寒い季節になると「入浴に注意」といった警告を目にすることが増えます。急激な温度変化により、体が受ける影響のことを「ヒートショック」と言います。暖かい場所から、寒い浴室など、温度差の大きいところへ移動すると血圧が急変するため、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)などを引き起こす恐れがあるためです。

 今回は、循環器内科医師の梅津拓史さん(日本循環器学会専門医、日本心血管カテーテル治療学会認定医)に、お正月シーズンのヒートショックの危険性ついて伺いました。近著に「血管の専門医が教える『血流』をよくする最高の習慣」があります。

冬場のヒートショックに注意せよ

 一般的に、ヒートショックは高血圧や動脈硬化の傾向がある人が影響を受けやすいと言われています。中でも高齢者は注意が必要です。

「冬場は心筋梗塞や心不全も増えます。冬場は病院が混雑し、入院患者が増えることは循環器科医師なら誰でも体感として知っています。先日、心筋梗塞を発症して、当院へ救急搬送された患者さんは夜の9時ごろ発症しましたが、ちょうどその日のその時刻は、私たちが住んでいる都市の南側に低気圧が近づいてきているときでした」(梅津さん)

「冬は夏に比べて、30〜40%も心筋梗塞の発生が増えます。特に気温が低く、気圧が低い日に多く発生します。また、日内変動でいうと、朝の8〜11時と夕方の6時〜9時に心筋梗塞のピークがあります。気圧が低いときは血圧が逆に上がり、朝は交感神経が活発になり、起きてから、血圧が上がることも原因の一つです」

 日本の住宅は断熱が十分ではありません。そのため、冬の朝方は寒い思いをしていると思います。

「この暖かい布団から、急に寒い環境に行くときに起こるのがヒートショックです。また、冬の寒い時期、暖まっていないトイレやお風呂に行く場合にもヒートショックは起きます。お風呂場で心停止する割合も冬に多いです。夜間のピークはこれが原因であると私は考えます」

楽しいお正月に気を付けたいこと

 マンションは断熱効果が高いと思いますが、一軒家はそうではありません。断熱材を増やしたり、補強するのも大変です。

「対策はいくつかあると思いますが、エアコンは冬季につけっぱなしにすると電気代が少し上がるようです。しかし、月に数千円程度で突然死が防げるのであれば、余裕のある家庭、特に高齢者は資産を持っていますから、つけっぱなしでもいいのではないでしょうか」

「お風呂の湯張りをシャワーですることをオススメします。シャワーで湯をためれば、蒸気で中も温まりますね。多少、お湯の温度を上げる必要があるかもしれませんが、突然死する危険を考えれば、試してもらいたい方法です。お湯の温度が相当下がりますので、追いだきで対応するなど工夫してみてください」

 また、梅津さんは、高齢者は蒸気がたまっているうちに入浴した方がいいと解説します。暖まっている方がリスクが少ないためです。

「日本の家って、冬に寒いですよね。実は北海道に住んでいたことがあるのですが、北海道の住宅は基本的に窓が二重サッシなので、冬でも室内は15度前後に保たれていました。最低気温がマイナス15度などにもなっていたので、断熱性能が本州とは違うと思います。冬期に発生する心筋梗塞に関しては、日本よりも寒いカナダの方が発生率が低いのです」

「日本の住宅の断熱事情に問題がありそうですが、北海道並みに二重サッシを標準にするといいと思います。節約と言ってエアコンや暖房を切ってしまうのも、高齢者にとっては命に関わることです。最近は企業もヒートショック対策を打ち出していますが遅いと思います。もっと断熱を。特に窓から対策すべきです」

 日本では年間に1万人以上がヒートショックが原因で死亡し、室内における高齢者の死因の4分の1を占めることが明らかにされています。また、東京23区では2019年、1402人が浴室でヒートショックにより死亡し、月別で見ると1月が最も多いことが分かりました(出典:東京都健康長寿医療センター)。

 温度の寒暖差による「血圧の急な変動」に注意したいものです。皆さまも寒暖差には気を付けてください。それでは、本年もよろしくお願いいたします。