました」

Q.頑張って書いてくれた彼について、どのような思いでしたか。

ミカヅキさん「素直にありがたかったです! 苦手なりに、筆談が必要な私の対応をしてくださったことがうれしかったです」

Q.「耳が聞こえない」以外の障害を持つ人やその人との関わり方について、普段から意識をしていますか。

ミカヅキさん「そうですね、特に意識しているわけではないのですが、自分がマイノリティーなので、同じく別の分野でのマイノリティーの人を見つけると、どこか共通点があるように感じます。『ああ、いるんだな』と。立場は違っても、表からは見えないような生きにくさを抱えている人はたくさんいると思います」

Q.「UDトークアプリ」について教えてください。入れたことで、ご自身にメリットや変化はありましたか。

ミカヅキさん「UDトークアプリは、音声認識機能を使って会話を文字化してくれるアプリです。テキスト入力だけではなく、手書き入力もできますし、簡単な絵も描けます。内容が記録できるところもいいですね。会話ログをメールで送ることもできます。

マスク生活なので、アプリを起動して、マスク越しにしゃべってもらう方法もありますし、選択肢が増えたことがうれしいです。まだ使用頻度が少なく、多少、誤変換はありますが、何かのときに活躍してくれる便利なツールだと思います」

Q.健聴者が筆談をする際、分かりやすく伝えるためのポイントを教えてください。

ミカヅキさん「筆談にもその人の性格が出るので面白いです。口語で書く場合は、実際に話しかける言葉と同じなので丁寧さが伝わりますが、時間がかかってしまうこともあります。箇条書きでキーワードだけを書く場合はとても分かりやすく、時間短縮になりますが、少し事務的な雰囲気を感じてしまう場合もあるかもしれません。

イラストを入れるのも、感情がより伝わるのでおすすめです! 状況に応じて使い分けてもいいと思います。私は子育て中なので、子連れのときはすぱっと早く終わりたい!と感じることが多いので、箇条書きで書いてもらった方が今はありがたいです」

Q.漫画について、どのような意見が寄せられていますか。

ミカヅキさん「発信するにあたり不安だったのは『書くことが苦手な人を傷つけてしまわないか? この投稿を見て、彼らはどう思うだろうか』ということでした。しかし、『書くことが苦手な人たち』から頂いた言葉は、どれも温かいものばかりでした。人に見られると緊張して、手が震えてしまうという恐怖症性不安障害を持っている方。発達障害の特性でどうしても漢字が上手に書けないという方。

これらの方は説明しても分かってもらえないことが多いのだそうです。『書くのが苦手だということをくみ取ってもらえて、理解した上で対策まで考えてもらえて、とてもうれしいです!』といったメッセージやコメントには思わず、目頭が熱くなりました。私も聞こえないことを理解してほしい、分かってほしいと日々思っていますので、そういう点では激しく共感しました」

Q.創作活動で今後、取り組んでいきたいことは。

ミカヅキさん「誰かの気付きにつながるような、そんな作品を作っていきたいです。聞こえない自分のコミックエッセーも続けていきたいですし、夢のまた夢ですが、絵本を作ってみたいなあと思っています。イラストの技術を磨いて、絵のお仕事が頂けるよう頑張りたいです!」