夫婦共働きの家庭が増える中、配偶者の転勤などを機に専業主婦(夫)になる人もいます。しかし、国内経済が低成長で給料がなかなか上がらず、税金や社会保険料が増え続けているため、配偶者の収入だけに頼って生活を続けることに不安を感じる人もいるようです。

 そんな中、新型コロナウイルスの流行により、専業主婦(夫)家庭の中には、配偶者の収入が減少し、生活が苦しくなったケースもあります。これからの時代、夫か妻、どちらかの収入だけで生活を続けることは難しいのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの立場から解説します。

共働き家庭ほど家計管理甘く…

 新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、シングル、ファミリーを問わず、お金の相談をするために筆者の元を訪ねる人は増えています。コロナという未曽有の危機を目の当たりにし、これまで、お金に関して興味・関心がなかった人も「この機会にお金のことをきちんと考えよう」という意識になっているのでしょう。

 中でも、専業主婦家庭からのご相談は切実なものがあります。最近、多い相談は「コロナの感染がきっかけで夫の収入が下がり、家計のやりくりが大変」というケースです。ただ、そもそも、今の時代、家計のやりくりが大変という専業主婦(夫)家庭は多いのではないでしょうか(※以降は「専業主婦」と主に表記しますが「専業主夫」の場合も含みます)。

 1960年代から1990年代前半の高度経済成長時代は豊富な労働力があり、所得もおおむね右肩上がりで上昇。経済が今後も成長し続けるという見通しのもと、終身雇用制度と年功賃金制度が定着し、リストラや失業のリスクも低い状況でした。ところが、バブルの崩壊をきっかけに、日本は1990年代から、急速な少子高齢化、所得停滞と雇用不安に見舞われます。

 高度経済成長時代が終わったことを認識した企業は賃金抑制、年功賃金制度の見直し、中高年従業員のリストラを推し進めてきました。つまり、給与が伸びず、一方で、少子高齢化の影響で社会保険料や税金の負担は増えていく中、夫の収入だけで家族を豊かに養う余力のある、昔のような専業主婦家庭はほとんどなくなりつつあるということです。

家計管理スキルがあれば貯蓄できる

 とはいえ、いまだに夫の転勤や子ども、老親の世話などで仕事をすることができず、専業主婦にならざるを得ないという家庭も少なくありません。そして、専業主婦家庭が多い世帯年収は500万円未満(独立行政法人労働政策研究・研修機構の「子育て世帯全国調査」)となっています。こうした家庭では、家計のやりくりが相当大変なのは容易に想像がつきます。

 ただ、筆者はこれまで、多くの家計相談に応じてきましたが、世帯収入が少ない専業主婦家庭でもきちんと貯蓄をしている家庭もたくさん見てきました。

 専業主婦家庭の家計管理を見ていると、妻が家計を管理し、夫は「お小遣い制」のケースが多いようですが、この家計管理方法のメリットは、1人が管理するのでシンプルに家計管理ができるところです。1人が管理していることによって、使途不明金が発生しづらく、予算を立てて、その範囲内で生活できれば、お金もたまりやすい特徴があります。

 反対に、収入が多い共働き家庭でも、貯蓄ができていないケースも少なくありません。共働き家庭では専業主婦家庭に比べ、夫、妻ともに自由になるお金が多いので、お互いの支出についてチェックが甘くなりがちだからです。また、相手が貯蓄してくれているだろうと思っていたら、お互いに好きなようにお金を使っていて、「全然貯蓄できていなかった」というケースもよくある話です。

 収入が多いに越したことはありませんが、家計管理のスキルをしっかり身に付けたり、助成制度やお得な情報を小まめに収集したりすることにより、収入が低い中でも貯蓄できる可能性は高まります。言い換えると、収入が多い、少ないにかかわらず、家計管理がしっかりできないと貯蓄はできないということです。

高年収世帯も余裕はない

 夫の年収が低い専業主婦家庭が家計に余裕がないのは想像がつきやすいですが、では、夫の年収が高い世帯の専業主婦家庭は家計に余裕があるのでしょうか。

 例えば、コロナの経済対策として話題になった「給付金」ですが、これは子育て世帯に対して、年収960万円以上の世帯を除き、18歳以下の子ども1人につき、10万円相当の支援を行うものです。児童手当の「所得制限」の仕組みが適用され、夫婦どちらか年収の高い方が「制限」の対象となります。

 例えば、夫が年収600万円、妻が年収400万円で子ども1人の家庭には給付金が支給されますが、夫の年収が970万円で妻は専業主婦、子ども1人の家庭には所得制限が適用され、支給されません。

 参考までに、現在0歳から15歳までの子どもを養育している家庭を対象に児童手当として、1人当たり、原則1万円から1万5000円を支給していますが、2022年4月から、世帯主の年収が1200万円以上の場合、支給が打ち切られる予定です。また、高等学校に通う子どもがいる家庭を対象とした「高等学校等就学支援金」も年収910万円以上の専業主婦家庭には支給されません。

 税金についても、日本は所得が上がれば上がるほど所得税の税率が上がる「累進課税制度」が適用されるので、たくさん稼いでも税金が高く、思ったほど、手取り金額は多くありません。このように、高年収の専業主婦家庭の場合も、受けられる手当が少なく、税金も高いため、思ったよりも家計に余裕がありません。

 お金の面で考えると、専業主婦家庭よりも共働き家庭の方が当然、経済的余裕が出ますが、助成制度や税金のことを考えても、1人が1000万円を稼ぐよりも、夫婦で500万円ずつ稼いだ方がお得といえます。さらに、ニッセイ基礎研究所のデータによると、生涯所得という軸で見た場合、大卒の女性が2度の出産を経て正社員として働き続けた場合、育休や時短勤務を利用しても生涯所得は2億円を超えるとのことです。

 一方、第1子出産後に退職し、第2子の子育てが落ち着いてから、パートで再就職した場合の生涯所得は約6000万円とのこと。専業主婦家庭の場合、これらの所得を稼ぐことができないので、共働き家庭と生活面で大きな差がついてしまうと言えるでしょう。

 今の時代は働き方も多様化してきていますし、社会の価値観も変化しています。家庭の事情はそれぞれ異なるため、一概にはいえませんが、これからの社会を考えたとき、現在、専業主婦のご家庭もできる範囲で、夫婦で収入を得ることを考えるのが大切ではないでしょうか。