放送中のNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」(月〜土 前8:00)に出演している坂口健太郎さん。

 同ドラマは、宮城県・気仙沼湾沖の自然豊かな島で育ったヒロイン・永浦百音(清原果耶さん)がある日、東京からやって来た気象予報士に「天気予報は未来を予測できる世界」と教えられたことに深い感銘を受け、気象予報士を目指し成長していく姿を描いたストーリーで、坂口さんは、遠距離恋愛ながらヒロインを支える医師・菅波光太朗を演じています。

 近年は主演やヒロインの相手役としての起用が増え、さまざまな作品での活躍が続く坂口さん。その特徴や魅力について、作家・芸能評論家の宝泉薫さんに聞きました。

抜群にハマるヒロインの相手役

 坂口さんは19歳のとき、ファッション誌「MEN’S NON−NO」のモデルオーディションに合格したことをきっかけに芸能界入り。2014年公開の映画「シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸」で俳優デビューを飾り、翌年の10月期に放送されたドラマ「コウノドリ」(TBS系)で連ドラ初出演を果たします。

 2016年公開の映画「64−ロクヨン− 前編/後編」ではその演技が高く評価され、「第40回日本アカデミー賞新人俳優賞」を受賞。その後も「東京タラレバ娘」(日本テレビ系)や「ごめん、愛してる」(TBS系)、映画「君と100回目の恋」「今夜、ロマンス劇場で」など、話題作への出演が相次ぎました。

 2018年に放送された「シグナル 長期未解決事件捜査班」(関西テレビ・フジテレビ系)では連ドラ初主演を務め、同作はその後、映画化されるなどヒットを記録。以降、「イノセンス 冤罪弁護士」(日本テレビ系)や、その後、劇場版も公開された「そして、生きる」(WOWOW)、昨年公開の「仮面病棟」など、近年は数々の作品で主演を務める活躍が続いています。

 デビュー以降、これまで、多くの作品に出演してきた坂口さん。宝泉さんは「ヒロインの相手役としての特性が抜群に高い俳優」と評します。

「これまでを振り返ってみても、女性が主人公の作品にうまくハマっている印象が強く、これは坂口さんの特徴の一つです。上から目線だったり、俺さま的な振る舞いを見せても、乱暴で雑な感じにならないのは、坂口さんの外見や声、醸し出す雰囲気や芝居がそうさせているのだと思います」(宝泉さん)

「そのような特徴からも、単独主演というよりは、ダブル主演やヒロインの相手役という立ち位置がやはり似合うのでしょう。中でも、抜群に似合うのがヒロインの相手役であって、朝ドラのような、強くたくましい女性が主人公の作品では、相手役の男性がある意味、ヒロイン的な立ち位置になりがちです。そんな役が抜群に似合う坂口さんは“ヒロイン男子”と称することもできるのではないでしょうか」

 宝泉さんは、坂口さんの俳優としての転機になった作品があると話します。

「連ドラデビュー作にもなった『コウノドリ』で演じた医者役が、その後の方向性をある程度決定付けたようにも感じるのです。外見的にもソフトで、薄味な感じの坂口さんが同作で演じた生意気ながらも優しく知的な感じは、その後出演した『とと姉ちゃん』にも通ずるところがあり、彼のイメージをうまく印象付けられたと思います」

「『シグナル』『イノセンス』など、これまで、単独主演も経験してきた坂口さんですが、どちらかと言えば、『コウノドリ』『とと姉ちゃん』のような役柄がうまくハマっているように感じ、自分一人でグイグイ引っ張っていくというよりは、やはり、相手役がいてこそ持ち味が発揮できるタイプ。だからこそ、『おかえりモネ』のような役柄が抜群に似合い、持ち味を存分に発揮できているのではないでしょうか」

「おかえりモネ」が新たな代表作に

 宝泉さんは、話題を集めている「おかえりモネ」での坂口さんの存在についても言及しています。

「基本的には、ヒロインがたくましく生きていく姿を描くのが朝ドラであって、その相手役の男性は受けの芝居であったり、優しさや待つスタンスを求められることが多いはずです。今作で見せたツンデレな部分や、基本敬語な言葉遣い、少しおどおどしている感じが坂口さんの外見や雰囲気とうまくマッチし、それら全てが優しさにつながっています。まさに“ヒロイン男子”としてぴったりな存在なのでしょう」

「また、今作の特徴の一つに、坂口さんの名前というよりは役名の『菅波』が先行していることが挙げられます。これは、坂口さんが役にうまく溶け込んでいる証拠でもあり、今作でのハマり具合の象徴でもあります。『おかえりモネ』が終盤にかけて盛り上がりを見せているのは、間違いなく、『菅波』の存在が大きな要因となっていて、坂口さんにとっても新たな代表作と言える作品になったはずです」

 宝泉さんは、10月スタートの新ドラマ「婚姻届に判を捺しただけですが」(TBS系)での坂口さんにも大きな期待を寄せています。

「ラブコメディーの作品でもあるので、これまでとは少し違う感じになる予感がしていますし、朝ドラの後ということもあって、本人の中でも意識的に変えようとしている部分もあるのではないでしょうか。この作品もヒロインの相手役なので、受けの芝居は求められつつ、アップテンポな感じになると思いますし、少々、はじけた感じの芝居や新たな一面が見られるのではないかと期待しています」

「女性が主演の枠ではありますが、男性が目立てる枠でもありますし、これまでの作品を振り返ってみると、むしろ、相手役の男性がどのように演じるかで作品の評価が変わるような側面もあると思うのです。

ここ数年のドラマは、女性が生き生きとしている姿を描くのが一つのトレンドでもあるので、そうしたことからも、今の坂口さんのような存在は重宝されるはずですし、今後も今の立ち位置を極めていくのか、はたまた、新たな方向性を模索していくのかは注目したい点でもあります」