JR東海が東海道新幹線の「のぞみ」「こだま」の一部の列車に、乳幼児を含む小学生以下の子どもとその親だけが乗車できる「お子さま連れ専用車両」を設定し、運行しています。年末年始を中心とした期間限定の運行ですが、子連れで帰省するとき、子どもが泣いたり騒いだりして、周囲に迷惑をかけないかと心配な親にとってはありがたいサービスとなりそうです。

 しかし、こうした列車が運行される背景には、大きく分けて、2通りの見方があるようです。一つは「子育てしやすい社会になった」という視点、もう一つは「子どもへの寛容さが足りない社会になった」という視点です。この一見、正反対に感じられる2つの視点について、「なぜ、そう考えるのか」を掘り下げつつ、「公共の場で騒ぐ子どもに対してどう思うのか」などの声を紹介したいと思います。

子連れの帰省は緊張

 今年の年末、家族で久しぶりの帰省を考えている、東京都内在住のAさん(37歳、男性)は「お子さま連れ専用車両」をうらやましがっています。Aさんの実家は九州にあり、飛行機での帰省を計画しているからです。

「子連れ専用の車両は、うれしいサービスです。もっと増えてほしいですね。子どもが生まれてから、つくづく感じますが、子ども目線や子連れの親目線でサービスを提供してくれるお店や企業が増え、『子育てしやすい社会になってきている』と思います」(Aさん)

 そうした実感を持つAさんですが、子連れで公共交通機関を利用するときは緊張するそうです。

「航空会社は飛行中に子どもが泣いたり退屈したりしないように、さまざまな対応をしてくれますが、それでもやはり、子連れで飛行機に乗るときには緊張します。機内用におもちゃや絵本、お菓子などを万全に準備した上で、こちらがどれだけ努力しても、子どもは泣くときは泣くので。

そのようなとき、客室乗務員はこちらの焦りを減らそうと優しく接してくれますが、周りの乗客がみんな、子どもに寛容だとは限らないし、子どもの泣き声はどうしても生理的に神経に障る部分があります。『子連れ専用車両』のような『お互いさまだからお互い寛容でいよう』という前提の空間は子連れの親にとって、すごくいいと思います」

 一方、子連れ専用車両の運行開始を嘆かわしい思いで眺める人もいます。独身のBさん(40歳、男性)は常々、「よその子どもに寛容でありたい」と思っています。

「自分はあえて、子どもをつくらないことを選択しているので、未来を担う子どもは財産だと考えています。だから、よその子どもにもなるべく寛容でありたいです。しかし、子連れ専用車両が誕生したのは『普通の車両だと、子どもを不快に思う人が多い』ということを示しているのではないでしょうか。

私たちも昔は子どもだったわけで、よその子どもに寛容になれないのは、自分の子ども時代をなかったことにしているようで、ちょっと都合がいいように感じてしまいます」(Bさん)

“子連れ専用車両は主に誰のためのものと考えるか”によって、意見や感じ方の違いが生まれそうです。それをAさんは「親(と子ども)のため」と感じ、Bさんは「周りの乗客のため」と考えました。着眼点が少し異なるだけで、全く別の結論になっている点が興味深く感じられます。

「子どもへの理解」「騒ぐ子どもへのしつけ」が必要

 では、公共の場で騒ぐ子どもについては皆さん、どう感じているのでしょうか。

 今回、筆者が取材した範囲では「ただ単純に不快」と考える人は少なかったです。インタビュー形式で取材を行ったため、よいイメージになるように答えた人がいる可能性もありますが「子どもの振る舞いに一定の理解を示そう」と努めている人が多かった印象です。そのような中でも「公共の場で子どもが騒ぐのは不快」と答えた人は複数人いました。

「同じ空間に、騒いでいる子どもとしばらく一緒にいなければいけないとき、ある程度なら許容できますが、あまりにも騒がしくされるのはきついです。逃げ場のないバスの中や、食べ終わるまでいなければならない飲食店だと、なおさらです。飲食店でそうした子に遭遇した場合、飲食を手早く済ませて、店を出ることがあります」(Cさん、40歳、男性)

「騒いでいる子どもを見たとき、子どもよりもその親にすごくイライラします。親が子どもを注意したり叱ったりしていれば、イライラはしません。私も子育てをしているので、子どもに言うことを聞かせることの難しさは理解しています。しかし、子どもが周りに迷惑をかけているのが明らかなのに、それを野放しにする親はどうかと思います。子どもを育てている同じ親として恥ずかしいです」(Dさん、30歳、女性)

 元から“子ども嫌い”というわけでなくとも、条件がそろえば、騒がしい子ども(または、その親)を許容できなくなるケースは往々にしてあるようです。

 子連れ専用車両のようなすみ分けは周囲の客にストレスを与えない配慮もありますが、「子どもが泣いたり騒いだりしたら、どうしよう」という親の悩みの負担を軽減する効果も見込まれ、その点は非常に有益です。しかし、「子どもへの寛容さは社会全体でもっと育まれるべきで、それについて考えない前提の“子連れ専用車両の誕生”は残念でならない」という見方もあるようです。

 本来は「一般客は子どもへの理解を、親は騒ぐ子どもへのしつけを」という双方の努力が必要です。とはいえ、子連れ専用車両のようなすみ分けが今後、世の中に広がるかもしれません。どちらか一方でも完璧に仕上げるのは難しく、現在は両アプローチが並行して行われていくのが現実的なようです。