自粛生活でのストレスによる夫婦間の衝突などから破局に至る「コロナ離婚」なる言葉がはやりましたが、子どもがいる場合、離婚を考えつつも踏みとどまる理由に、子どもの存在を挙げる人は少なくないでしょう。ネット上には「離婚したら、子どもを悲しませてしまう」「子どもを傷つけたくない」と離婚を選択しなかった親の声も多く見られます。

 一方で、物心ついた子どもが親の離婚を経験したケースでは「正直、早く離婚すればいいのにと思っていた」「父親が『おまえらは反対すると思うが…』と言っていたけど、反対する気なんてなかった」「親が毎日けんかしていたから、離婚が決まったとき、心底ほっとした」など、必ずしも、両親の関係維持を望んでいるわけではない実情があるようです。「子どものために離婚しない」選択の是非について、夫婦カウンセラーの木村泰之さんに聞きました。

親が主体的に決めるのが大切

Q.夫婦が離婚を考える際、子どものいるケース/いないケースでは、具体的にどのような点が異なるのでしょうか。

木村さん「子どもがいる場合、まず考えるのは親権と養育費です。どちらが親権を取るのかで親子ともに人生は大きく変わってきますし、子どもが小さければ小さいほど、大学進学など成人になるまでの期間の金額も必要ですから、離婚の際に最もこだわるポイントとなります。また、離婚後の姓や住居、学校、行政の手当など子どもに影響することが関心事になります。

一方、子どもがいない場合は、預貯金や不動産などの財産分与が大きな事項です。婚姻期間が長ければ長いほど財産も多岐にわたるので、どのように分けるかが大きな関心事になってきます」

Q.「子どものために離婚しない」という選択について、どのように思われますか。

木村さん「『子どものために離婚しない』という選択は決して不思議なことではありません。むしろ、離婚の危機に陥ると『ひとり親にしてはいけない』『寂しい思いをさせてはいけない』など、子どもの気持ちをおもんぱかる親心から最初はそう考えるはずです。中には『自分の親も離婚をして、小さい頃は寂しかった』『ふびんな思いをした』という経験から、離婚を踏みとどまることもあります。判断の善しあしではなく、夫婦というよりも、子どもの親としての立場を優先して考えているということです。

もちろん、子どもの年齢や人数、性別でも考え方は変わってきますが、いずれにしても、『子どものためという優先順位を重視した』という自覚が必要になります。ただ、『子どものために離婚を我慢している』『子どもさえいなければ離婚するのに』といった親側の意識が強く出ると、子どもにも伝わってしまいます。それでは本末転倒で、全く、子どものためになっていません。そうした意味で『子どものために離婚しない』と選択したら、自分が一番納得していることが重要です」

Q.一方で、子ども側からは「早く離婚してほしかった」「やっと離婚が決まってほっとした」といった声も聞かれます。

木村さん「子どもからすると、いがみ合っている親を見たくないのは当然です。以前と違って、コロナ禍で世の中も変わり、今までにない経済的な事や生き方の価値観の違いなどでいざこざが生じるケースも少なくありません。『そうした姿を自分たち(子ども)に見せないのであれば、離婚しないでほしい』という思いもあるはずです。しかし、もめている夫婦がそれを子どもに見せないでいられるかといえば、かなり難しいでしょう。それを子どもが感じているケースが多いのです。

『そんなに一緒にいるのが嫌なら、離婚してほしい』『大学までの学費を払ってくれるのであれば、離婚しても構わない』という子どもの声もよく聞きます。子どもが最も冷静に客観的に夫婦を捉えているのです。無理に夫婦を続けていると、それ見ている子どもの気持ちと隔たりが生まれることに気付かなければいけません。また、子どもの中には『離婚しないのを自分のせいにしないでほしい』という声もあります。親が主体的に決めるべきことを子どもの気持ちにすり替えてはいけません。

子どもの気持ちを理解した上で離婚を選択する親を子どもは決して、否定することはありません」

Q.「子どものために離婚する」と「子どものために離婚しない」はどちらが適切だといえるでしょうか。

木村さん「一概にはいえません。『家族環境を考えた結果、離婚した方が適切だった』、あるいは『しない方が適切だった』ということであり、離婚が目的ではなく、手段になっていることが大切です。例えば、子どもがまだ中学生の場合、入学を希望する高校が暗に、離婚している親の子どもを受け入れないこともあります。そうなると『婚姻事実が必要』であることを優先してもおかしくありません。

一方で、高校生くらいになると、子どもにも自我が芽生えて、『親が無理に夫婦を続けていることが苦しい』と親に伝えてもおかしくないでしょう。そうしたケースでは、経済的な担保を条件に、子どものために離婚することもあり得ます」

Q.離婚を検討している親が子どもに「離婚してもいいか」と尋ねるケースもあるようです。

木村さん「私の相談者でも珍しくありません。親からすると『子どもの気持ちも聞いておかなければ』という思いでしょうが、聞かれた子どもは『離婚してほしくないと言ってほしいんだ』という親への“忖度(そんたく)”が働くこともあります。そう考えると、子どもに自分たち夫婦の離婚について単に尋ねるというのは、子どもに余計な気を使わせる可能性が出てきます。その答えを額面通り受け取り、『子どもは離婚してほしくないと言っている』という考えで行動すると、どこかで親子関係に無理が生じます。

そのため、親は『離婚していいか』と尋ねるのではなく、離婚する/しないの意思とその理由を伝えることが必要です。子どもはその言葉をもとに、自分の取るべき行動や言葉をはっきりと示すでしょう」

Q.子持ち夫婦が離婚を決断した際に求められる、子どもへの適切な伝え方とは。

木村さん「まず、『離婚=手段』と理解してもらうことが大事です。『○○するために離婚する』『○○をすることが必要だから離婚を選ぶ』というように、離婚が喪失感を生むのではなく、違うものや環境を手に入れるための方法なのだと伝えるのです。子どもにとっては、親の離婚によって何を得るのか、何が生み出されるのかを理解できれば、『分かった』『応援する』という受け止め方になります。

単に『離婚する』『もう、家族一緒では暮らせない』『今のままでは無理』という現実逃避的な説明では、離婚をする意味より、家族の分散というロスしか感じません。親の離婚は子どもにとっても重要なことですから、そのプロセスや目的を明確にする姿勢が必要です。離婚に至るまでの経緯だけを伝え、その結果、『やむなく離婚することになった』というのは絶対に避けるべきです。離婚という手続きを通して、物事には全て意味があるということを子どもに伝える大事な局面と捉えるべきです」