コロナ禍で経営が厳しい店も多い中、「閉店セール」の文字を見掛けることがあります。閉店に伴う在庫処分や売り尽くしを理由に、通常よりも大幅に値下げされた値札を見ると購買欲をかき立てられてしまいます。しかし、中には、年中、閉店セールをうたって営業を継続している店も見受けられますが、こうした“いつでも閉店セール”のお店に法的問題はないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

名ばかりなら、有利誤認の可能性

Q.年中、閉店セールをうたって営業を継続している店に法的問題はないのでしょうか。

牧野さん「『閉店』を理由にセールを行うこと自体はもちろん、問題ありませんが、本当は閉店を予定していないのに、あたかも閉店するかのように装い、『今だけ安い』『今買うとお得』と長期間アピールして大量の客を呼び込んだ場合、景品表示法(正式には『不当景品類および不当表示防止法』)違反となる可能性があります。ただし、閉店セールを実施したことでお店の業績が回復し、その後も経営を続けることができたというケースもあります。例えば、大阪の靴店の事例です。

同店は1993年ごろ、不況で経営が危うくなり、『もうあかん やめます!』という垂れ幕を店に掲げたところ、キャッチフレーズの面白さが話題となって客足が復活。その後も『いや、やっぱりやります! どっちやねんセール』などのユニークな垂れ幕を続け、2016年2月、本当に閉店するまで、客も当面、閉店しないことを承知で商品を買う状況ができました。この場合、顧客側は、すぐには閉店しないという前提で購入していると考えられ、『有利誤認』に該当する可能性は低いでしょう。

ただし、これは極めて例外的な事例であり、違法である名ばかりの『閉店セール』は有利誤認に当たる可能性があるため要注意です。『閉店セール』といいつつ、通常価格で商品を売っている場合、一般的に『閉店までの一定期間だけ、特別に安くなっている』との認識を消費者に与えることから、不当表示のうちの有利誤認にあたる可能性があります」

Q.それでは、「閉店セール」のうたい文句につられて商品を購入したものの、お店がその後も閉店せず、「だまされた」という思いを抱いた人はどうすべきでしょうか。

牧野さん「景品表示法は監督官庁が業者を行政上規制する目的の法律ですので、民法や消費者契約法と異なり、仮にお店が景品表示法に違反しても、消費者が救済を受けるための具体的な法的権利を定めた法律ではありません」

Q.店側を罰することはできないのでしょうか。

牧野さん「刑法上の詐欺罪(10年以下の懲役)の可能性が考えられますが、詐欺罪が成立するためには、詐欺によって顧客がだまされて、お店が財産上不法な利益を得ることが必要です。閉店セールの看板につられて、商品を相場価格、または相場よりも若干安い価格で購入した場合、お店は財産上不法な利益を得てはいるとは言えないため、店員に詐欺行為があれば別ですが、詐欺にあたる可能性は低くなります。

一方で、割高な値段で購入した場合は、店側が財産上不法な利益を得たと一応はいえますが、閉店セールの看板で顧客がだまされて、商品を割高で買ったこととの因果関係を証明する必要があり、店員に詐欺行為があれば別として、通常は難しいでしょう」

Q.損害賠償を求めることはできないのでしょうか。

牧野さん「民事上の救済ですが、閉店セールのうたい文句だけでは、明確にだます意図があったとは言えないため、民法上の詐欺行為にあたる可能性も低いでしょう。消費者は『閉店セールだから』という理由で店舗へ立ち寄ることはあっても、それまで購入する気のなかった商品を、店側にだまされて、急に購入する気になることは通常ないので、商品を割高で買ったこととの因果関係の証明は難しいと思われます。

ただし、消費者契約法により、契約を取り消せる可能性はあります。同法では『重要事項について事実と異なることを告げた』ことで『事実である』と消費者が『誤認』した場合、消費者に契約の取り消し権を認めており(同法4条1項1号)、閉店商法は誤認させたケースになる可能性があるからです。

例えば、単に『閉店セール』と掲げるだけでは『誤認させた』とまでいえないことが多いですが、市価より安くはないのに『閉店セールだから絶対に市価より安い』などと勧誘すれば、『誤認させた場合』に該当する可能性があるでしょう」